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113 スピードスター

あらすじ:

 ドラゴンニンジャ襲来。タカシ神竜疑惑。

 まーた俺、神竜だと勘違いされるみたいだ。腕一本分はもう神竜そのものみたいだから勘違いとも言えないかもしれないけどさ。


「この霊峰の中にずっと隠れていたというわけでもあるまいし、どこかに裏口があるということか。そして外の戦いに合わせてアルゴニアスを救出しに来た……と」

「さてね。たまたま森に迷い込んだ旅の一行かもしんねえぞ」

「勇者が三人揃った旅の一行か。偶然を騙るには無理があり過ぎるな」


 ドラゴンニンジャのリーダーらしきトカゲ男がそう返す。

 俺の素性はともかく、こいつらマキシムたちが勇者と知っていて仕掛けてきたのか。そりゃ忍者でドラゴンなんだから強いんだろうけど、勇者三人に勝てると思ってるのか? 勇者が三人だぞ。デミディーヴァだって討伐してるメンバーなんだけどな。

 そんなことを俺が思案していると……


「タカシ。不味いかもしれない」


 後ろからマキシムがそう口にしてきた。不味いってどういうことだ?


「多分アルゴニアス様の場所はバレてる」

「は? なんでだよ?」


 マジで? なんで?


「恐らくだけど最短ルートで進んでいたのが仇になったんだと思う。多分、彼らはコチラを観察してアルゴニアス様の居場所に確信が持てたから仕掛けて時間を稼ごうとしているんじゃないかな」


 あー、確かにここまでアルゴの気配を辿って一直線に進んでいたからな。俺らの進行方向から予測すれば目的地がどこかなんてすぐに分かるってことか。となればこの会話も睨み合ってる状況も全部引き伸ばしか?


「けどマキシム。あいつらもここにいるんだ。とっとと全滅させちまえば」

「多分別の部隊が向かっているはずだ。僕らを止めることが彼らの目的じゃないかな」

「となりゃあ……」


 ここで留まってるのは得策じゃあないな。そう俺が思ったところでドラゴンニンジャたちがこちらの意図を察したのか即座に動き出した。


「火遁!」


 そして十二人いるドラゴンニンジャが俺たちを取り囲んで一斉にブレスを吐き出す。いやいやいや。火遁! じゃねえよ。普通に火を吹いてるじゃねえか。と、こいつを防がないと不味い。


「アーツ・フェザーウォール!」

「ダルシェンさんか!?」


 全方位から放たれた炎のブレスをダルシェンさんの魔導器『双翼の光盾』から発生した巨大な光翼の壁が止めてくれた。便利だな、それ。


「敵の数は全部で十二か。こりゃ、相手するのは面倒だ」

「しかし、やらねばなるまいよダルシェン。アーツ・ゴッドジャッジメント!」


 さらに間髪入れずに寅井くんが飛ぶ斬撃を放つ。さすが聖剣というだけあってその威力は凄まじく、周囲の木々が斬り倒され、何人かのドラゴンニンジャが吹き飛んでいくのが見えた。


「それが聖王国最強の勇者ドーラの聖剣か。なんたる威力か」

「ふん。闇の神の下僕に褒められても嬉しくはないがね。タカスさん、マキシム。こいつらは私たちが引き受けよう。君たちはアルゴニアス様の元に向かってくれ」


 モンクのカトラさんと大剣使いレナさんもすでに戦闘態勢に入っていて、ダルシェンさんはドラゴンニンジャに対して一番前に立ってる。まあ仕方ねえ。このメンツなら遅れをとるってこともないだろう。


「分かった。出ろ、神撃の戦車。マキシム乗れ!」

「タカシ、僕にはユニコフが」

「任せろ。こっちの方が速い」


 俺の言葉にマキシムが逡巡することなく頷いて一緒に乗ってきた。ユニコフには悪いが、全力を出せばこっちの方が速度は出るんだ。今回は周りに合わせる必要もないしな。


「行かせはせんぞ」

「させねえよ。アーツ・ゴルディアスハンマー!」


 ドラゴンニンジャが放った巨大なエネルギーの手裏剣をダルシェンさんがアーツで相殺する。危ねえ。助かったぜ。


「そんじゃあ頼むぜとら……ドーラ、ダルシェンさん!」

「おう、サライを頼むぜ!」

「この国の未来を頼む!」


 寅井くんたちに見送られながら、俺は神撃の戦車を全速力で走らせる。運河に向かう時とは違ってここからは本気と書いてマジだ。


「うわっ、タカシ速い。けど森の獣道みたいなところでこの速度は」

「大丈夫だ。俺には『視えて』いる」


 十字神弓によって付与されている未来視は一秒先の未来の可能性を把握できる。通れない場所も、車輪が跳ね上げるタイミングもすべてが分かる。今の俺は事故らない。事故る可能性をすべて避けてみせる。だから……


「だから無事でいろよリリム、アルゴ!」


 そして戦いの音を背に俺たちはその場を一気に離れていった。



 

  **********




「はは、呆れた速さだな」


 ドーラがドラゴンニンジャに集中しながらもそう口にした。

 戦車の走る音が一気に遠ざかっていくのが分かった。森の中をどれほどの速度で走っているのか。正気の沙汰とは思えないが、少なくとも事故った音は聞こえない。であれば、何かしらの手段を用いているのだろうとドーラは推測する。


(或いは彼女は向こうの世界では名の知れた走り屋だったのかもしれないな)


 妖艶な美女が峠をドリフトしている光景をドーラは幻視した。ともあれ、今の彼の相手はドラゴンニンジャだ。勝てぬとは思わなかったが、時間稼ぎを目的とされているのだとすれば非常に厄介極まりない相手だ。


「カトラ、レナ。分かっているだろうが、掠りもするなよ」

「言われるまでもない」

「ドーラくんに見せられないような肌になりたくないしね」


 ドラゴンニンジャに限らず、アサシン系統は武器に毒を用いることが多い。致死性よりも即効性を重視することが多く痺れ毒は定番であったが、ドラゴンニンジャがどんな毒を使っているのかは調べてみないと分からない。


「それにしてもドラゴンニンジャ。本当に時間を稼ぐだけでどうにかなると思っているのか?」

「どういうことだ?」

「アルゴニアス様の護りは完璧だ……ということだ。いかにお前たちが我々を出し抜いて先行しているとしても到達できなければ意味はないはずだ。方角が分かったとしてもお隠れになっているアルゴニアス様を発見するのは容易ではないのではないか?」


 その言葉にドラゴンニンジャが眉をひそめた。

 それはドーラのただの推測だが間違いでも無いはずだった。でなければ未だにアルゴニアスとリリムが無事である説明がつかないし、この霊峰サンティアという特殊な場所から類推すれば、ドーラにはアルゴニアスがどうやって隠れているのかも予想がついていた。

 けれどドラゴンニンジャはその言葉を的外れだとでもいう顔をして笑う。


「ククク、その予想は昨日までは正しく、しかし今は間違っている」

「なんだと?」

「確かに我らはあの駄竜に到達する手段を持たなかった。けれども、いつまでも我々がヤツの隠れんぼに付き合ってやるとでも思っていたのか?」

「まさか……護りを突破する手段があるとでも?」

「お前たちがそれを知る必要はない。我らがいる以上はここで知っても意味はない」


 ドラゴンニンジャたちが一斉に動き、木々の枝を飛び回る。それが時間稼ぎだと理解できてもマキシムたちを追おうとすれば背中から刺されるのだからドーラたちは付き合うしかなかった。

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