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112 DRAGON NINJA

あらすじ:

 アルゴニアス探索のためにタカシたちは霊峰サンティア内を移動し始めた。あと外ではオスモウさんが大活躍していた。

「竜の牙の霧の中から黒い鳥みたいのが次々と飛んでいっているな」


 霊峰サンティアの中心にある山『竜の牙』。

 その山頂には黒い瘴気の霧が漂っていて、その中からかなりの数の鳥っぽいのが出てくるのが見えていた。まあ鳥っぽいとは言ったけど多分あれはワイバーンだろうな。それに向かっている方向はこっちじゃないから俺らを探しているってわけでもなさそうだ。


「地形から考えて飛行している何かが向かっているのは聖門の方角だ。となれば恐らく外で聖王国軍が攻めこんでいるんだ。だから悪母竜アヴァドンが戦力を送ってるんだろう」

「つまり教皇様方は予定通りに動いているということか。戦力が外に向いているのであれば……悪竜を倒すチャンスかもしれないな」


 ダルシェンさんと寅井くんがそんな言葉を交わし合う。

 なるほど。確かに戦力が聖王国軍に向けられている今ならあのデブ竜を倒せるかもしれないな。けど、飛んでいるワイバーンの数がずいぶんと多い。アレからあんなに増やしたのか? あのアヴァドンとかいうドラゴンもアルゴにやられて瀕死だったはずなんだけどな。まあ、今考えても仕方ないか。それにしても……


「なんつーか、森がずいぶんと様変わりしたな。禍々しい感じがプンプンするぜ」


 以前は吸うだけで身体の中が洗われるような清浄な空気だった気がするんだが、今は粘ついた悪意が霧になって覆っているようだ。


「それはアルゴニアス様の加護が悪母竜の力に塗り潰された影響だろうね。ここら辺はまだそれほどでもないけど、あの竜の牙に近いほどに瘴気が濃くなっているようだ。アルゴニアス様が殺されでもすれば完全に魔に落ちてしまうはずだよ」


 なるほどなぁ。あのチンドラ、それなりに仕事をしてたんだな。


「それでタカシ、アルゴニアス様の気配はどうだい?」

「大丈夫だ。ちゃんと感じられるし、このまままっすぐ進めば辿り着ける……はずだ」


 神竜の盾を通して、この右腕と同じ気配をきちんと感じ取れてはいる。ただ途中で妙に引っかかるところがあるが、それが何を意味しているかはひとまず進んでみないと分からないしな。


『ドーラ、ワイバーンが来ているよ』


 そして移動途中にドーラの聖剣キャリヴァンの精霊ヴァンが突然そんなことを口にした。それからドーラが聖剣をわずかにヴァンの指す方へと向けると「なるほど」と頷いた。

 三枠埋まっていて見通しの水晶が今使えない俺とは違って、寅井くんはなにかしらの手段で敵の気配を見ているらしい。


「巡回しているワイバーンがいる……が、少し迂回すれば問題はなさそうだ」

「そうかい。今バレるのは厄介だ。見つからないように進もうぜ」


 ダルシェンさんの言葉に全員が頷いた。戦うにせよ、逃げるにせよ、ひとまずは合流が先だ。まずはアルゴやリリムたちの安全を確保しておきたいからな。


「あーあ、ドーラみたいに僕も精霊を出したいなぁ」

「マキシムだって、剣が水晶剣にグレードアップしたんだし精霊を呼び出せるようになったりはしないのか?」


 マキシムのメインの武器である神巨人の水晶剣は以前の石剣からグレードが上がったことでスーパーレアからウルトラレアに変化している。精霊を呼び出す条件は満たしてるはずだ。


