↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/154

091 俺の拳

あらすじ:

 神をも見通す未来視大活躍。あと、すごいパンチ。

『まったく、小賢しい者ばかりか』


 闇の神クライヤーミリアムの一部が結晶化した神核石をコアとして生まれたデミディーヴァが『クライマー』と呼ばれる存在である。

 クライマーはかつてザーレ共和国の南方を壊滅にまで追い込んだ亜神だ。そしてガチャリウム聖王国から派遣された勇者ドーラと四大司祭ナウラたちのパーティによって討伐され、神核石をナウラに封印された……はずだった。

 だがクライマーは封印を破り、ナウラの中に隠れて機をうかがい、白の神ガルディチャリオーネと人類最大の接続点『霊峰サンティア』をもその手に掴んだ。それはここまでの聖王国の歴史の中でも最悪の事態と言えるだろう。そして今、彼女はガチャリウム聖王国の聖城イスィ内にある教皇の間で教皇と勇者たちを追い詰めていた。


(すべては我が手の内に。しかし、本来であればすでに終わっているはずだったのだがな)


 クライマーが心の内でそう呟く。対峙している二人の勇者ドーラとダルシェンの相手は面倒ではあるが、対処は難しくない。教皇を除いての司祭たちの力の多くを無効化し、補助を受けられない聖騎士たちの大部分も戦闘不能となった。勇者マキシムと聖騎士団の団長ライアンも生死反転により死兵となった死慈郎たちで足止めができている。

 だから計算外だったのは神託者だ。アレこそがこの戦いにおいて最もイレギュラーな存在だとクライマーは感じていた。右腕に神竜の気配を発し、天使を改造した怪物を操り、神竜の盾をも使いこなして勇者たちにセイクリッドブレスの祝福を与えた。現在のクライマーが決着をつけられていない原因の大部分は紛れもなく神託者によるものなのだ。


「やはりあの黒いオーラを突破できん。ドーラ、手はないのか?」

「我らのアーツを束ねたデュアルアーツも届かなかった。セイクリッドブレスは強力ではあるが、司祭たちの力がこうも弱まった状態ではな」


 ドーラとダルシェンがそう言い合いながら攻撃を続けている。

 両者の攻撃は強力無比。けれどもクライマーの反転領域アンテフィールドを越えることはできない。どれだけ斬りつけようと、叩きつけようと、反転領域アンテフィールドを突破できなければダメージはゼロだ。意味がない。マキシムが、或いはサライがそこに加われば突破も叶っただろうが、現実は違う。であれば、そうなっていない以上は恐れるものは一つだけだった。


(神託者は厄介だが、この状況で警戒すべきは)


 天使の怪物がこの場にいないという点は不可解だが、勇者サライの気配が先程聖門の神殿で一瞬感じられた。急な認定式といい、状況からすれば教皇たちはこちらを囮に聖門の神殿を占拠しようと企てていたのだろうとも思えたし、であれば天使の怪物もそちらに向かったのだろうとも。

 そして、すでに神託者の実力も割れている。人化した神竜かとも疑ったが、腕以外は人間の気配しかしない。ウルトラレアと特殊なスーパーレアの装備に身を固め、クライマーの攻撃を読む謎の能力もある。それは確かに人間の中では手強い部類に当たるのだろう。だが、それでもクライマーの敵ではない。


(……やはりヤツよな)


 であれば現状で最も注意を払うべきは教皇だとクライマーは考える。教皇とはすなわち己が全身で神の威を伝えしもの。つまりは肉弾戦のスペシャリストだ。中でも聖なる意志を拳に宿して放つ必殺の教皇神拳ゴッドナックルは生涯においてたった二発、一度の戦いでは一発しか打てぬという。ソレをこそクライマーは最大限に警戒していた。

 そしてクライマーは、すでにその兆候を見た。二人の勇者とわずかな聖騎士団たちが戦う背後で光り輝く拳が見えたのだ。


『来るか。まあ、この状況ではそうするしかないのだろうがな』


 クライマーがニタリと笑う。

 それさえ凌げれば、もはや負けはない。そう思っていた。この時はまだ……




  **********




 おお、教皇様の右腕が光り輝いている。教皇神拳ゴッドナックルとかいうふざけた名前の技を繰り出す準備らしいけど……カードは特に出していないな。


「あの、それって自力の技っすか?」


 この世界ではカードの力でスペルやスキルが使えるが、それは過去に奉納した者の所有していた能力であり、つまりは再現可能なものではあるはずなんだ。つまり、その技も長い修行の果てに教皇様が生み出したもの……


「いや、この教皇の錫杖、教皇の法衣、教皇の主教冠を揃えた者のアーツだ」


 ではないらしい。


「無論、相応の修行は必要だし、身体も鍛えねばならないがね」

「なるほど。けど、その装備って多分全部ウルトラレアですよね。揃えるの難しかったんじゃないですか?」

「それはそうだな。前教皇がその任を終えたか終えることを宣言すると、四大司祭の資格を得た者のみが受けることが許される教皇ガチャが解放されるのだ。そして教皇装備三つを最初に揃えた者が次の教皇となる。故に四大司祭は奉納する蓄えを多く用意しておかねばならない」


 ピックアップのURをみっつ揃えろ。あと早い者勝ちな……かよ。コンプガチャに先着順、射幸心を煽って課金させまくるのか。ひどい運営もいたもんだ。元の世界なら炎上どころか国家権力が動くレベルだぞ。


「さて、無駄話はここまで。相手もこちらの行動を読んだようだしな」

「まあ、光ってますしねえ」


 そう、教皇様の右腕が光り輝いている。あと教皇三点セットも右腕に流れるように光のラインが出てる。そりゃあ、何をしようとしてんのかはバレバレだろう。


「勇者たちよ、今より我らがあの亜神を討つ。その間の護りを頼みたい!」

「教皇様、まさかアレを!?」

「クッ、行くぞドーラ。ここでしくじるわけにはいかねえ」


 教皇様の指示にダルシェンさんらが今まで以上に動き出した。それにデミディーヴァの気配が、あの黒いオーラが増えていく? 全身を渦みたいにして竜巻? いや、台風だな。ありゃあ。それに触手も増えてきた。あいつ、ここまででもまだ全力じゃなかったのかよ。


「神託者殿、ここが正念場だぞ」

「分かってますよ。絶対に逃さねえから、一発いいの頼んます」


 手持ちの武器は雷霆の十字神弓に神罰の牙に神竜の盾、それに爆裂の神矢と竜水の聖矢一本づつに神の薬草だ。未来視もなんだか絶好調。少なくとも対処できる攻撃なら、すべて『確実に対処可能』なほどだ。さすがウルトラレアの能力だな。


「ライテーはやっぱり凄えな」

『らーい?』


 はは、いきなり言われても訳分かんねえよな。まあ、いい。

 ともかく賽は投げられたってヤツだ。だったら決めてやるさ。『俺の拳』でな!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。