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021 接続せし者

 サンダークラウドを倒してから三日が経ち、俺たちが今ようやく学都オーリンにある施神教の神殿内にある換金所に戻ってきた。

 そして、今回の報酬だが……


 ロックゴーレム二体で金貨20枚。

 ゴブリン三体で金貨6枚。

 サンダーミスト三体で金貨18枚。

 合体したサンダークラウドの核石は金貨150枚。

 国からの特別報酬はロックゴーレム金貨20枚、サンダークラウドは50枚。

 依頼は達成扱いになったので金貨15枚。


 自分で育てて倒したようなものだから若干後ろめたい気もしたが、リリムが(黙っていれば)大丈夫ですよとゴリ推したのでその通りにした。うん、俺も心が弱い人間なんだ。もらえるものはもらいたい。

 ちなみにサンダークラウドは相当危険な魔物だったようで、合体直後でもなければ俺らでどうにかなったかは非常に怪しいものだったらしい。何せ本来はあれの周囲に雷雲ができて、本体に近づくことも確認することもできなくなるんだってさ。いやぁ、怖いね。

 ドラゴンに近い報酬になるのも当然ってわけだ。逃げてたら晒しあげられてたんじゃねえの、俺?

 で、報酬は合計で金貨279枚。円換算で五百万円越えだ。やべえな。その上にサンダークラウド討伐で雷属性召喚限定ガチャが出た。召喚ガチャは希少らしく、これにはリリムも大興奮だ。


「で、お前の取り分、金貨28枚な」

「ふふふふ、問題ありません」


 銭袋に頬ずりしてるぞ、この天使。

 まあこの十分の一の取り分は契約によるものだが、活躍の度合いで見れば妥当という気がしなくもない。ちょい多めなのはボーナスということにしておこう。小銭崩すのが面倒とか、そういう事情はさておき。

 これでようやく金貨251枚が俺の手の中に転がり込んできたわけだ。

 おっと、換金所内の討伐者からも羨望の目が向けられているな。ふふふ、これからこの金貨は聖貨へと換わり、俺が使役する召喚獣へと換わるのだよ。ははははははは。


「タカシ様……その、薬草の鑑定をお忘れではないですよね」

「あ」


 そんなものもあったか。けど、雷属性召喚限定ガチャですよ。ねえ?


「まずは神の薬草の鑑定をしましょう」


 おっと聞く耳持ちませんか


「うん、まあ……そっちの方が正しいんだろうけど。けどさあリリム」

「あれがまともに使えれば非常に有益なはずなんです。私は二度と食べませんけど。絶対に。何があっても!」


 すごく苦々しい顔をしながら言ってくるよね、この天使っ娘。

 そりゃあトラウマだろうけどさ。俺もだよ。女の子の中身に綺麗なものが詰まってるわけじゃないんだってよく分かったしさ。

 ともあれだ。鉄の意思で自制した俺はやむなくリリムの知り合いらしい鑑定士と呼ばれる人物の元へと向かうことになった。

 雷属性限定ガチャは一旦お預け。まあ、終わったらすぐ戻ってくるけどさ。




  **********




「金貨30枚だね」

「高え」

「高いですね」


 そんなわけでここは鑑定屋で、目の前にいるのは鑑定士のパスカルだ。この女がリリムの知り合いらしいんだが、例のゴッドレアの薬草を見せたところ、このような返答があった。さすがゴッドレアというべきだろうか。ボラれているんだろうか。

 そして、そんな俺の様子を見てパスカルが肩をすくめる。


「まあ、普通に考えると高いと感じるかもね。止めとく? ちなみに金額はどこももう少し上乗せになるだろうけど」

「それはゴッドレアだからか?」


 俺の問いにパスカルが「そうだね」と返してきた。


「悪いけど、リスクを考えるとそれぐらいはいただかないと割に合わないシロモノなんだよね」

「どうしますかタカシ様?」


 うーん、金貨30枚か。話を聞く限りは嘘を言ってるわけじゃあなさそうだし。まあリリムの推薦だし、他でふっかけられるよりはいいかなぁ。


「いいぜ。金はある。よろしく頼んだ」

「な!? 考えなしにガチャに全額ブチ込むしか脳がないタカシ様が、迷いなく」

「黙れ。ガチャをやる前の今ならばまだ理性はある。逆にいえば今しかないんだ」


 あ、こいつ……限定ガチャに全額ブッ込む気だよって顔してるな。ああ、そうだがそれが何か? お前に報酬は払った。あとは好きにさせてもらおう!