「んー、いずれは出てきてくれるかもしれないけどね。今のところは反応がないかな」

「そればかりは精霊次第ではあるからな。顕現せずに武器として機能していればいいと考える精霊もいる。実際、俺の戦鎚はそうらしいな。鑑定士によれば」

「ライテーはすぐ出てくれたけどなぁ」

「まあ、相性というのもあるしな。お前の精霊、アレはサポートタイプだろ?」

「そうだな。アーツの発動とかをライテーがやってくれてるから、俺は撃つことに集中できる。アイツがいてくれて助かってるよ」


 召喚体への指示もライテーがしてくれるからな。十字神弓を使うのにアイツなしってのは考えられねえ。まあ、今の俺の装備は神竜の盾と神竜鋏に神罰の牙の三つが占有していてライテーを出すキャパはないけど。


「精霊は使い手が不慣れだった場合には、足りない部分を補うために顕現したりもすることもあるってわけだ。ただマキシム、お前の場合は重神装備と掛け持ちで使ってるから精霊も拗ねてるんじゃないか?」

「う、そういう可能性もあるかぁ。けど水晶剣を普段から使うには大き過ぎるしね」


 マキシムの水晶剣は5メートルある巨大な剣だからな。ゴッドレアの剛力の腕輪なしじゃあ振り回せないし、普通の戦闘で使うにはオーバーキル過ぎる。となるとそういう機会を作ってやればいいんだろうけど……


「なあマキシム、この戦いが終わったら……一緒に水晶剣で戦えるような魔物の討伐をメインでやってみないか?」

「え、いいのかいタカシ?」

「まあな。ガチャをするにも資金がいるし、そいつで戦う相手なら結構なお金にもなんだろ。今なら俺も力になれるだろうからな」


 ガチャしたいしな。どちらの要望にも応えられるウィンウィンな話だと思うんだ。もうそろそろこんな闇の神との戦いとかそんなのから抜け出したいし? うん。俺は自由に生きたいのさ。ただ、その前にやらなきゃいけないことも多いけど……ん?


「どうした、タカ……え!?」


 俺が神竜の盾をとっさにマキシムの前に立たせると盾にどこからか飛んできた『クナイ』が弾かれて地面に転がっていく。


「助かったよタカシ。よく奇襲に気付けたね?」

「余計なお世話だったと思うけどな、敵襲だ!」


 俺が言葉を発する前に全員がすでに戦闘態勢に入っていた。さすがだな。そんで、森の中から黒装束の何者かがひとり浮かび上がるように現れた。


「……勇者一行か。そこの女、こちらの攻撃に気付くとはなかなかやるようだな」

「そいつはどうも」


 未来視でマキシムにクナイが飛んでくるところが視えただけなんだけどな。それに一応神竜の盾でガードはしたもののマキシムは自分でクナイを打ち落としていたから、どのみち当たらなかっただろうし。


「貴様、何者だ」


 寅井くんが聖剣を構えて叫ぶと、木々の影から十数人の妙な姿をした連中が次々と現れる。しかもこいつらの格好は……


「忍者……だと?」


 頭部がトカゲっぽいが、着ている服装は和風の……忍者って感じだ。

 そういや、確かヤワトって闇の神を信奉して滅亡してたんだっけ。侍とか相撲とか忍者とか和風かぶれなのが多いのもそのせいだろうか?


「左様。我らはドラゴンニンジャ。我らが母の命によりこの森の監視をする者なり」


 ドラゴン? 忍者? そもそもバレたから姿を現して名乗るとかどうなの?


「タカシ、彼らは竜人だ。人型のドラゴンと考えればいい。しかもヤワトアサシンのニンジャとなれば相当手強いはずだよ」

「マジかよ。前はこんなのいなかったのにな」

「前だと?」


 俺の言葉にドラゴンニンジャが眉をひそめた。


「そうか。今この場にいることといい、その腕の神竜の竜気といい、母上が先のアルゴニアスとの戦いが妙だと口にしていたが……お前か。外から来た神竜、貴様がアルゴニアスと共に母上を傷付けたのか!?」

「エ、チガウヨ?」


 俺が神竜って……ちょっと勘違いされてませんかね。いや、察しはいいと思うんだけどね。

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