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150 ドラッグレーサー

あらすじ:

 マキシムが地下都市に行く。

 マキシムが闇の神の眷属を復活させる。

 マキシムが地下都市を崩壊させる。←今ココ 

 マキシムがヌルヌルになる。

「ヒャッハー、よしやったぞ。塔がぶっ壊れた。すげぇぜマキシム!」


 俺が手を叩いて歓喜の声をあげる。

 マキシムが放った水晶剣は俺らが今日まで探索していた王塔をかんぜんに破壊して、ポッキリと折っちまった。それはもう完璧にだ。

 塔内の探索はコンプリートどころか未だ5パーセントくらいしか進んでなかったが、この状況じゃあ致し方ないってもんだ。どうせここからただ逃げたとしても転移門は壊されちまうだろうし、俺がここまで戻ってきて回収できる見込みはないんだ。だったら綺麗さっぱりぶっ壊しといた方が諦めもつくってもんだろう。ははは、殺せ。

 ともあれ、マキシムが立てた作戦は現在完璧に進行中だ。

 神の薬草で強化したマキシムが俺たちが避難したトネリの泉の転移門の扉を抱えて王塔から脱出し、さっきの岩石弾を放ったゴーレムを倒して長距離攻撃を潰し、リリムとの合体技で王塔を崩してこの地下都市もろともゴーレムを埋めるっていうな。完璧だ。完璧過ぎる作戦だ。問題は王塔を本当に破壊できるかってことだったが、マキシムは見事にやり遂げた。やり遂げちまった。


『き、貴様らの狙いはこの地下都市を崩して我がゴーレム軍団を埋めることだったのか!?』

「そういうことだぜミイラ野郎。そんでどうやら成功だ」

『ぬうぅう。崩れていく。我が王国が。捨てるはずだった我が王土が……余を押し潰すというのか。過去が余を殺すというのか』


 おいおい、ノスタルジックに浸った声をして辛そうな顔で言うんじゃねえよ。俺だって辛いんだぜ。あの中にはまだ見ぬ換金品がゴロゴロしてるはずなのに、それを手に入れる機会を奪われたんだぞ。けれどもマキシムが望んだんだ。だったら俺も人々の平和のために涙を飲もう。俺も仲間として懐の広いところを見せてやるぜ。なあ、マキシム。って、うわ……


「り、リリム……そこのマキシムさんを回収してくれ。いいか、ヌルっとしてるぞ。頑張れ。頑張ってトネリの泉に持っていってくれ」

「はい、うわっ!? ナメク……いえ、大丈夫です。うわぁ、ヌルヌルしてるぅ。うう、閉めますね。タカシ様、そっちも頑張ってください」


 ソレはナメクジっていうよりはヤツメウナギって感じだと思う。


「分かってる。ヌメりはしっかりとって保存しておけよ」


 あのヌメり、聖王国で調べてもらったらなんかすごい効果があったらしいからな。リリムのでもそうなんだから勇者の一番搾りならとんでもない効果がありそうだ。どんな効果なのかは知らないが。


『力尽きた勇者を回収したか。どこまでも苛立たせる連中だ』


 リリムがトネリの泉の扉を閉め、俺はそれをカードに戻した。

 これであいつはもうマキシムに手を出せない。そして俺は魔力温存のためにクィーンの召喚も解除する。ルークも残り三体で、ここにいるのは俺と腕に掴まってるアルゴだけ。そして俺がすることはただひとつだ。


「それじゃあ、俺も逃げるんで。さいなら!」

『小娘が。ここまでしておいて余が貴様を逃すと思うてか』

「残念。逃げちゃうんです。出ろ神撃の戦車!」

『させんと言っている。せめて貴様らだけでも』

『おい、追ってきたぞタカシ』


 おお、さっきまでとは違って必死な形相してやがるな。あざーっす。必死過ぎて草生えますな。あざーっす。


「ふふん。追いついてごらんなさいよ、このお馬鹿さん!」

『殺す!』

『馬鹿かお前は。挑発すんな。完全にキレてるだろうが』

「へっ、あいつがキレようがキレまいがやるこたぁ変わんねえって。俺は迎撃する。アルゴ、手綱を頼む」

『幼竜に頼む事じゃあねえだろ、それ。やってやるがなぁ』


 手綱をアルゴに渡すと俺は後ろを向いて雷霆の十字神弓の弦を引いた。


「ライテー、水竜の聖矢だ」

『らーい!』


 神撃の戦車とミイラ男との距離は変わらず。その後ろを犬型のゴーレムが走ってきている。このまま何もなければ転移門まで逃げ切れるだろうが、あのミイラ男はそれを許しちゃくれねえだろ。

 けど、移動を邪魔されたらどうかな?


