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081 炙られる愚者

あらすじ:自分を勇者だと思い込んでる寅井くんが黒光りするものを出した。

「なにそれ、超キモいんですけど」


 うん、マジキモい。偽寅井くんの腕から伸びている黒い触手がテカテカしながらウネウネしている。もうアレは勇者というよりは宇宙生物に寄生されて人間には戻れないところにまできてしまったクリーチャーって感じだ。ゲームだとそこそこ定番ではあるが、リアルって怖いわ。ウネりすぎだわ。


「フッ、この見事な輝きが分からないとは……なるほど、どうやらお前自身もまた悪しき存在であったということか。愚かな。どこで道を間違えたのだ?」

「うーん、こいつ言ってることがバグってるな」


 まあ、パチモンに知性なんてもんを期待するのは間違いなんだろうけどさ。ともあれ、厄介な相手だが、ニセモン相手に時間をかけてもいられねえんだよな。さっさとケリつけてデミディーヴァをどうにかしないと……


「ふ、光の洗礼受けてみよ!」

「だから、嫌だっての」


 触手が何本も伸びてきたが、こっちだって矢をまとめて射ることはできんだよ。よし、撃ち放った九本の雷の矢が偽寅井くんの触手とぶつかって……なんか爆発してどっちも消滅した?


「ライテー、今のはどういうことだ?」

『雷は神の力にもっとも近い属性。闇の神の力に染まっている魔導器の攻撃なら止められて当然』

「それってつまり、神弓はアレに利くってことか?」

『そう』


 ライテーが頷いた。相性的にはこっち有利ってことかね。


「ふむ、光の力が削り取られただと? それはまさか闇の神の力か?」

「いや、闇のって……それお前だからな。自覚しろよ、ちゃんと」

「あくまで惚けるか。ならば、よろしい我が聖剣キャリヴァンの煌めきで討ち払うのみ」

「煌めき? 禍々しい!?」


 偽寅井くんの剣が無数の髑髏が浮き上がるようなヤバいオーラを全開で出し始めた。それ、どう見ても聖剣と真逆の剣だろうが。それを離れている位置から振り上げて……


『喰らえアーツ・ゴッドジャッジメント!』


 ヤバい。斬られた? これは飛ぶ斬撃だ!?


「喰らえアーツ・ゴッドジャッジメント!」

「斬られるかよっ、危ねっ!?」


 うぉっと。とっさだったが避けられた。一瞬斬られる未来が視えたぞ。ファンタジーだからな。そりゃあ飛ぶ斬撃だってあるかよ。おお、怖。右に避けなけりゃあ真っ二つだったぞ。

 

「我が一撃を避けるかタカス! ならば、直接斬り裂くのみ」

「させっかよ。接近される前に射殺いころしてやる」


 って、あいつ一気に踏み出しやがった。しかも速い? あの靴。あれは魔導器か!? 魔導器はひとり三つしか使えないはず。残りはあの鎧だと思っていたが、違ったのかよ。


「さらばだ同郷の者、許せよ。ナウラ様、教皇様の危機故にここで処断させていただく!」

「嫌だね。出てこい神竜の盾」


 あいつが近付ききる前に俺はとっさに空中にカードを投げて、神竜の盾を喚び出した。ドラゴンが扱う3メートルの楕円の盾だ。そんなものが落ちて来りゃあペシャンコだぜ?


「ぬっ、こんなものを喰らうとでも?」


 偽寅井くんが右に跳んで、落下してきた神竜の盾を避ける。

 ああ、視えてるよ。そこが隙だ。神罰の牙に力を込め、ここでアーツを発動させる。


「ぶっ飛ばせ、アーツ・シルバーハンマー!」

「くっ、アーツ・ルミナスキャッスル!」


 マジか。左手の触手が広がって、偽寅井君の前に黒い城壁ができた!? シルバーハンマーも完全に弾かれたな。やってくれるぜ。


「まったく、危険な女だ。アーツ・ゴッドジャッジメント!」


 さっきの飛ぶ斬撃を横薙ぎで? くそっ、間に合わない。だったらカウンターで撃ち落とす。


「とりゃぁあ!」

「なんだと!?」


 よっしゃ、上手くいった! 黒い光の斬撃を真下からの神罰の牙のアッパーを当てて粉砕できた。我ながら神業だったな。こいつはこの神罰の牙の硬さと竜腕のパワーに未来視とカウンタースキルが合わさって初めて可能な技だ。ま、もう一度やれって言われてもできるとは思えないが。ともかく、偽寅井君の虚を突けた。だったら


「今だ。やれ神竜の盾」

「は? 盾が動いた?」


 そうだよ偽寅井君、お前が避けた神竜の盾はな。頭部だけではなく装飾としての手足が付いているんだ。火を吐く際に口を動かせるなら……と思って試した結果、俺が意識して操作すれば足も動かせるようになったし、今は手も使えるようになった。そんでタックルだ。


「喰らえ!」

「クソッ、アーツを放った後の隙を狙ったか。チッ、重い!?」


 そりゃあ3メートルある分厚い金属の盾だぞ。いくら勇者様のパチモンでもパワー増幅系の魔導器がなければ押さえきれねえよ。そんで偽寅井君とぶつかり合っている盾に俺が手を当てて力を注げば、こいつの真価が吐き出される!


「竜頭が開いて口の中から銀の炎……だと? う、うわぁあああ」


 はっは、燃えちまえよ。神聖属性の銀の炎セイクリッドブレスだ。闇の神に属してる相手にゃあ効果抜群だ。これで邪剣の闇のオーラも削れて……ん? 今一瞬白い光が剣の刃から?


「やるなタカス。だが負けん!」


 チイッ、触手をバネみたいにして自分を後方に飛ばしただと。器用なヤツだな。だけど明らかに今の攻撃はあいつに通用していた。こりゃあ、いけるんじゃあないか?


「リリムの言葉じゃ、確かセイクリッドブレスはデミディーヴァにも効果があるって話だったな。闇の神に造られた偽者にゃあ効果てきめんってわけだ」


 じゃあそろそろパチモンにはおさらばしてもらおうかい。


『いや、彼は本物だよ』

「は? 誰だ?」


 突然、声が聞こえた。

 同時に少年のような、少女のような性別を感じさせない子供がスッと俺の前に姿を現した。


『やあ神託者さん』

「こ、子供?」

『違うタカシ。そいつ、ライテーと同じ』


 ライテーと同じ? つまりは誰かの魔導器の……


『そう、僕は精霊だ。名をヴァンという』


 精霊がそう名乗った。それから右腕をスッと挙げて偽寅井君の指差しながらこう告げてきたんだ。


『闇の神に操られているあそこの駄目勇者が持っている聖剣キャリヴァンの精霊だよ』


 ん? つまり、アレ本物? ウッソだぁ。

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