153 腐食の目覚め
あらすじ:
リリムがマキシムの下腹部の秘密を知ってしまった。
「ハァー!? マキシムには聖剣が付いてないし、タカシ様と実はラブラブで、きっかけは酔っ払ってネンゴロになったから……ですか? マジですか? マジ……っすか?」
「ええと、ごめんね?」
「黙っててすまん」
聖王都に戻ってきて二日目、トネリの泉という回復手段が手に入ったためにガチャの期限ギリギリでマキシムは目覚めることができた。そして目覚めたマキシムから聖剣の不在の件を教えられたリリムはガックリ来ていた。
「おふたりがそういう関係であることは……その、なんとなく気付いてはいました。陰ながら応援するつもりだったのですが……」
「お、おう。そっか。気付かれてたか。いや、それは気を回させたな?」
ううむ。リリムも案外鋭いな。そっか。マキシムと俺のこと、気付かれてたのかぁ……ああ、そうか。けど、お前。マキシム男だと思ってたよね? 気付いたのはいつかな? 俺が女になったときかな? 男のときからかな? いや、そこを突っ込むのは止めよう。なんだか腐った臭いがする。開けちゃいけない気がする。
まあ、そんなこんなでリリムにマキシムの性別がバレたが、だからどうということもなくこの日がやってきた。白神降臨ガチャ最終日だ。
黄金都市ドルチェから持ち込んだ物品の換金は無事にすべて完了。目の下にクマができた商人さんが今朝方に目録とともに手渡してくれた。ゴーレム素材は素材の量で測ればいいが、一緒に渡した財宝関係の鑑定には時間がかかったらしい。教皇様経由で無理にお願いしちゃったけど、すべてはガチャのためだ。それは俺の力となり、回り回ってみんなのために使われる……かもしれねえ。そして手に入った金額だが……
「さあ見ろ。これが今回の成果だ!」
俺がテーブルの上に聖貨を山積みにして満面の笑顔でそう口にした。
今回の依頼の元々の報酬は金貨1000枚だったが、パラオの討伐分が600枚上乗せになったことで1600枚となった。ネームドとしての脅威度を考えれば、表に出せば倍以上の金額になるかもしれないとの話だったが、討伐の証拠がないので認定に時間がかかるのと、黄金都市崩落と俺のことを明かす必要があるそうで、そんな手順を踏まえるよりも俺は目先の金に飛びついた。
金が必要なのは今であって未来ではない。未来を創るために今がある。だから何も惜しくはない。完璧な理論武装だ。
それからあっちで集めたもんの換金額は合計金貨8000枚にも及んだ。
ちなみに売っぱらった価値的には通常のゴーレム素材はそこそこで、続いて拾い集めた財宝。これは歴史的にも美術品的にも価値があったらしく、今回の換金額の大半を占めている。それから稀少性では一番大きいのがオリハルコンのカケラ。どうもオリハルコン素材で造った武具ってのは魔導器に匹敵する性能らしく売り払うのは惜しい気もしたが、所詮は素材。別の機会に手に入らないわけじゃないだろうからと今回は涙を飲んで諦めることにした。
それで換金と報酬を合わせて合計9600枚の金貨の分配だが、まずマキシムと俺の半々で4800枚。それからリリムには俺の取り分の十分の一という契約なので480枚を渡して俺の手持ちは4320枚という感じだ。
そろそろリリムも戦力として使えるようになってきたので金銭的な配分については改めて考えたいとは思うんだが、ガチャの神様との契約の変更は難しいとのこと。だから、まあ今回は置いておくとして、次回以降はガチャ資金のボーナスぐらいはくれてやろうかと思う。マキシムも申し訳なさそうな顔をしていたしな。
そんで手に入った金貨を聖貨に替えて2160枚。マキシムとリリムが躊躇く全額使ったことに苦笑いを浮かべていたが、このために稼いだんだ。遠慮などしない。リリムが「平民が一生遊ぶのには十分な金額なんですけどねえ」とか言っていたがそうした葛藤はとうに通り過ぎた道だ。
さらに都市壊滅ボーナスとか王殺しボーナスとか物騒なボーナスがいくつか追加されることで少し積んで2325枚になった。前回挑んだときよりも聖貨の数は上回っている。
そして今回俺が挑むのは前回と同じ白神降臨ガチャ。一回引くごとに聖貨10枚が必要な、日本円に換算して一引き40万円の超高レートガチャだ。
ピックアップはトネリの泉と雷霆の十字神弓だったが、この世で一枚しか出ないユニークのトネリの泉はすでに入手しているため、現在の白神降臨ガチャは雷霆の十字神弓の単独ピックアップとなっている。
それと手持ちの雷霆の十字神弓は現在一枚が重なっている状態だ。魔導器は四枚重ねまでできるから今回の232連の内に雷霆の十字神弓を二枚出せればコンプリート、俺の勝確だ。ま、楽勝だな。イージー過ぎて鼻で笑えるくらいだ。
「実弾は用意した。前座は終了。ようやく本番だ。それじゃあ白神降臨ガチャやるぞ!」
そして俺は挑む。ここからが本当の俺の戦いだ!
そして少年は挑む。見果てぬ夢を追いかけて。
普通に次回に続きます。