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075 二兎を追い、喰らわんとする者

「ふぅ、あまり眠れなかったなぁ」


 朝日が昇ってからもう二時間が経ってる。色々と考え過ぎて、いつもは六時間寝て起きてから、さらに二時間二度寝するのに二度寝ができなかった。俺って案外繊細だったんだな。まったく、男のくせにナイーブなヤツだぜ。ああ、今女だったわ。


「タカシ様でも眠れないってことがあるんですね。まあ今日はいよいよアルゴニアス様に託されたお役目を果たすわけだから仕方のないことではありますが」

「うん、そうだな」


 リリムの神妙な顔に俺も神妙な顔で頷いた。

 つってもアルゴのことについては別に気にしちゃいないけどな。考えるだけ無駄っていうかさ。ナウラさんのこととか色々あるけど、結局はローエン様が神域見りゃあすぐに分かることだろ。疑ってた連中だって神域にアルゴがいなくてあのバケモノ竜がいるのを確認されれば認めるしかないわけで、寅井くんとかも手のひらクルクルするしかないんだよなぁ。

 で、そうなりゃあとは聖王国のお仕事だ。俺も協力することにはなっているが、そこまでいきゃ俺はモブみたいなもんだろ。考えることは特にない。だから、それよりも必要なのは俺のエクスカリバーを取り戻すことだ。とりあえずはまず親父さんを説得する。何しろ約束は約束だ。マキシムにもそれを押し通す。子供についても身重じゃ神の薬草とか使えねえし……とかそんな感じで時間稼ぎをすりゃなんとかなるはずだ。ま、最悪駄目なら自力で解呪すりゃあいいのさ。呪いを解くための解呪屋さんも病院で聞いて確認済みだしな。


「それで、眠れないあんたが朝っぱらからやってきたのがここって……どういうことなわけ?」


 リリムと共に来てくれたサライさんの視線が痛い。

 まあ、気持ちは分からないでもない。何しろ俺が今いるのは施神教の神殿内で、つまりガチャの祭壇の前だ。リリムには神官として、サライさんには護衛としてここに来てもらってる。

 マキシムはザイカンさんと打ち合わせをするからって来れなかったんで、サライさんが護衛としてついてくれたって流れだけどな。どうもこの状況は予想できていなかったらしい。


「実はですね。昨日、前金で少しもらったんですよ。こいつを」


 俺がジャラリと見せたのは60枚の聖貨だ。ふふ、いいでしょ。


「ねえタカシ。それは……どこから?」

「そりゃあ神託者用の報酬からだよ。金貨の代わりに聖貨でもらうとさ。金貨100枚分で聖貨10枚をオマケしてくれるんだよ」

「ああ、聖貨でもらったのね。じゃあマキシムへの借金はもう返しきれないわね」


 金貨400枚の借金。確かにそれはそうだな。終われば残り300枚の金貨が支払われるわけだが、普通に考えればオマケに聖貨30枚をもらえる方がお得なわけだから当然聖貨でもらうことになる。こればかりは運がなかったとしか言いようがない。


「これさ。一応、認定式に向けて戦力アップのためって名目で教皇様に直談判して前借りしたんだぜ。だから借金の返済に……なんて無理じゃん。マキシムもいいって言ってたよ。昨日は別のショックで引く気にゃならなかったけどさ」

「ハァ、教皇様に直談判……あんた、本当にそういうところはアグレッシブね」


 ま、これからまた魔族と戦わないといけないかもしれないんだ。準備はしといて損はないだろ……という名目でガチャができるのだ。素晴らしい完璧なプランだ。


「ま、ともかく。こいつですげえのを出せば何があっても大丈夫」

「そう上手くいけばいいけどね。知ってた? 物欲探知って言葉があってね」

「ああ、欲しい欲しいって思えば思うほどにすり抜けてしまうってアレですね」

「知ってるよ。でも俺はいつだって無心で回してるからな。そいつに引っかかることはねえよ」


 そうだ。欲しいと思えば相手は引いてしまうし、いらないと思えば案外やってきたりしてしまうものだ。こいつはつまり恋の駆け引きみたいなもの。だったら俺はそのことわりを利用するまでさ。

