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138 リヴェンジャーズ

あらすじ:

 逃げた。

「ああ、疲れた。爆裂の神矢は尽きたし今日はアレに再戦するのは無理だなぁ」

「私も魔力が限界です。夕方になればまだ戦えるとは思いますけど」

「僕はまだ余力あるけど……無策で挑むのはちょっと無理かな」


 王塔前の門を守る巨大銀人形とスティールゴーレムの群れに尻尾巻いて逃げた俺たちは、神撃の戦車で一旦離れてトネリの泉に戻って反省会をしていた。ああ、敵の襲撃を気にせず安心できる拠点があるってのは最高だな。ま、今はそういうこと言える雰囲気じゃないけど。


「申し訳ありません。結局倒せたのは一体だけでしたし一番足を引っ張りました」

「いやいや、リリムは今回よくやったよ。足止めだけじゃなくてスティールゴーレムを単独で撃破したんだしね」


 確かにな。

 正直リリムの実力だと足止めも難しいってのが俺とマキシムの最初の認識だった。神々の法衣があるとはいえ、扱うのは人間だ。途中で集中力が切れればアラも目立つし、隙もできる。ただリリムは神官だけあって精神的な部分はそれなりに鍛えているらしく根性はある。だから集中力も持続してアーツをすべてヒットさせてスティールゴーレム一体を倒すことに成功していた。


「そんな事は……ないと思いますけど」

「君の実力から考えればスティールゴーレムを一体でも倒しただけで十分だよ。リリムは十分に役割を果たした。問題は僕だ」


 マキシムが肩を落としながら、自嘲気味な顔をしてそう言う。


「お前というか当初の作戦がマズかったというべきだな。俺とリリムでスティールゴーレムを引き受けて、マキシムがあの銀人形を倒す……戦力分散して勝てる相手じゃなかったってだけだ」

「でも、それは僕が倒せなかったのが悪かったんだよね」

「いや……そこはパーティとして決めた事だからな。ひとりに責任を押し付けるつもりはねえよ」


 俺がそう言ってもマキシムの落ち込みは回復しない。

 こいつ案外失敗多いからな。負け癖ついてるのを気にしてるのかもしれねえ。


「うん、分かったよタカシ。そうだね。けど、あのクラスがいるとはね。気づかなかった時点で戦う前から失敗だったとしか言いようがないよ」

「あのクラスって……あのミスリルゴーレムか?」

「ミスリルドールだよ」

「ゴーレムじゃなくてドール?」


 確かにあの巨大銀人形は球体関節だったし、ゴーレムというよりもドールという方がしっくりくるな。


「分類すればゴーレムの一種だけどね。天然物で蓄積してミスリル化したシルバーゴーレムとは違って、門番として調整された完全な魔導兵器の類だ」

「それ、普通のゴーレムとどう違うんだ?」

「関節部分が滑らかで高い戦闘技能を有している。魔導器には頼らない技術の産物だよ」

『ガチャリウム聖王国中心の聖欧州は姉御の加護を受けてガチャで底上げしている……が、おかげでそういう技術は弱いからなぁ。まあメルカヴァとかと同類っちゃー同類だな』

「なるほど。ガチャが便利過ぎたことで発展がし辛くなってるのか」


 そう考えるとガチャってのも良し悪しだな。


『とはいえだ。奉納された他の地域の技術をガチャとして得られるって利点もあるにはあるぜ。闇の神の力が顕現しやすく魔物も強力な聖欧州では即戦力が求められるって事情もあるからな』

「ん? ガチャができるのはこの地域だけなのか?」

『いんや。神殿があれば可能だぞ。ただ信仰が薄いところじゃボーナスで貰える聖貨も少ないし、ピックアップも大したもんが出ねえんだよ。まあ、地域によって崇められてる神も違うしな』


 そういうもんか。確かにガチャの神様だけの一神教ではないものな。闇の神クライヤーミリアムに俺をこっちに連れてきた旅立ちの神アザス、あとはリリムの法衣の加護を与えてた武神ってのもいるんだったか。そうなると地域ごとの神様とか結構いそうだな。


「ともかく、情けない話だけど、あれを僕ひとりで倒すのは無理だ」


 確かにチクチクダメージを蓄積できればと思ったが修復されるし、攻撃が速過ぎて大技決めるのも難しそうだったものな。となると……


「それじゃあ俺もミスリルドールと戦う必要があるってことか?」


 そうなるとリリムひとりにスティールゴーレムを相手にさせる必要があるわけだが、流石にそいつは無理だろう。そう思っている俺の前でマキシムが首を横に振った。


「いや、君と僕の力を合わせてもギリギリいけるかもしれないけど……今回はリリムの力を借りたいと思う」

「私のですか?」

「うん。僕の神巨人の水晶剣は現在アーツが3つ使える」

「確かサンティアの時にはクリスタルツリーとかいうのを使ったって聞いたな」


 剣から水晶の枝が伸びて串刺しにするアーツだ。それでドラゴンを滅多刺しにしたらしい。


「うん。とはいえ、アレは刃が通り辛い相手には効きにくい。一撃必殺ならクリスタルスパイクというのがあるんだけどね。溜めが必要な上に正直倒しきれるか不安がある。だからリリムの力と合わせて3つめのアーツを使う」

「ああ、もしかしてアレですか?」

「あれ?」

「はい。マキシムの最大のアーツはザイカン様との協力技なのですが……けれど」

「心配はいらないよリリム。僕も成長しているし、今は石剣も水晶剣になった。だからなんとかなるさ。最悪、死にかけても神の薬草もあるからね」


 気遣わしげなリリムの視線にマキシムが肩をすくめてそう返す。何かしらリスクがある? けどマキシムは自信ありげだ。


「つまり、マキシムにはリリムと協力してミスリルドールを倒す技があるということだな?」

「そうだよ。ただ、そうなるとスティールゴーレムはタカシひとりでどうにかしないといけない」

「まあ、そいつはなんとかはなるさ。そうだなアルゴ」

『ケッ、まだ実戦投入にゃあ早いと思うがな』


 そうは言ってもアルゴも否定はしない。まあ倒さなくていいんならどうにかはなるさ。ともかく方針は決まったな。あの人形野郎をブッ飛ばす。そしてガッポリ稼ぐ。


「ただ、再戦は神矢の復活のために明日まで待たないとな」

「私も魔力を回復させないといけません」


 だな。

 となれば……と、俺たちはここから夜までは市内でゴーレム退治とお宝探しをすることになった。ちなみに釣果はブロンズゴーレム3体、アイアンゴーレム4体、シルバーゴーレム1体。同時に家内の探索も行なったが、探索した辺りはすでに荒らされた後で結果はボウズだった。オフラインじゃないダンジョンはこういう問題があるからいけねえな。

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