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080 イミテーションブレイバー

「クソッ、手当たり次第かよ」


 通路の先々で警備の騎士たちが死んでいる。全員バッサリと斬り殺されてるな。

 やったのは陣内死慈郎か。あの瞬間移動っぽいのは正直ヤバい。さっきのマキシムだって危なかった。相手の手の内が分かっているはずだがら、今のあいつなら大丈夫だろうけどさ。

 けど、いくらなんでもこの異常事態で誰も気付かないなんてことあんのか?

 それとも全員死んでるのか? いや、まさかな。けど、この城の主要メンバーのほとんどは今教皇の間にいるし、デミディーヴァ相手じゃあ勇者でもないと戦力にはならないからそこら辺の騎士さんを連れて行っても無理っぽそうだ。

 そんでマキシムが死慈郎とやり合ってるってことは俺が神の薬草を使わせるのはダルシェンさんか寅井くんかってことかね。あとは四大司祭さん方や教皇様とか、あの厳つい感じの聖騎士団の団長さんとかもいたな。ただマキシムを見る限りじゃ、勇者かゴッドレア持ちじゃないと制御しきれなさそうなんだが……


「まあいい。俺にやれるのは渡すところまでだ。急げよボルトスカルナイト!」


 骸骨の騎士が俺も乗せた骨馬で廊下を疾走していく。部屋を出てすぐに喚んだのがこいつだ。ポーンはただの兵士で弱いし、巨人のルークじゃ城の中じゃデカ過ぎるし速度が出ない。ビショップは回復と付与メインで、クィーンは今の俺じゃあ喚べないとなれば選択肢はひとつだった。何しろ オマケに馬が付いてくるからな。


「お前も頼むぜライテー」

『ラーイ!』


 そんでライテーもいる。雷霆の十字神弓も出したし、神罰の牙は最初から装備済みだ。万が一敵に近付かれても、カウンタースキルがふたつセットしてある神罰の牙なら対処できる。十字神弓の未来視にも慣れてきたし、今の俺はかなりやれる感じだぜ。


『タカシ、扉。あの先騒がしい』

「ああ、分かってる。ナイト、突撃チャージだ」


 俺の指示に従ってボルトスカルナイトが正面の教皇の間の扉へとさらに加速して駆けていった。よし、未来視で反撃が来ないことは視えた。だったら


「だったら行けるさ。一気にぶち破れ!」


 そして、ボルトスカルナイトが扉をスピアでぶち当てて開き、俺たちは教皇の間の中へと突入していった。


「うわ。なんだ、こりゃ!?」


 少しだけ視えてはいたがこいつはカオスだな。白い大理石の部屋は真っ黒になってるし、空気も恐ろしく淀んで瘴気になってる。それに見たことのあるイノシシの化け物とナウラさんっぽいヤバいのが教皇様方と対峙していて……そんで、ダルシェンさんが押されているのは寅井くんか? いや、違う。流石に勇者様がこんな簡単に寝返るなんてありえないはずだ。俺にだってそれぐらいは分かるさ。マキシムと一緒にいりゃあ勇者の実力ってのは嫌ってほど理解できる。あいつらは力以上に心の部分が強い。俺らとは違う。だから勇者なんてやれるんだ。勇者ってのは多分そういうもんなんだろう。つまり、あいつは偽物だ。だったら、まずはあいつが一番楽そうだ。喰らえトライアロー!


「ウギャァアアア」


 よし、当たった。けど、こいつも結構強いな。当たらない未来が視え過ぎて肩に当てるのが精々だったし、隙が無さすぎる。それにあの鎧もずいぶんと硬いな。


「お、おお。こいつに当てたのか。やるなタカシ」

「ダルシェンさん。大丈夫か?」

「ああ、よく来てくれた。マキシムは?」


 ま、当然そう思うよな。普通に考えて戦闘力的に俺はマキシムのオマケだ。


「マキシムは陣内死慈郎とかいう敵と戦ってる。マキシムがこの聖王都に来る途中で戦った魔人がリベンジに来たんだよ」


 俺の言葉に偽寅井くんと一緒にいる小男がピクリと反応した。あいつ、人間みたいだがあの偽寅井くんと並んでるってことは敵側なのか?