「おやおや、ガチャ依存症かい。あまり褒められたものではないがね。まあ、そういう君のような人物が肥やしになってくれているから、僕たちの商売が成り立っているということもあるのだけれど」

「なら、問題ないだろ。ほら、金は払う。確認してくれ」


 俺が銭袋から金貨を30枚取り出して並べて見せた。聖貨15枚分か。ハァ……


「承知した。じゃあ見るかい」


 金貨を数え終わったパスカルはテーブルの上のものをどかすと、その上にカードから出した魔法陣が描かれた布を敷いた。さらにその魔法陣を取り囲むように棚に入っていた何かの宝石や護符などを取り出して並べていく。


「何してるんだ、あれ?」

「ガチャで手に入れたカードは基本的にガチャ様の力の一端が現界化したものです。鑑定士はそれに干渉して、カードの中身の情報を覗き見るのですが、人の身で神の力に触れるのは負荷がかかりすぎるので、アレが必要なんです」

「そういうこと。周囲のマジックアイテムはその肩代わりさ。あと、こいつも使う」

「それは見通しの水晶?」


 パスカルが取り出したカードから出てきたものは俺もよく使うアイテムだった。


「おや、君も持っているのかい。まあ、こいつを媒介に干渉することで、より見ることができるわけだね」

「見通しの水晶にそんな効果が。となると俺も鑑定できるのか?」


 その問いにパスカルは首を横に振った。うーん、駄目なのか。


「あくまで見るための媒介だからそれだけではね。残念ながらカードは同時三枚しか使用できないという縛りがある。それを補う魔術やスキルが使えないと鑑定は難しいんだよ。まあ鑑定用のウルトラレアアイテムでも引ければ別だけどさ」


 鑑定用のウルトラレアなんてものもあるのか。しかし、なるほど。そう上手くはいかないもんだな。


「さて、準備は整った。出なさい閃きの杖」


 そして、パスカルがカードから杖を取り出した。穴がふたつだからスーパーレアかね。すでにセット済みのジェムがスロットには埋まってる。そんでパスカルが見通しの水晶を薬草のカードの上に置くと「開門」と口にした。


「あれ、スペルを唱えてる?」

「ええ、パスカルはここの大学の出です。スペルジェムでは扱えない高位魔術のアクセスを使えるんですよ」

「スペルジェムでは扱えない? そんなのがあるのか?」

「ジェム自体は存在しています。けれど工程が複雑で、実際にアクセスの魔術を学んでいないと制御そのものができないんです。だからアクセスのスペルジェムは術を安定化させるぐらいしか使い道がありません」

「そんな縛りもあんのかよ」

「はい。パスカルに教えてもらいました」


 なるほど。


「なあ、リリム。パスカルとは知り合いなんだったよな?」

「ええ、時々鑑定のためにロウトの町の神殿に出張できてもらってましたので……同い年ですし、気が合いまして」


 ああ、そういう繋がりか。おや、そんなこと話してる間に並んでた宝石がパンパン壊れていってるんだが。


「リリム。あれってなんだ?」

「パスカルの負荷を肩代わりしてるのだと思いますが、私が前に見たときは少しずつ宝石が崩れていく感じでしたよ。ゴッドレアだとあんな風になるんですね」


 やっぱり凄いんだなゴッドレア。まあゴッドだしな。

 お、最後の護符が燃え始めたところでパスカルが手を離した。それから汗を拭うと俺たちの方へと目を向けて頷いた。どうやら鑑定は終了したようだな。

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