 己の心を操り、神をも欺く。それはガチャを廻す者ならば誰もが持っている、呼吸をするのと変わらない『当たり前』の技術。己が精神を制御できてこそ一流のガーチャーと言えよう。

 ふふ、サライさんが驚いているな。まあ仕方ない。普段のおちゃらけている俺からは想像もつかないだろう。けれども俺は常在戦場。悪いが、心構えだけなら誰にも負けねえよ。


「ハッ」


 おい、リリム。今お前鼻で笑ったろ。不敬だぞ。


「……いえ、すみません。それはそれとしてタカシ様、ボーナスが付いてますよ」


 ボーナス? 前にここに来たときには何もなかったはずだけどな。


「タカシ様には今回性転換ボーナス10枚と婚約ボーナス10枚、それに教皇様と初対談ボーナス20枚ですか……合わせて計40枚の聖貨がボーナスとして贈られることになります。今回のガチャで使いますか?」

「ふん。言われるまでもないよな」


 使うに決まってる。あるのに使わない?

 未来ってのは今の自分が掴むもんだ。未来の自分に託すなどそれは今の己が負けることを前提にした敗北主義者の考えだ。愚かしいとしか言いようがない。それはリリムも承知しているはずだ。


「分かりました。貯めましょう」

「出してください。お願いします」


 空中に光の魔法陣が出現すると聖貨が現れ、それが皮袋に収まって俺の手に置かれた。ケッ、素直に渡しゃあいいんだよ。

 しかし、こいつは幸先がいい。だが、降りて来た幸運はそれだけじゃあなかった。


「それとタカシ様は聖弓手セイントアーチャーガチャを受けることができますね」

「ん? なんだ、それは?」

「アーチャーの職種用のガチャよ。あんた、弓使いでしょ」


 おお、そっか。まあ雷霆の十字神弓を使ってるからな。けど、前回はなかったよな。となるとサライさんの旦那のダルシェンと戦ったときに弓使いってのが決まったのか。一応、神罰の牙とカウンタースキルって強力な近接武器も手に入れたけど、正直近接戦は怖いのであまり使いたくはないからな。ま、弓使いで問題ない。


「条件が合えばガチャの種類も増えるんだったよな。けど聖弓手セイントアーチャーか」


 一応恒常のガチャではあるんだろうが『聖』弓手セイントアーチャーってのは、この国限定のもんだろうしなぁ。魔族討伐記念限定ガチャを回そうとも思ったが……ちょっと浮気してみても……


「魔族討伐記念限定ガチャの方が珍しい。ただ魔族との戦いを考えるならどちらを選んでも悪くはないわね」

「サライさん。悩ませることを言いますねぇ」

「タカシ様。ピックアップは聖弓手セイントアーチャーガチャが『竜水の聖弓』、魔族討伐記念限定ガチャが『デモノイーター』。どちらも一回聖貨3枚です」


 なるほど。聖弓手セイントアーチャーのピックアップは弓かぁ。神弓持ってる俺にはあまり意味なさそうだけど、聖属性と雷属性じゃ使い道も違うのかね?

 そして手持ちは100枚。つまり今回俺はガチャを33回も回せるということだ。いや、1枚で回せる全なる可能性ガチャを含めれば34回できることになる。チャンスが34回もある。それはもう勝ったのとあまり変わらないな。


「さて……まずは何から始めるか」


 聖弓手セイントアーチャーガチャにまず10連ぶち込んで運試し。続けて魔族討伐記念限定ガチャに23回、全なる可能性ガチャ一回をシメにするという感じで……いや、待て。終わりに全なる可能性ガチャ一回はショボいか。ならば!