「そうか。あいつも戦闘中か。クソッ、完全にしてやられてるな」

「まあな。城ん中も随分とやられてるけど、これどういう状況なんだよ?」

「簡単に言うぞ。ナウラ様の中にデミディーヴァが隠れてた。で、そいつが顕現して、襲撃を食らった。どうやらこっちの状況はバレバレだったらしい」


 いや、死慈郎と話した感じだとバレたわけではないっぽいけどな。ま、そいつはもう関係ないか。あいつらが先攻に回ったってのが現実だ。過程はどうあれ、俺たちはあいつらにやられてる。


「それに魔族も侵入してきてな。そこのそいつもこんな感じだ」


 なるほどな。本物だと思ってた寅井くんも実は偽物だったと。厄介なことだ。けど問題はこれをどう収めるかだ。というかあのデミディーヴァをどうするかって話だよ。


「なあダルシェンさん、ここのメンツでデミディーヴァは倒せる目処はあるのか?」

「そうだな。部屋の属性が反転して色々と厄介になっているんだが、教皇様と協力できれば不可能では……ない」


 ダルシェンさんがそう返して来たが、表情は明るくない。自信はなさそうだ。となると待っているだけじゃあやっぱりヤバいか。

 そうなると神の薬草をいつ使うかって話だが、以前のデミディーヴァ戦では神の薬草で強化したマキシムでもアレを倒しきれなかった。それにこの時間じゃ前回みたいに日をまたいで二回連続使用なんて裏技も使えない。神の薬草の弱点は継続時間だ。時間稼ぎをされれば戦っている途中で終わる。それはマズイし、そうさせない状態まで追い込めないと詰む可能性が高い。


「ダルシェンさん、こっちにもデミディーヴァを倒す手段はある。けど、絶対じゃない。敵の数を減らすかある程度はダメージを与えておきたい」

「クライマー様を倒す手段がある……だと?」


 うぉ、あの小男がこっちを睨みつけて来たぞ。


「ハッタリ……だろうが、あの神託者の能力は不確定。マキシムは武器に神の力を持たぬがゆえに擬神殺しは不可能と言われていたにもかかわらず成した。それが事実かは確定できてはいないが、天使の怪物を操ったことといい……ドーラ。アレは危険だな。ナウラ様のためにも最優先で殺せ!」

「おうよ。ナウラ様は俺が守る!」


 何言ってんだあいつ。やはりニセモノだけにまともじゃなさそうだ。


「ダルシェンさん。ここは俺が請け負う。あんたはデミディーヴァを食い止めていてくれるか?」


 できればそのまま倒してくれればありがたいが、最悪でも死んでさえいなければ神の薬草で回復させられる。けど、その前にこっちの雑魚は邪魔されないように片付けておかないとな。


「いいのか?」

「あんただって教皇様の方がヤバそうなのは見えてるだろ。急いでくれ」


 あっちは明らかに劣勢だからな。教皇様と司祭さん方が抵抗してるがデミディーヴァの黒い雷みたいのにバリアが崩されそうだ。


「すまない。そいつは頼んだぞ」


 俺はグッと親指を立てて頷いた。ああ、分かってるさ。ニセモンだから遠慮なんていらねえってことだろ。問題ねえ。


「タカス、またしてもお前か。まだ騙されているとはな。頭の悪い女だ。まったく、同郷だからと甘い顔をしておいてやったが、見逃しておくべきではなかったのだろうな」


 ほらな。やはりこいつはニセモノだ。俺の知っている寅井くんは甘い顔などしていなかったし、見逃されていたどころか教皇様に叱られてションボリしていたはずだ。まったく、ニセモノならもう少し事前調査を行うべきだったな。それにだ。


「口よりも手を動かしなパチモン野郎!」


 俺は即座に雷の矢を放った。ニセモノだがこいつの実力だけは本物だ。さっきから未来視で探ってるが隙がまったくない。どこに仕掛けようとも雷の矢は弾かれる。けど俺には視えている。隙がないなら


「作るまでだ。ナイト、突撃チャージ!」

『ッォオオオオオオオオ!』


 矢を剣で弾くのは視えた。弾いた際に最もモーションの大きいポイントを狙って、そこにナイトのスピアで


「甘い!」

「なんだ!?」


 あいつの左手から禍々しいテラテラと輝く黒いオーラが出てきて、ボルトスカルナイトを貫いた……だと!?

 未来視も剣を弾いた以降の未来までは視れなかった。視れる未来に限界があるのか? しかし、このパチモンのアレは……

 

「見るがいい。我が聖剣と並ぶ変幻自在の最強の光盾ルミナスを!」

「何が光だ。どう見ても黒光りしてる触手じゃねえか!」


 やばいぞ。すっごくクトゥルフってる。言ってることが滅茶苦茶だけど強い。やはりこいつ、ただのニセモノじゃあないぞ!?

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