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123 白神を喚びし使徒

あらすじ:

 さすがにチンドラさんをタカシくんの聖剣にするのは人類には早すぎるプレイだと思います。

 それとメリクリ。今作者は虫歯でメリーメリー苦しんでます。

 あらすじは前回までを読んでいれば大体わかると思うので今回は省きます。

 ローエン・オーラント。

 その老人は『聖壁』の異名を持つかつての四大司祭のひとりであり、現教皇にして現聖王たるシグマ・オーラントの父であった。護りに特化した魔導器とスペルジェムを有している彼だが、その手腕は内政に向けられ、目立った戦働きなどもなかったために聖王国内での彼自身については教皇を育てあげた父親という印象の方が強いだろう。

 しかし、今回の戦いを経て彼の人生は大きく変わった。変わってしまった。

 ここ数日の聖王国の状況は一言で言えば、存亡の危機にあった。

 四大司祭ナウラ・バスタルトに取り憑いたデミディーヴァ・クライマーの策謀により白神の剣たる神竜アルゴニアスが敗北し、ガチャリウム聖王国の要である神域『霊峰サンティア』を知らず奪われた。さらには神託者によってその事実を伝えられるも積極的な動きが取れず後手に回り、聖王都は深淵アビスに堕ちて魔都へと変貌させてしまった。また、このガチャリウム聖王国は霊峰サンティアと聖王都を起点として魔より国を防衛する機構を有していたために、そのままでは聖王国全土が魔に落ちる可能性すらもあったのである。

 それが成らなかったのは敗北したとはいえアルゴニアスが存命だったために霊峰サンティアが完全には闇の神の軍勢の手に落ちていなかったことと、そして建国以来国内では三度目となる施しの神ガルディチャリオーネの降臨があったためだ。

 そう、彼らの神が降臨して奇跡を起こしたのだ。それをローエンは目撃した。死霊と化しネクロドラゴンとなった悪竜を神は己の血肉を与えて神竜へと再誕させたのである。

 悪母竜アヴァドンは神竜アヴァロンへと名を変え新たな神域の番人となり、彼女の眷属であったワイバーンたちも聖竜へと昇華されて聖王都を巣食う魔物を聖王国軍と共に駆逐していった。そうして聖戦は聖王国軍の勝利となり、戦いから三日経った今では、人々は聖王都に戻って復興のために動いていた。

 そして現在のローエンは神と奇跡に立ち会った者として祀り上げられていた。神との会合により彼は装備していた白翼の聖衣のランクがゴッドレアに上がっていたために誰ひとりとして疑う者はいなかった。ローエンにとっては人生でもっとも注目されていると言っても良かった。

 とはいえ、その事実を以て彼が浮かれているかといえばそうではなかったのだが……


「父上。いい加減、落ち着いたらどうですか?」

「は、はは。分かっておる。分かっておるが……巫女様の手柄を掠めとる形となったのだぞ。神より直接指示されたとはいえ、どのツラ下げて巫女様に会えば良いのじゃ?」

「その顔でいいと思いますよ。私もあとでうかがいますので」


 ローエンの息子にして現教皇のシグマがそういって肩をすくめた。


 白神を喚びし使徒ローエン。


 現在のローエンはそう呼ばれている。

 つまりは施しの神を降臨させたのはローエンということになっていたのである。

 闇の神のデミディーヴァ・クライマーの野望を察知しわずかな護衛を連れて単身で霊峰サンティアに赴き、施しの神ガルディチャリオーネを降臨させて悪母竜を神竜へと昇華させた者……というのが公式の発表だ。

 それが事実か否かについてはゴッドレアの白翼の聖衣を見れば誰もが納得せざるを得ない。いかに虚言を弄そうとしてもゴッドレアの装備を用意することは神にしかできないのだから、まさか神公認で人々を謀っているなどとは夢にも思わないだろう。のちに勇者たちが合流したことも伝えられはしているが、今回の最大の功労者たるタカシはマキシムの従者という立場でしかなく、その名はほとんど知られていない。彼の行いはなかったことにされていたのである。


「とはいえ、どうにもなりませんよ父上。私も教皇として従わざるを得ない」

「分かっておる。嫌というほど分かっておるよ。しかし、しかし……」


 ローエンがお腹をさすりながらそう口にした。胃に穴が開きそうである。お爺ちゃんには辛い話だ。

 アヴァドンとの戦いの場に勇者がいればその役回りも譲れたのだろうが、勇者たちが洞窟に到着したのは神が去った後のことだ。リリムとアルゴニアスは「そなたらマジつっかえねえ。推薦した妾の立場ないんですけど? 妾最悪なんですけど? そなたらマジゴミなんですけど?(意訳)」的なことを神に言われてダウンしていたために結局はその役回りはローエンに回ってきたのである。

 ちなみに勇者一行を除けば、その事実を知るのは彼の前にいる息子のみだ。隠蔽に関してはさすがに現教皇の力なしでは不可能だとローエンが懇願し神も譲歩した結果、教皇も巻き込まれたという形であった。


「我らが主の意志なのでしょう。降臨の巫女タカシ様……あの方の歩みを邪魔してはならぬと。我が国に縛り付けることは施しの神ガルディチャリオーネに弓引くも同然であると」

