072 パーフェクトプラン
※タイトル変更しました。
血迷っているだけですので、気が向いたら戻すか変更かけると思います。
ここ最近はBBでゲロ吐きそうなくらい爆死してアビー、つい先ほど項羽でも散々な目にあったのでガチャの話とか触れたくないんです。
人生とは試練の連続である。そういったのは誰だろうか。俺だ。
いや、なんの話だ。分からない。気になるあの娘のパパを紹介されたら女にされた挙句、俺のヴァージンがブレイクしかかっている。本当に何を言っているんだろうか。頭がおかしいんじゃないか。分からない。何故こうなった? どこで道を間違えた? 俺には何も分からない。
「タカシ、どうしたんだい? 今までは……その、僕は自分に正直じゃなかった。だからあえて見て見ぬ振りをしていた。でも、それでも君だってここまで僕を意識してくれていたと思っていたのだけれども……それは僕の自惚れだったのかい?」
「あーいや、そんなことはないけどな。ないけどなぁ」
そりゃあな。マキシムが彼女だったら……男装してるけど美人だし、抜けてるところはあるけど結構可愛いとこあるし。そう思ったことはあるよ。うん。俺の人生の中で先輩に並ぶくらいの女だけど……いや先輩はマジ怖いんでそういう関係とか無理だけど。あの先輩なら去勢とか言って俺のエクスカリバーに五寸釘を五本くらい打つことも本気でしそうな気がするけども。
ただな。俺はマキシムを彼氏にしたいわけじゃねえんだよ。自分が女になって、あいつが彼氏になって、俺がヴァージンブレイクしてラージポンポンしちゃうって、そんなおかしな性癖を開発しちゃう系男子じゃないんだよ。違うだろ。そうじゃないだろ。そういうことじゃないだろ。ゴールインする場所が完全におかしいよ。オウンゴールしているよ。
「ふ、それは面白い」
面白いって誰だ。んなこと言ってんのは?
「おい、あんた他人事だと思って……って、教皇様ぁ!?」
「ははは、随分と愉快なことになっているじゃないか」
さっきまでキリッとしていた一番偉い人が超いい笑顔なんですけど。
畜生。なんだそのノリは? いやいや、クソッ。冷静になれ俺。興奮しすぎて頭の中が混乱している。けど、教皇様のさっきまでのお偉い人然とした立ち振る舞いはどうしたんだよ。普通に興味本位100パーセントで面白がってる感じだよ。大体あんた、俺が男で、あとマキシムが女だってことも多分知ってますよね?
「ふむ。ドーラ、愛するふたりの仲を裂くような真似は感心しないぞ」
「むぅ」
「それにだ。君は彼女を捕まえて任意の形で今回の件を根掘り葉掘り聞き出そうというつもりなのだろうが、悪いが私もこれ以上の問題を許容するつもりはない。同郷の話を聞きたければすべてが終わってからにしたまえ」
「ッ……はい」
あ、寅井くんがシュンってなった。打たれ弱いな、あいつ。
「そして神託者殿、それにマキシム。ふたりの仲については私の耳にも入ってはいたのだが、どうやら相思相愛のようで何よりだ。マキシムも吹っ切れたようだしな」
「はいっ。自分の心の内に気付けました」
さわやかに言われた!?
「そうかい。それは良かった。正直に言うとね。私は君たちの関係を少々懸念していたんだよ。けれども、まあ孕むのが『神託者殿である』なら『マキシムが』勇者として活動できなくなることもないだろう。今後のことを考えればマキシムが十全に戦えることの方が我々も望ましくてね。ふふ、私としても心配事がひとつ減って何よりだ」
こっちは全然さわやかじゃない!?
それにこれは教皇様、知ってますね。俺の撃墜数1の実績を知っていますね。畜生。誰がバラしたんだ。知ってるヤツ、みんなチクってそうで分からねえ。
「ほほぉ。勇者の花嫁が神の啓示を受けし神託者……それは悪くはありませんな」
「然り。近年の聖王国は決して明るい話題ばかりではない故、そうした話であれば良い風を呼び込みましょうな」
ああ、偉そうなおっさんらも乗って来てるし。勝手なこと言いやがって。俺の人生に花嫁になるって選択はねえんだよ。ていうかマズいだろ。めちゃ外堀が埋められていっている感あるんですけど。
「まあまあ、お前たち。そこは認定式の後に追々考えていこうじゃないか。神託者殿を表に出すのであれば、神託を公布する時期も考えなければならぬしな。いや、いっそ結婚式に発表してプラスマイナスで相殺するというのも良いかもしれないな」
いや、良くない……とは言えない俺の前で教皇様が場を取り繕って、その場の話は終わった。終わってしまった。
これはマズいな。勇者の花嫁へのジョブチェンジルートに固定されつつある気がする。それにマキシムがめっちゃ嬉しそうに笑ってるし、なんかちょっと涙流してたりしてる。
ようやく自分の心に素直になって、それを俺に受け入れてもらって嬉しいって感じだな。いやマキシムが嬉しそうなのはいいんだけどな。他人事なら良かった良かったって言えるし、男としてはそんな笑顔は守りたくはなるんだけど……それを守ってしまったら俺は男ではなくなるんだよなぁ。
「みんなが祝福してくれている。嬉しいな」
「あ、ああ」
どうすれば……一体俺はどうすれば……
「ねえタカシ、僕さ。子供は三人ぐらいは欲しいんだ」
ああ、そうですか。子供さんですね。いいですね子供さん。俺も嫌いじゃないですよ。けどさ。俺のこれって呪いで性別変わってるだけなんだけよな。そもそも子供なんて産めるわけ……
「おや? なんだい。もしかして子供が生まれるかどうか心配なのかい?」
こやつ、心を読みやがった。
「ふふ、君のことならなんでも分かるよ。だけど安心してほしい。母体として固定されれば男には戻らない。二つの魂が混じった状態だからね。生まれるまでは戻ることはないから大丈夫だよ。だから君は何も心配しなくていいんだ」
「いや、安心もできないし、よりいっそう心配になったよ」
「分かってる。突然の話に君が不安になるのも当然のことだとは思う。ただ、僕は君と一夜を共にしたことで得がたい幸福を得ることができた。アレは本当に素晴らしい体験だったんだ。心が天にも昇るかのような気持ち。僕は君にも同じように感じて欲しいんだよ」
うん。それはつまり俺に快楽堕ちしろってことですよね?
いや、とりあえず落ち着けタカシ。クールになれ俺。どうせ認定式が終わればこの呪いは解除されるんだ。そしてマキシムは俺への気持ちに気付いた。もう誤魔化すことはしないだろう。つまりはこいつは俺が好きで俺が男に戻ればこいつは自動的に俺の女になるってわけだ。おお、最高じゃないか。完璧だ。あきれるほどに完璧な計画だ。
「ああ、マキシム、分かったよ。その気持ちは受け取ろう。悪かったな、ちょっと混乱していたみたいだ」
「それは分かるよ。けど、お互いの気持ちが確かなら問題はない。僕はきっと今日という日を忘れないだろう」
そう言ってマキシムが俺に抱きついた。ああ、俺も忘れないさ。だがマキシム、俺は彼女ではなく彼氏になるのだ。待っていろ。この件が終わったらすぐさまお前の親父さんに呪いを解いてもらって……ん? マキシムを彼女にするために親父さんに呪いを解いてもらう?
あれ、それって……詰んでいないか?