「飛べ、水竜の聖矢!」

『なんだ? 矢が小型の東洋竜に変わっただと? チィ、邪魔だ』


 普通に戦えばあのミイラ男の実力なら撃ち落とせるだろうが、高速移動中の今じゃあ無理だ。ケケケケケ、縦横無尽に動き回る水竜の聖矢の力にうろたえるが良い。


『自身の意思で操作できるわけだな。この程度は。…クッ。こちらの動きを予測しているような軌道、速度を落とさずに避け切るのは難しい。予想以上の使い手だったか』


 んー、動きにフェイント混ぜてきたか? けど俺が未来視で捉えている以上、テメェの攻撃は丸裸だ。ついでに雷の矢も五月雨に射ってやるよ。


「さあさあ、うざったいだろう? 邪魔だろう? けどな、足を止めて攻撃しても良いがその間に俺は逃げ切るぜ?」

『クソガキがぁあ! クッ、余のストーンガルムもやられておるのか!?』


 ミイラでシワクチャの顔がさらにシワクチャになって雑巾みたいになってら。けど、そうしている間にもテメェのゴーレム犬は俺が雷の矢でぶっ壊してるわけだ。高速移動に特化しているだけあって足の関節は脆いみたいだな。おっと、街を抜けた。数も減らしたし、ここで使うか。


『しかし、貴様程度の攻撃では余を倒すことなどできんぞ。そしてこれ以上、余が貴様と距離を離すこともない。分かっているのか? このまま転移門に辿り着いたところで、門の起動には準備が必要だ。その間に追いついてその身を切り裂いて……な、なんだ?』


 俺は顕現させた神竜の盾を神撃の戦車の後方に設置する。


『竜の顔のついた巨大な盾だと? 我が攻撃を恐れて防御を優先したか? しかし愚かな女だ。その重量では速度が落ちるだけだぞ、馬鹿め!』

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ。ドラッグレースモドキと行こうぜミイラ野郎! ブッ飛ばせ神竜の盾!!」

『くっ、ギャァアアアアアア!?』


 セイクリッドブレスで一気に加速だ。ついでにミイラを火葬してやった。

 転移門の遺跡まで直線コース。となればこいつは俺の勝ちってなぁ!


『さ、させるかぁあああああ!』

「おお、根性だねえ」


 ミイラ男が燃えさかりながら接近してくる。なりふり構わずに全力を出してきたな。


「けど後続は今の炎でリタイヤしたみたいだぜ?」

『貴様ひとり、余だけで十分だぁあ!』

『俺様もいるんだがなぁ。おいタカシ。着くぜ。このまま中に入るのか?』

「大丈夫だ。アルゴは俺の腕に戻れ。そんで神撃の戦車を解除、神竜の盾に乗る!」


 俺は戦車を解除すると勢いのまま、サーフボードの要領で神竜の盾に乗って飛び込んだ遺跡の中を滑っていく。どっちかっていうとこれはリュージュに近いかな。未来視で跳ねそうな場所も回避できるし、そのまま突っ込みゃ転移門まで一直線だ。


『にぃがすかぁああ!?』

「え、逃げるよ?」


 ここまで上手くいって逃げないとかあり得ない。ついでにテメェに土産を置いとく余裕だってあるのさ。ははははははは、因みに一番キレてるのは俺なんです。こんの馬鹿が目覚めたせいで俺のハッピー換金ライフが台無しさ。まだ一日あったのに。あのオリハルコンゴーレムだって丸ごと手に入れられたはずだったのに。だから死ね。死ね死ね。死んで俺に詫びやがれ。


「ライテー、爆裂の神矢を『全部』だ」

『らーい!』

『な!?』


 俺の指示でライテーが爆裂の神矢二十本を出す。そのすべてが十字神弓に添えられている。見た目無理があるが、ライテーが補正してくれる。


『爆裂の神矢を二十本だと? 貴様、一体どれだけの金を注ぎ込んだというのだ!?』

「知ってどうする? 絶望するだけだぞ」


 俺がな。

 そして俺が矢を放つとパラオの絶叫と共に爆破で視界が真っ白に染まった。

タカシは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

タカシには貯蓄がわからぬ。タカシは、只の廃人である。上司を泣かせ、ソシャゲ で遊んで暮して来た。けれども課金に対しては、人一倍に敏感であった。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 悲しみを背負うことで体得する強さが有る。
[一言] マキシム、君は、真っ裸じゃないか。早くそのマントを着るがいい。
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