136 ひとときの安らぎ
あらすじ:
リリムテコ入れ回だと思ったがタカシの無双回だった。
ゴーレムとの戦闘は滞りなく終了した。
あれからさらに集まってきたゴーレムを掃討して成果はブロンズゴーレム9体にアイアンゴーレム5体、それからシルバーゴーレムが2体手に入った。シルバーゴーレムはミスリル化している部分もあり高額で取引ができそうだとのこと。そのほかの成果としては見通しの水晶で調べていくつかの家の中にあった隠し財産を発見したってことぐらいかね。
ところどころに盗掘者らしい骸骨とかも転がってたし、漁り尽くされてないってことはここまで探索に来てる連中ってかなり少ないみたいだな。実際、聖王国の探索隊も引き返しているわけだし。
それにしても今回の戦闘でもハッキリと分かったけど爆裂の神矢が強力すぎてヤバいね。ボスクラスの相手にも通用してたから高火力なのは分かってたけど、雑魚敵相手だと一掃が可能になる。アレはSRではあるけど出すことができるガチャがほとんどないそうで、運良くすり抜けで1、2本手に入れられるか否かってシロモノらしい。20本も持ってるヤツなんてほとんどいないって話だ。まあ俺だってデミディーヴァ倒して出した神器限定ガチャで引いたわけだしな。確かにあのレベルのガチャなんてそうそうあるわけねぇか。
一回射ると一日程度は復活しないから、使うときには注意しなきゃいけないけど、後5日……いや、素材の鑑定を考えれば4日はある。使えるときには使って一気に稼いでおきたい。
そんで今は夜、ひとまずは転移門の近くまで戻った俺たちはトネリの泉に入って休んでる。けどリリムとマキシムは反省会だ。具体的に言えば、リリムが極限の神罰でブロンズゴーレムを熔かして回収できなくなったことにマキシムがお説教をしているところであった。あの時点で極限の神罰を撃つ意味はやっぱりあまりなかったんだよね。そもそもアレ一発でアーツ4回分の魔力が必要だそうだから無駄遣いも甚だしいとのこと。戦闘中は軽くの注意で終わってたけど、反省会となるとメインの問題点はやはりそこになるらしい。他に立ち回りに関しての話も出てるけど訓練後の初戦としては十分にできているとの話だった。
とはいえさ。リリムも手に入れた力を実戦で使ってみたかったんだよね。俺には分かるよ。俺にはな。
「君はタカシの従者でもあるが僕たちの仲間でもある。伸び代の大きい君次第でこのパーティの実力は大きく変わる。そのことを肝に銘じておくんだ」
「はい。頑張ります!」
説教されているにもかかわらずリリムの声にはハリがある。
反省会をして叱られるってのは期待の裏返しでもあるわけだからな。自身の成長も感じられてるんだろうからやる気が溢れてやがる。
ちなみに今回からマキシムは護衛から俺らのパーティに正式に登録されることになった。現在聖王都を離れているザイカンさんらには後日に連絡をするそうだが教皇様の後押しもあるのでこの決定は覆らない。それとあちらのパーティとくっつくという話にはならなかった。マキシムがいなくともあちらはあちらで高名なパーティだ。一時期療養だったこともあり、復帰した今は色々とやることも多いということだった。
俺としてはザイカンさんもセットにならなくてホッとしている。デミディーヴァを倒してからというもの、随分と束縛されてたからな。今後は自由に活動したいもんだ。
『おい相棒、初日としてはどうなんだ、この成果は?』
「相棒っていうほど、お前何もしてねえんですが」
『うっせえよ』
考え事をしてるとアルゴが話しかけてきた。寝てる以外はずっと俺の腕に止まってるからなコイツ。
「シルバーゴーレムは美味しかったと思うがなぁ。明日以降はもっと中心部に行ってプレシャスメタル系をもっと狙ってみたいところだ。外周部の家の隠し財産も大したもんじゃなかったし」
そう言って俺は目の前にあるバラバラになったゴーレムに視線を移した。
ゴーレムの身体は大きいし硬いが関節部は別だ。そこを破壊して体をバラバラにして運ぶのが正しいゴーレム素材の回収方法なのだとマキシムから教わった。こうでもしないとトネリの泉の転移門を通せないしな。
