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102 天の車

あらすじ:

 パイセンチーッス。

 借金とかもうしねえっす。

 チーッス。

 聖王国が保有する飛空船『メルカヴァ』。

 それは左右に四枚の翼が生えた、正面に男と獅子、牛、鷲の顔の像が並ぶ見た目10メートルほどの銀の船だった。そして俺たちは今、聖王都近辺の砦からそのメルカヴァに乗って最寄りの転移門に向かっている。


「おお、こりゃすげえな」


 何しろ飛空船だ。ファンタジーでも時々見る空を飛ぶ乗り物だぜ。マジテンション上がる。手すりを越えた真下は川とか森とか道とかが見えてるし。この落ちたら死んじまうんじゃねえかなっていうブルっちまう感覚がスリルがあってなんかいいんだよなぁ。


「ははは、聖王国が誇る乗り物だからね」

「なあマキシム。もしかして、これもガチャで出んのか?」

「ええとね。これはガチャ産ではないよ」

「マジかよ」


 これガチャで出したものじゃあないのか。まあ、実戦だとガチャのカードの力が大きいけど、それ以外の分野じゃ普通の魔術とか使ってるらしいし、そもそもガチャのカードって一度ガチャの神様に奉納されたものって話なんだから、スペルもスキルも装備も自分で作ったり覚えたりすることも不可能ではないってことなんだよな。ゴッドレアとかは別なんだろうけど。


「けど、メルカヴァは過去に奉納されているらしいから絶対に出せないというわけではないんだけどね」

「となると限定ガチャとかあれば出せるってことだよな?」

「うん。ただ、今のところメルカヴァ限定ガチャってのは確認されていないんだ。過去に一度すべての可能性ガチャで出たって話はあるんだけどね」


 すべての可能性ガチャは俺が雷霆の十字神弓を出したガチャだったな。それはウルトラレアが渋くてピックアップがない代わりにすべてのカードが出る可能性があるガチャだ。ま、本当にただの博打みたいなもんだから普通に考えたら狙ったピックアップのガチャで引いた方がいいのは間違いないんだけど、ソレでしか出ないような本当に貴重なカードも存在はしてるんだろうな。


「あれ? マキシム。そうなると教皇様の装備をすべての可能性ガチャで揃えることも不可能じゃあないよな?」

「絶対にできないとは言えないね。ただ一枚だけならともかく、装備一式を揃えないと教皇様にはなれないから無理なんじゃないかな?」

「ああ、確かに……」


 コンボガチャは悪い文明。


「ようお前ら」

「あ、ダルシェンさん。ドーラはどうです?」


 俺らが空の光景をながめていると、ダルシェンさんがこっちにやってきた。


「ああ、うん。嫁さんどもが看病してるぞ。以前もパニック起こしそうになったんでスリープの魔術で目的地に着くまで寝てたしなぁ」


 寅井くんは高所恐怖症でダルシェンさんはその様子を見にいってたんだ。あの男、メルカヴァが来る前は謎の自信が溢れていて意気揚々としていたのに、乗った途端に生まれたての子鹿のようになっていた。

 そんな情けない男だが嫁さんズは特に気にした様子もなく「そういうところが可愛い」とかなんとかの宣う始末。あいつ爆発して死なないかな。四肢が爆散してトラックに轢かれたりしないかな。

 ああ、いや……今は俺もリア充の仲間なんだったか。こう、そういうドス黒い思いからは卒業したはずなのに、なぜかそんな気にならない。これは下がプラプラしないからかな。上はブルンブルンしてるのにな。重いだけで自分のだとまったくエロく感じない脂肪の塊でしかないし。宝の持ち腐れか。切ない。


「それで同じ異世界人でもタカシ、お前は怖くないんだな」

「そういうのは個人差があるからなぁ。タマヒュンしなくなった分、恐怖は薄れたのかも」


 マキシムが首を傾げたが、こいつは男にしか分からない感覚だ。今の俺にはもう味わえないものだけど。


「そういうもんか。それでタカシ、ところでな。転移門で霊峰サンティアに……ってのは本当に行けるもんなのか?」

「もうメルカヴァで出発してるのに今そこ疑うのかよ?」

「いや、教皇様や転移門の専門家が問題ないって認めたのは理解してるが、にわかには信じられなくてな」


 まあ霊峰サンティアは教皇様でも容易に入れないって話だったからな。転移門なんてどこにでもあるわけじゃあないがそこそこの数はあるわけだし、そこから霊峰に行けるなんて言われても信じるのは難しいかもしれないか。


「一応確認取ったけど、この腕……神竜の力を認識できないと無理っぽいっすね」

「そうなのか。なるほど……そうなると普通に侵入することは無理筋か」


 神竜の力と転移門を操る技術が必要で、入れたとしても転移門が起動したのはすぐにアルゴに察知されるからこっそり入るなんて無理だもの。

 ああ、そういえば転移門については霊峰に行けることをバラした後に揉めたけど、最終的には俺はこの件では放任されることになっている。何しろ俺が一部とはいえ神竜であるのは事実でアルゴの知己扱いだ。神竜ってのはガチャの神様の眷属的な意味合いがあるからガチャの神様を信奉している聖王国側からすれば下手なことができない立ち位置にいるらしい。まあ、他言無用って契約はさせられたけどな。


「しっかし、最初サライから聞かされてた時には神の声を聞いただけのだらしない男だって話だったんだけどな」


 酷い評価だな。いや、その頃はマキシムの借金のこととか知られてたから仕方ないかもしれないけど。


「……なんかお前、どんどん重要人物になってないか?」

「タカシは凄いからね」


 マキシムも胸を張らなくていい。

 別に俺は凄くなくていいから、これ終わったら自由にやりたいんだよ。サンダリアに戻って十字神弓のガチャを探すとかさ。けど、その前に金策だな。

 マキシムの借金もそうだが、ガチャをするためにはまず資金が必要だ。それも大量の金だ。圧倒的な銭がいるんだ。教皇様の特別報酬も期待したいし、 アルゴの報酬もあるはずだし、そういえばサンダリアでのデミディーヴァ討伐でも王国から報酬があとでもらえるって話じゃなかったか。そこらへんもちゃんと回収しないとな。


「ふふ、タカシ……その目はずいぶんとやる気のようだ。僕も同じ気持ちだよ」

「ふっ、以心伝心ってヤツか。マキシム、頑張ろうぜ」

「ああ、リリムさんも待ってる」


 そうだな。あいつの給料も払わないといけないし金は大事だ。

 マキシムもそれはよく分かっているらしい。さすが勇者というところか。


 そして俺たちを乗せたメルカヴァが転移門のある町に辿り着いたのは夕方の頃だった。寅井くんは途中までスリープの魔術で寝ていたらしく、嫁さんズに連れられて大きなあくびをしながらメルカヴァを降りていた。リア充め。


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