「まずは全なる可能性ガチャを一回引く」

「はい。それではどうぞ」


 リリムが準備を整える。まずはこの戦いの流れを見るための一投だ。俺は全身全霊を込めて、小さな壺へと1枚聖貨を投げ入れた。


「出てきたのは……鉄の剣ですね。ノーマルです」


 ふぅ。うん、分かってる。所詮は前座。むしろ薬草じゃないところに今回はいけてると感じるぞ。じゃあ続けては……


「それじゃあ続けては聖弓手セイントアーチャーガチャ、十連だ。リリム、頼んだ」

「はい、どうぞ」


 壺の裏で燃えている炎に聖弓手セイントアーチャーガチャという文字が浮かんできた。リリム……というか施神教の神官は任意にガチャの種類を変えることが可能なんだ。じゃあ今度は聖貨30枚。行ってみるか!

 さあ、喰らえ。俺の渾身の一投を!


「はい、出ました。聖なる薬草、お徳用聖水、聖なる薬草、薬草、聖符、薬草、銅の槍、聖なる薬草、光の薬草、天使の羽ペン。お徳用聖水はハイノーマルですが、あとはノーマルですね」


 マジかよ。聖なる薬草ってなんだよ。意味が分かんねえよ。


「薬草ばかりか。神の薬草持ちとは聞いたが……エグい引きだな」

「本当にな。心が折れそうになる」


 残酷だが、これが現実だ。ゴッドレアの神の薬草を持っている俺は薬草に引きの偏りが出ちまう。こいつは大きなハンデだが……しかし、俺は諦めない。


「ま、これからだよ、これから。ガチャはこのままで固定。もう一丁行くぜ!」

「あのタカシ様。次は魔族討伐記念限定ガチャだったのでは?」

「結果も出さずにピックアップを変える? そんなことはありえねえんだよ」


 次ぃ! 行くぞオラァ!!


「はい、出ました。聖なる岩塩、聖なる薬草、聖なる藻塩、聖なるブラジャー、聖なるパン、聖なる薬草」

「聖なるを付けすぎだろう!?」


 レアですらねえんだから、大した聖なる効果もないだろうしな。


「そして次は……あ、スーパーレアですタカシ様。竜水の聖矢ですよ!」

「マジで? それってピックアップの?」


 でも弓じゃなくて矢? しかもスーパーレア?


「いえ、あっちはウルトラレアで……こっちのは矢ですが一発限定なので威力だけは上なんですよ」

「マジで?」

「はい。効果は簡単に言うと私の竜水の槍のドラゴニックコメットに聖属性の力が宿った矢を撃てます。爆裂の神矢と違って回収すればまた撃てるのも良いですね」


 爆裂の神矢は矢ごと壊れるからな。カードの中で修復されるまでは時間がかかる。となると神弓を持ってる分、ピックアップよりもお得だったのでは?

 いいねえ。これだけで今回は当たりだわ。


「それで次は湿布に、続けてはハイノーマルの神銀の短剣二本ですか」

「使えるのか?」

「使えなくはないですけどハイノーマルですからね。今のタカシ様が使用するのはあまり意味がないですし、売っちゃった方がいいと思いますよ」

「んーそっか」


 竜水の聖矢が手に入ったし、結果は上々か。


「どうします? 正直、結果的には当たりだったと思いますが、これで終わりにしてもいいんじゃないですか」


 残り13回か。けどなリリム。キープ……なんてことができていれば俺はマキシムに借金なんぞしてねえんだよ。だからここは続行だ!


「魔族討伐記念限定ガチャで行くぞ。まずは十連だ。おらぁ!」


 そして魔族討伐記念限定ガチャの結果だが……薬草6つに湿布二枚、聖なる釘に、マダラ牛のバックパックってハイノーマルがひとつだった。続けて3回引いたが……うん、まあ薬草だったよ。そうね。結局当たりは竜水の聖矢のひとつだったわけか。

 ま、34回の引きとしちゃあ悪くはなかったかな。うん、勝ちだよ勝ち。俺の勝ち。

※今回、某ガチャシミュレーターで出た結果を反映してみました。UR相当一枚出なかったらクソガチャでしたが出たので勝利です。

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