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024 宿命の再会は花と散りて

「うぉぉおおおおおおおん」

「タカシ様、もう飲みすぎですよ」


 酒! 飲まずにはいられない!!

 右手に大ジョッキ、左手に大ジョッキ。交互に飲むことによって隙を作ることなく飲むことが今の俺には可能だ。ヤバい。右側の方が先に終わった。交互に飲んでたのに何それ怖い。あ、右側の方を先に飲んだんだから、そりゃあ右が先に終わるか。そうか。さすが俺だな。まさかのゼロ秒解答。天才か。は、はははははは。


「ウワァアアアアアアアアン!」

「泣き叫ばないでください!?」


 うるさい。四百万円以上かけてあの渋ガチャとかあり得ない。

 辛い。辛過ぎる。俺にもっと優しい言葉をかけろリリム。


「ま、まあ。タカシ様。限定のウルトラレアは基本的に排出率1パーセントぐらいと言われていますし……その、こう言ってはなんですが……普通といえば普通で」

「はははは、100回に1回。後四百万円注ぎ込めと。それでも確率の問題だから出るか分かんねんですよね?」

「ええ、まあ」


 ですよね。畜生。チッ、左手のジョッキのビールも尽きたか。


「チックショウ。親父、酒だ。酒持ってこい。この店で一番高……くない。なんかいい、ある程度の値段のヤツだ。そうだ。うん。普通のビールでいい。持ってこい!」

「はは、荒れてるみたいだね」

「勇者様!?」


 ん、なんだよ? 荒れてる俺のそばに来るたぁ、命知らずのイケメンだな。おいおい、俺はノンケでも今なら食えちまうよ? いや、嘘です。チンコは無理です。あれ、こいつ……どこかで? あ、ああ勇者、勇者だわこいつ。


「お前、マキシムじゃねえの。どうしてここに?」

「うん。こっちに来るって言ってたじゃないか。で、ロウトの町まで行って今日戻って来たところさ」


 ロウト……思い出したくもない。あの町長、いつか泣かしたいな。


「勇者様、ドラゴンがどうだったのですか?」

「いや、どうも西の方で隻眼の巨竜が出現したという話があるみたいでね。やっぱり移動していたようなんだよ。なんで依頼はひとまずキャンセルになった。で、そちらは?」


 マキシムが俺を見る。こいつ、イケメンっちゃあイケメンだけど、中性的な顔立ちだよなぁ。男にも女にもモテそうだし女装したら美人そうだな。で、勇者。いいねえ。人生がリア充なヤツは。まあ、国中歩き回って魔物倒すとか苦労してるみたいだけど。そうなるとこいつもあの町長みたいなのに毎度だまくらかされて……キツイな、そいつは。可哀想に。なんて酷い人生なんだ。辛いな。お互いに。


「リリムさん、なんでタカシは僕を憐れんだ目で見ているんだろう?」

「酔っ払いの行動に意味を求める必要はありませんよ勇者様。ガチャが爆死して酒で気分を紛らわしてるだけですから」

「よんひゃくまんえーん」

「ヨンヒャクマンエン?」


 ふふ、マキシムめ。狼狽えているな。分かるまい。お前に四百万円の価値が。


「故郷の通貨のことらしいです。金貨220枚でウルトラレアが出なかったので不貞腐れているんです」


 あ、バラされちゃった。残念だ。


「というと、それは限定ガチャかい?」

「はい。1回聖貨2枚のものです」


 その言葉にマキシムが「なるほどね」と頷く。


「ウルトラレアの排出率は1パーセントぐらいだから、それなら出なくてもおかしくはないだろうけどね」

「うるせー、そりゃもう聞いたよ。俺は自分の馬鹿さ加減にほとほと呆れてるんだよ。一年分の給料をドブに捨てたんだぞ」


 一年分かぁ。会社の方は欠勤扱い? それとももう首かなあ。先輩、マジキレてそう。ああ、帰りたくねえ。酒でも飲んで忘れよう。


「また一気に飲んでる。本当にどうしようもない人ですね。一応、売り払ったアイテムでまた金貨20枚ぐらいにはなりましたから、ここの支払いは問題ありませんけど」

「ガチャに使いたい……」

「い、今は我慢してください」


 なんだよ、リリム。ほんのタカシジョークじゃないか。いいって言われたら回すけどね。お前がいいって言ったからって言って回すけどね。けど、ガチャで出した武器防具って買い取り安いのな。まあ、爆死勢がいつも売りまくってんだから当然か。強いヤツはガチャ産の魔導器を使うだろうし仕方ないけどさ。


「ふぅ、典型的なガチャ依存症だね」

「お前だって……そういうときないのかよ?」


 俺の問いかけに、マキシムは首を横に振る。


「僕は鉄の意志でガチャ欲を押さえることが可能なんだ。状況を見極め、ガチャを止める勇気を持つ……それが勇気ある者、勇者の条件だ」


 マジかよ。悔しいけど感じちゃう系男子だわこいつ。え、どういう意味? 分かんない。つか、勇者の条件ショっべぇ。


「そうなのか。まあいい。マキシム、お前も飲め。奢りだ」

「すみません勇者様」

「構わないさ。ただ故郷の習慣でね。お酒は付き合えないけど、話し相手にはなろう」

「しゃあねえな。じゃあオヤジ。ミルクくれ。ママの一番搾りの。は? 五人めの仕込み期間からしてあと三ヶ月先? じゃあ牛のでいいよ。ほらマキシム、飲むぞー」


 そう言って俺はジョッキを掲げた。なお、そこで俺の記憶は薄れて、そして……




  **********




「つぅ……」


 頭痛い。飲み過ぎたか。

 ん、ここは宿屋の……俺の部屋か?

 確かガチャで爆死して、それで酒場で飲んで……で、自力でここまで戻ってきたのか。偉いぞ俺。リリムは自分の部屋かな。で、なんかマキシムとも会った気がするんだが。


「う……うん」


 は? あれ……いたというか、いる? マキシムがここに? しかも同じベッドに?

 待てよ。それよりもこいつ、おいまさか女だと? 嘘だろ!?

 なんで分かるかって……だって裸なんだよこいつ。付いてないし、胸もでかくはないけど控えめに盛り上がってるし。それが俺の横で寝ていて……え、おい?

 俺も裸だ? なんだこれ。ちょっと待て。これは一体? だれか説明を!?


「もう、うるさいなぁ。ん、君も起きたんだね。ぁふぅ、おはよう」

「お、おはよう」


 俺が手を挙げて挨拶を返す。こいつは動揺していないな。この状況を理解してるってことか? アクビとか出てるしさ。


「まったく君ってずいぶんと積極的な人だったんだね。あーあ、もうやっぱり跡がついちゃってる。魔物に組みつかれたときみたいだよ。ちょっと、あんまジロジロ見ないでくれるかな。もう明るいし、その……ちゃんと見られるのはやっぱり恥ずかしいから……さ」

「わ、悪い!?」


 顔赤いし、なんかかわいいぞコイツ。いや、それよりも、このシチュエーションっておい、まさか?


「それにさ。僕、初めてだったんだよ。それをあんな強引に、乱暴にして……そりゃあ確かに頼み込まれて、流されちゃった部分はあるけどさ。本当にもう君って」


 つまり


「昨晩はお楽しみだった……よね?」


 ですよねえ。

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