129 白神降臨の恩恵
あらすじ:
前話でタカシくんが返した借金の額が少ないのではとのご指摘を感想でいただきました。タカシめ。借金の金額を忘れるとは酷いやつだ……で押し切ろうかとも思いましたが、さすがにタカシの落ち度ではないので修正いたしました。
金貨400枚返済を800枚返済に修正。手持ち金貨3880枚から生活費10枚抜いてのガチャスタートです。
『おい、いいのかよ? それもらっちゃって。元は俺様のだけどさ』
「いいも悪いもねえんだよ。ぶっちゃけ俺とマキシムの装備はある程度安定しちまったからな。パーティを戦力アップするならお前とリリムの強化が必須でお前ができるガチャはこれしかねえだろ」
そう言葉を返して俺は神意の黄金符と白銀符を一枚ずつアルゴに渡した。獣人などを含む人種はガチャができるが竜種は基本的にはできない。ガチャってのは戦う力のない人という種に与えられた白神の慈悲だって話だからな。
そして俺が自分で言った通りに俺とマキシムの装備はおおよそ固定されてきていて円熟期に入っているんだよ。この世界はガチャという神の悪ふざけで強力な装備が手に入る反面、レアリティが固定されているので強さの上限もある程度固定されている。もちろんURの中でもさらに強力だと言われる俺の十字神弓や勇者のリアルチートなどで戦闘力は上乗せできるし、ここから重ねたり厳選したりという過酷な道も待っているわけだけれども。
ともかく今の俺は自惚れなしでも勇者に近い戦闘能力を持っているので無闇にガチャる時期をすでに超えている。感覚的にマキシムはレベル80の勇者で俺はレベル65の弓使いと言ったところか。
なのに残りのパーティメンバーがインフレ合戦に追いていかれたレベル18の神官戦士とレベル1の雑魚竜なんだから早急に戦力強化が求められるのは当然のことだ。
ちなみにおれの腕にしがみついているコイツの攻撃はビームみたいに出るセイクリッドブレスだそうだ。このサイズじゃ噛みつきも引っ掻きもテールアタックも大したダメージになりゃしないので実際の攻撃はそれ一択と見たほうがいいだろう。となれば、竜族専用のガチャ確定券を使わせてパワーアップさせるのが一番だと俺は考えた。苦渋の判断だが、本当に苦々しい思いではあるがこれが一番賢い選択のはずだ。
とはいえ、この確定ガチャ券を使うのは後回しだけどな。まあこいつからは竜族専用装備と専用ジェムが出るのは分かってる。今はまず白神降臨ガチャの中身を見るのが先だ。
「じゃあリリム、頼んだぜ!」
「お任せください」
そして俺たちは現在、聖城イスィの奥にあるガチャの祭壇にいる。
俺がガチャの神様を降臨させたことは秘密のため、今回のガチャを普通の祭壇で行うことは当然NGだ。なので教皇様の計らいでこの特別な祭壇で行うことになったわけだが……
「くぅう。教皇ガチャなども行われるという、この至高の祭壇で私がガチャの導きを行えるなんて……これは実家に連絡したら祭りになりますね」
「おい、リリム。これ秘密だからな。バラすなよ」
「わ、分かっていますよタカシ様。白神の剣たるアルゴニアス様のおそばに居られるというだけでも十分に」
『おい、リリム。一応そういうのも漏らされて欲しくはないんだがな。俺様的に』
「は、そうでした。すみません」
俺とアルゴの指摘にリリムが謝る。今のアルゴは竜族最強(笑)から竜族最弱(悲)にランクダウンしているからな。アルゴがこんな状態になってるってことを魔族連中が知ったら当然襲ってくるだろうし、神竜の幼体なんていう希少価値だけを考えても奪いにくる連中なんて人族でもいくらでもいるはずだ。
しかし、白神関連のことでそこまで騒げるリリムの実家ってのはなんなんだろうな。ガチャの神様の眷属なのに一族で借金を背負ってるらしいし、赤貧生活の末にリリムは神官として出稼ぎに出されたって話だ。そもそも神官じゃなきゃ風俗に飛ばされてたとかも言ってたしな。
「では、コホン。気を取り直しまして……白神降臨ガチャを行いますね」
リリムがそう言ってキリッとした顔で祭壇に向かい合う。
白神降臨ガチャ。
それは白の神にして施しの神ガルディチャリオーネをその身に宿した者のみが得られるという幻の限定ガチャだ。教皇様の話じゃ白神降臨は建国以来これで三度めのことだそうで、過去二度のガチャは行われた時の記録が秘匿された上に現在では失伝していて詳細は不明なんだとか。
なので今回の結果は当たり外れも含めて教皇様も記録に残したいから報告が欲しいとのことだった。まあ、それぐらいはな。ここを貸してもらったし、内容次第じゃまた報酬もらえるし。
それから俺らの前でリリムが「むんっ」という顔をすると、何かを受信し始める。
「むむ、タカシ様。神降臨ボーナスと悪竜討伐ボーナス、そのほか諸々のボーナスで聖貨が合計85枚がもらえるようですよ」
ボーナスか。最初にもらったボーナスは112枚だった。それよりは少ないが、国を救ったにしては多いのか少ないのか。ま、もらえるもんはもらうけどさ。
「リリム、全部使うぞ」
「ですよね」
当たり前だ。これで俺は金貨3870枚を交換して手に入れた聖貨1935枚に85枚プラスで2020枚の聖貨を使えることになる。俺はこの一戦にすべてをかける。
「ところでタカシ様。白神降臨ガチャの他に聖戦の勝利ガチャ、悪竜討滅ガチャなどもありますが、いかがしますか?」
「白神降臨ガチャ一択で」
「よろしいんですね?」
「レア度を考えれば当然だ。聖戦は参加者全員がやれて、悪竜だってそこら中にいる」
「いや、いないけどね」
『居てたまるかよ』
マキシムとアルゴがツッコミを入れてくるが、ここまでの数ヶ月で俺はデミディーヴァは2に上級竜1、悪竜2と出会ってるわけだろ。正直エンカウント率から考えれば、もうワンチャンあんじゃね? って思うわけですよ。ないのが一番だけどさ。
「まあ、ほれ。デミディーヴァよりはいるだろ?」
「そりゃあね」
『分かったから早くやっちまえよ相棒』
「いつの間に相棒になったんだよ。モドキよりはいいけどさ」
腕にしがみついているブサイクチビ竜に肩をすくめながら俺はリリムをに視線を向けて頷いた。
「それでは白神限定ガチャを開始いたします」
リリムが両腕をあげると祭壇の炎が白い炎に切り替わり、白神限定ガチャの文字が浮かび上がる。そんで、内容は……と。
「ん?」
なんだ……これは?