124 報酬の行方
あけましておめでとうございます。
今年もがっちゃ!をよろしくお願いします。
あらすじ:
タカシ→起きた。左手が木になった。
リリム→神様に怒られた。
チンドラ→ 神様に怒られた。無職卵。
マキシムwith勇者勢→あれよあれよと脇役扱いに。
ローエン→国を救った英雄になったお爺ちゃん。胃に穴があきそう。
教皇様→片腕ないけど元気。後始末で禿げそう。
ナウラ→神カロリーを消費したので痩せた。
骨ドラゴン→努力の竜。章タイトルも回収した才媛。
ガチャの神様→帰った。
左腕が木になってた。
ションボリしたローエン様から謝られた。
ションボリしたリリムとチンドラから謝られた。
ションボリしたマキシムから謝られた。
目が覚めた後すぐ俺に起きたイベントがこの四点だった。
木になった手についてはひとまず置いておこう。普通に使えるし、心が受け止めるのに少し時間がかかりそうだしな。
それでまずローエン様に俺自身についても話を聞いたんだが、どうやら俺の活躍はなかったことにされて神様を降臨させたのはローエン様ということになったらしい。で、ローエン様は今や聖王国内では時の人ってわけだ。まあ、当のローエン様が望んだことじゃないのは俺も理解してる。これがガチャの神様が刺した釘ってことなんだろう。
俺の功績は綺麗さっぱりなかったことになって俺は晴れて自由の身ってわけだ。転移門の操作の件や神の薬草の件もひとまず目をつぶってくれるそうだ。
ただローエン様は俺の功績を奪ってしまったことをえらく気にしていてガン泣きで謝罪してきた。いやね。ローエン様の気持ちも分からんでもないけどさ。はたから見るとこっちがお爺ちゃん虐めているようでいたたまれなかったし、俺はひとまず謝礼が貰えればいいんでと返しておいた。
せっかく頑張ったんだから『俺がやったどぉぉお』とか言っちゃいたい気持ちもあるけどさ。けど、ぶっちゃけ俺も強くなってきたわけよ。だから、こんな神さま同士の代理戦争みたいなのじゃなければいい感じに活躍できて稼げてガチャを回していけるとも思うんだ。そんな俺たちの冒険はこれからだって時にこの国でずっと飼い殺しにされるとか冗談じゃないんだよね。
で、次に謝ってきたリリムとチンドラはガチャの神様からダメ出しされたらしいな。
リリムは俺のお荷物になっているというかあんまり役に立ってないことでお叱りを受けたそうな。ぶっちゃけ一時離脱している間にパワーインフレに置いていかれた初期パーティメンバーみたいだものな。今のリリムって。まあこっちはただ叱責を受けただけだし、しかもアイツは神様から装備のひとつをゴッドレアにしてもらったから実質的には今回の収支はプラスだ。
そんで哀れなのはチンドラことアルゴことアルゴニアスだ。
今のあいつの立場は霊峰サンティアの『元』管理者。つまりチンドラは現在無職だ。
あのアホは今回の騒動の管理責任を問われて解任された。敵が一枚上手だったことは事実だとしても、それも踏まえてしっかり管理するのがアルゴの役割だったわけだからな。
で、これまでチンドラは霊峰に訪れる人間の数を制限することで危険を排してきた訳だけど、結局はそれが裏目に出て今回やられちまった。管理方法が問題だったと神様に指摘されたんだな。そんで人間がーナウラがーと続けてチンドラがイイワケしたことも減点になった。何しろナウラさんは素直に反省して今回の聖王都奪還では最前線で戦ってたわけで、卵のままなんもしてなかったチンドラがナウラさんを悪し様に言ったのがガチャの神様の逆鱗に触れたらしい。
チンドラも外と連絡取れなかったからナウラさんは裏切りではなく乗っ取られていただけってことも知らなかったんで仕方ないことではあるんだけどな。タイミングが悪かったんだろうな。で、新管理者もできたことでお役御免となったあいつは今、リストラされて卵のままリリムの腕の中でシクシク泣いているわけだ。哀れな。
そんで最後はマキシムだ。俺が目覚めてすぐに神様からあいつに神託が降りたらしい。その内容は俺がお願いした通りの『孕ませ禁止令』だ。マキシムも俺が乗り気でないことは多少気づいていたらしく平謝りしてきた。そんなわけで問題は解決した。とりあえずガチャの神様から元に戻る方法は聞いたと伝えておいたので今後の目標は聖剣奪還ってことになった。
そして、今の俺は教皇様とマンツーマンで向かい合っていた。
「巫女様。このたびは申し訳ございません。あなたの功績を奪う真似をしてしまった」
4度目のドゲザーかと構えたが教皇様は少し頭を下げての謝罪だった。ま、この人も巻き込まれた側だ。ただ、俺も言うことは言わにゃならん。もちろん報酬とか限定ガチャとか色々とさ。名誉はいらないが益は欲しいからな。
「いや、そういうのいいですよ教皇様。タカシで結構。全部神様の指示があってのことなわけですし。それよりもローエン様も言ってましたけど巫女様って……教皇様は俺が男なの知ってるでしょ?」
「そうですがね。今や元の男である事実よりも巫女様としての立場の方が大きくなっていて……いや、分かったタカシ殿。どのみち、公の場では巫女として話すわけにはいかないのだから、あなたの要望通りにしようか」
「……ハァ」
立場がある人ってのは何かと面倒な立ち回りをせざるを得ないんだろうな。
「とはいえ、施しの神自らのお言葉故に我らは違えることはできないがこちらが申し訳なく思っている気持ちは変わらない。それは知っていて欲しい」
「分かってますよ。ローエン様に泣いて謝られましたんで」
「……ははは」
自分の親父がそんな状況になっていることに思うところがあるんだろう。教皇様が苦笑いをしていた。
「それよりも俺が知りたいのは」
「分かっている。限定ガチャと報酬だな」
さすが教皇様。よく理解できているじゃないか。
「そうです。何しろ神様と会ったのにひとり一個だからとゴッドレアも貰えなかったし、あ……降臨ガチャとかってあるんすかね?」
「あるな」
「マジで?」
おお、なんか凄いの引けそうだ。となれば報酬も弾んでもらわないと。それに
「ああ、その目は分かっている。報酬については現在調整中だ。なにぶん、公的に渡すことはできないので迂回する必要があるのでな。限定ガチャに関しては神降臨ガチャだ。巫女専用のものだが詳細は不明。何しろ記録に残っているのは過去に数えるほどしかない上に引けたカードも秘匿されているんだ」
マジっすか。こいつは期待が持てるな。
「そして私からの報酬だが……君がもっとも喜ぶものかは何かを考えていた」
その教皇様の言葉にタカシがゴクリと唾を飲み込む。俺が喜ぶこと。いったい何を用意してくれるんだ?
「例えばだ。教皇権限により、君が指定する限定ガチャを任意に用意できる……と言ったらどうするかな?」
なん……だと?