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069 闇の聖剣伝説

本日、2話掲載しています。


 教皇様の父であるローエン様にチンドラこと、神竜アルゴニアスからの救援要請を伝えた翌日。俺はお役御免となりたかったのだがマキシムとともに王城に呼ばれていた。

 体感的には翌日というか四ヶ月後って感じもするんだが……


「タカシ、どうかしたのかい?」

「いや、なんでもねえ」


 まあ、気のせいだろう。ちょっと緊張してるのかね。まったく、俺としたことが。


「それでここに呼ばれた俺はどうすりゃいいんだ?」

「うーん。まあ、ひとまずは話を聞いてるだけでいいと思うよ。僕たちに求められてるのは不測の事態への対処だろうしね」


 俺の横に並んで座っているマキシムがそう返してきた。

 つまり俺も戦力として見られてるってことなんだよな。勇者のダルシェンといい勝負をしたのは知られてるし、教皇様にはデミディーヴァと戦ってることもバレてるからなぁ。

 そんで、この会議室の円卓を囲んで座っている他のメンツだけど、まず真向かいにいるのは昨日ようやく会えたローエン様だ。その横には教皇様に聖騎士団長、あとはよく分からん偉い人が何人か。確か四大司祭のひとりだったり、この国の大臣だったりだったっけ。

 それと残りのメンバーは俺と、勇者のマキシムとダルシェンだ。

 余談だけど聖王国は王の国であるので当然王様がいるんだけど、教皇様が兼任してるそうなんだ。ま、つまり目の前にいる人は施神教の教皇であると同時にガチャリウム聖王国の聖王ってことだな。

 で、話を戻すが今回のこの会議はローエン様が教皇様に掛け合って集められたものだ。神託の認定式にナウラさんをおびき寄せ、その間に聖門を開けることができるローエン様が聖門の神殿に向かい、神域の状況の確認を取る……という流れだな。

 何もなければそれに越したことはないし、ナウラさんには謝罪すれば良いと教皇様が集まったメンツに説明しているわけだが、実際に俺は神域である霊峰サンティアに悪竜がいたのを目撃している。残念ながら間違いはない。だから戦いは必ず起こるだろう。

 それと実はもうひとつの問題がこの場で起きた。

 いや、本当になんでこんなことになったのか、俺にも意味が分からないんだけど……


 まったくね。世の中ままならない。


 そのことに俺が気付いたのは思えば中学生の頃だったか。

 そうだな。これは今の状況と無関係じゃないから話すんだが、その頃の俺はお金を出してガチャをするという発想も金もない、無課金勢と言われる存在だった。今じゃあ信じられないけどな。

 けれどもそんな俺にも脱童貞チェリーの時が来た。つまり年初めに与えられた力(お年玉)をついついガチャに注ぎ込んじまったってわけだな。子供が大人になった瞬間さ。蛹が蝶になったと言い直してもいい。

 そのときは結局爆死して、コタツの中に引きこもって涙を乾かす羽目になったわけだし、あの頃はそれがまるでその後の俺の人生を暗喩していたようにも感じられたんだが今思えば若かったんだな。出るまで回せば出る……そんな自然の摂理にあの頃の俺は気付けていなかった。()も足りなかった。笑っちまうだろ。

 けど、貫いてきた無課金を破り、微課金勢になったことは俺の転機だった。ただ、のちにその件でひとつの問題が浮上して来た。そう、母親だ。


 タカシ、お年玉を計画的に使う約束はどうしたの?

 三万円はあったわよね?

 黙っていたら分からないからちゃんと話しなさい!


 うるせえ。全部ゴミカードになって俺の唯一のウルトラレアのゴージャスエツコの経験値に変わったよ。傷口広げんじゃねえ! ……などとキレるわけにもいかず、結論から言うと俺のお年玉をカツアゲした謎のエアヤンキーが爆誕した。

 流した涙は本物だった。悔しさも本物だった。ただ、その意味は違っていたことにうちの母親は気付かなかっただけだ。

 ともあれだ。それで追及は逃れたと俺は思っていたんだ。


 甘かったよ。


 息子の言葉を信じた母親は、PTAなるゲシュタポの如き組織を通じて情報を拡散させ、魔女狩りを開始していた。恐ろしい話だろう。けれどももっと恐ろしいことに謎のエアヤンキーにお年玉を奪われた生徒は俺ひとりじゃなかった。あれよあれよと増えていったんだ。全員ガチャってやがった。

 その結果として、年明けの朝会で被害者が何も言わないから白か黒か分からないけど限りなくグレー……という謎の理屈により、寅井くんという生徒が謝罪会見をさせられることになったのだ。

 当時の彼は高校入学のために黒髪のオカッパにしていたが、中二の終わりまでは金髪のスーパー野菜人ヘアーでエクスカリバー寅井と言われるほどの暴れんボーイだった。まあ、多分冤罪である。生贄といってもいい。少なくとも俺は寅井くんに盗られたわけではない。

 ただ、そうなっても仕方がないと思わせるほどに寅井くんは様々な伝説を築き上げて来た男でもあった。

 特に数多くある伝説の中でも浜村西中のグングニル黒田との河原の決闘は今でも語り草になっているほどだ。

 金色の特殊警棒を振り下ろしながら「エクスカリバァァアアア」と叫ぶ勇姿はSNS経由で今でも動画で残っていて、一時期はそれを加工して寅井くんがビーム剣を振り回したり地球を割ったりした動画が百万再生突破したりとネットでちょっとしたブームになったりしたこともあった。

 思えば俺がガチャ実況をしようと思ったのも寅井くんのあの動画の再生数を見たことがきっかけだったのかもしれないな。

 そんなこんなで巻き込まれただけの寅井くんは、結局被害者が名乗り出なかったために最終的には志望高校に無事入れたらしい。ただその件で心に傷を負った彼は、汚い大人の不条理を拳で吹っ飛ばす弁護士を目指しているようだと風の噂では聞いていた。

 その後は彼について音沙汰がなかったのだが、ただ今、俺には分かっていることがひとつだけあった。


「ナウラ様が魔族と通じているなどと本気でおっしゃっておられるのか?」


 そこにいたのは後からやって来て、激昂しながら金髪をフサァと垂れ流している男、聖剣の勇者ドーラであった。

 そして俺は知っていた。ヤツの別の名を。そう、その男のもうひとつの名は寅井一茂、つまりは俺の中学時代の同級生であった。


 いや……なんでこいつ、ここにいんだよ。


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