そんで破壊したゴーレムの残骸を俺の召喚したボルトスカルルークと神剛力の腕輪を持つマキシムでトネリの泉に運んだわけだ。まあ、もう少しレアリティの高いゴーレムを狙わないとガチャの足しとしては微妙だろうし、だったら奥に探索を広げるしかない。
「ま、明日は明日で考えるさ。しかし、このトネリの泉は引いてよかったな。今が地下都市探検中とはとても思えねえよ」
『そりゃあ転移で神域に入ったわけだからここも地上だろうしな』
「地上ねえ。位置的にはどこなんだ?」
『さて、神域ってのは通常の空間からは隔絶されてるからな。サンティア同様に普通じゃ辿り着けねえ場所だろうよ』
そりゃそうか。それにしてもトネリの泉は静かで、初夏のやや冷える程度の森の中という感じだ。軽井沢の別荘的な? 別荘なんて泊まったこともないけどさ。おっと、リリムの説教が終わったみたいだ。
「説教終了か」
「説教じゃないよ、今日の反省会。リリムは実戦経験があまりないからね」
「はい。今回は少々浮かれてました。明日からはしっかりと務めを果たしたいと思います」
「まあ、ほどほどになリリム。アルゴなんて何もしてねえんだし」
『ケッ、近づいてくる敵がいたらセイクリッドブレスで一撃なんだがなぁ』
いや、俺後衛職だし敵をそばまで近寄らせる気はねえからな。
「そういえばアルゴニ……アルゴはガチャはしたんですか?」
『マキシム、またアルゴニアス様って言おうとしたな。それに口調も硬ぇ。もっと砕けろや。俺様たちは……仲間なんだからな』
仲間という言葉でドヤ顏になるチビドラゴン。
こいつ、どれだけ仲間に飢えていたんだ? サンティアにも基本一人で篭ってたわけだし寂しかったのかもしれん。まあ、それはそれとして実のところ神意の黄金符2枚と神意の白銀符3枚は未だ使用してない。トネリの泉を引き当てたんで楽しみを後にとっておこうってのもあるが、アルゴが別の提案をして来たんだよな。
「なんかこいつがいうにはアレ、普通にガチャる以外に使い道があるらしいんだよ」
『ふふ、竜峰ヴァスティオン。そこで使う予定なのさ』
魔導国ザイラン。俺が男に戻るために会う予定の呪生樹ラゴウがいるその国に竜峰ヴァスティオンはあるらしい。ちなみに魔導国ザイランはサンダリアの北にある。
「おやヴァスティオンですか。そこ、私の実家の近くですよ」
おお、リリムはサンダリアのお隣の国の人だったんだな。
「うーん、そうするとどうする? お前が望むんなら立ち寄るけど」
「良いんですか?」
「まあついでだし、雇用しているスタッフのプライベートにも配慮する良い上司だからな俺は。それに俺も黄金符を使わせてもらう予定だし、ついでだついで」
「おや、タカシの方も黄金符は使ってないのかい?」
「まあ今回はトネリの泉も手に入ったし、それに神竜の盾もパワーアップしたし今回は我慢だ!」
俺の言葉に二人が驚きの顔をしている。いや、俺だって「待て」はできる子ですよ? それに黄金符も白銀符も今後手に入る当てのない超レアアイテムだからな。白銀符ひとつぐらいはとも思ったがグッと涙を飲んで我慢しましたよ。
そして神竜の盾だけど、あの大河で倒したリバージョーのヒレを鍛冶屋に頼んで重ねてもらった結果、ヒレ付きの船として使える形に変化したんだよ。盾なんだけどな。あと悪虚竜メイベルの爪も神罰の牙に重ねた結果、次元爪が追加された。次元を斬り裂くというのがどの程度有効な攻撃なのか分からんけど多分強い。
「アルゴだけじゃなくマキシムだって今回はパスだったよな?」
「うん、まあね。今回僕の選択できるガチャのピックアップの内容はすでに持っているモノか僕の戦闘スタイルには合わないものばかりだったからね。今は水晶剣を鍛える方を優先したいし、それに狙っている魔導器もあるからそちらに回そうと思って」
なるほど。マキシムは俺のライテーや寅井くんのヴァンみたいに精霊を出したいそうで、そのためにできることといえば神巨人の水晶剣の使用率を高めるしかないわけだが水晶剣はデカい分場所を選ぶからな。
今回は普段使いの重神剣グランと重神の円盾グラムスを封印して水晶剣オンリーで挑んでたが周囲の建物をぶち壊しまくってたしな。地下都市が崩れないといいんだけど。