「その通りじゃ。あの方こそが『最後の保険』であり、そのために自ら『喚び出した』のだと……む?」

「どうしました?」

「念話が届いた。巫女様が目覚める兆候にあるそうじゃ。部屋に神気が満ち、恐らくは『会っている』可能性があるそうじゃ」


 その言葉に教皇が眉をひそめ、ローエンは息子への挨拶もそこそこに、急ぎ部屋を出てタカシの元へと向かっていった。そして、その場には教皇のみが取り残された。

 このはかりごとは誰にも明かせぬゆえに、教皇とローエンのみでの密談で進められていた。普通に考えればサンダリアと聖王都でのデミディーヴァ討伐だけでも英雄に相応しい功績である。その上に霊峰サンティアで施しの神ガルディチャリオーネを降臨させたことを考えれば、教皇である己がこうべを垂れるべき相手とも言えた。

 問題はそれが一過性であるわけではないということだった。本人の戦闘能力を考えればすでに勇者と並んで戦えるだけの力を持ち、神の薬草は今後デミディーヴァが出現した場合の切り札としても通用する。そして、もっとも重要なのはタカシが『条件さえ揃えば地上に施しの神ガルディチャリオーネを降臨させる』ことが可能であるという事実だった。もはや、聖王国だけの問題ではない。タカシはこの世界でもっとも重要な存在のひとつであるのだろうと教皇は理解している。


「で、あるにもかかわらず頼るな……とはな」


 教皇が首を傾げる。

 神の言葉もローエンの言葉も疑うつもりは彼にはないが、今回の神の振る舞いは『異質過ぎた』。

 本来神とは世界の運営を行う存在で、人に対して直接的な干渉をするものではない。呼びかけを行い、代償を支払うことで恩恵を受けることはある。また闇の神が神々の律を侵した場合、その程度に準じて神自身が能動的に動くこともあり、ガチャなどはそうしたルールを盾にした反則技に近い。

 しかし、ひとりの人間に対してここまで神が干渉するなど彼の知る限りはあり得ないことだった。

 それは旅立ちの神アザスの気まぐれで召喚されることがある異世界人だからといっても例外ではない。聖王国の勇者ドーラがそうであるように、彼らはこの世界の人間に比べて何かしら突出する傾向が高かったが、ローエンの言葉通りであれば召喚したのは旅立ちの神アザスではなく『施しの神ガルディチャリオーネ』であるのだという。これも教皇の知り得る限りはなかったことだ。そのうえにこの件に関しては勇者たちにも知らせず、ローエンと教皇の自分以外の何者にも口外は許さぬと神から言い含められている。神自身より完全に首根っこを押さえられ、情報の漏洩はできぬ状況だった。


「唯一の救いは勇者マキシムが彼女と親しいことですが……」


 教皇は考える。危機あれば勇者マキシムなら聖王国の力となるし、であれば仲間のタカシも必然的に力となるはずだと。意図的に誘導することはしない。縛り付けることもしない。けれども、現在刻まれた縁をわざわざ切ることもない。妥協できるとすればそこまでだろうとも。


「それに保険と言われた理由も気にはなるな」


 保険とは何かしら問題が生じた際に対して用意されるものだ。切り札ではない。神はこの後に起こり得る何かを考え、それは恐らくはタカシから神託で告げられた世界の終わりに関連することであろうとは予想もつく。

 そう考えれば、闇の軍勢との戦いに距離を置かせようという神の考えも分からなくはない。ここまでの状況から、そもそも今回の騒動でタカシを使ったこと自体が施しの神ガルディチャリオーネの想定ではなかったと考えるのが妥当だ。

 神は闇の神にも知られぬようにひっそりと隠しておく気だったのだ。そして、自分たちが失敗した場合のためにタカシは用意されていたのだろう。それこそ今回のように。


「それだけの事態、それだけの問題が発生するというのであれば……急がねば第二の神話大戦になりかねないか」


 今回の騒動の立て直しだけではない。アヴァドンの話によればすでに他国でもデミディーヴァが顕現している恐れがあるのだ。神託の内容を出し渋るのではなく、早急に動かねば手遅れになるだろう。そう思って顔を引き締めた教皇はふと己の父の向かった相手のことを思い出した。


「それにしても巫女様の報酬どうしようかね」


 功績をチャラにされたことよりも、それに併せて報酬がなくなることの方にこそ騒ぎを起こしそうな相手である。

 とはいえここまでの功績を挙げた人物に何もなしなどあり得ない。一応の腹案はあるが、相手がそれを飲んでくれるかどうか……そう考えて教皇は溜息を吐いた。父ローエン同様に教皇であるシグマも頭の痛い日々が続きそうであった。

 前話サブタイトル回収回。

 あいつ、嘘ばっかついてるな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神降ろし限定ガチャ、は流石に限定すぎるなw ゴッドレア確率倍で一回千聖貨とかかなー。ゴッドレア出るかはガチャ様の胸先三寸である以上、ほぼ詐欺ですがw でもガチャ様だからなー。タカシの歴代最高…
[一言] お正月は確定ガチャの季節 異世界確定ガチャは何がピックアップされますか? え? もしかして、異世界に年始祝う風習が無い? と言うか、年始はまだまだ先!?
[一言] 釘を刺す、どころか刺す釘が大きすぎて風穴が開いてる気がするんですが……
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