てんさい
拙作へお立ち寄りいただきまして、ありがとうございます(*´∀`)
前話と比べると短め(半分くらい)です。
1話目、冒頭の続きになります。
目の前には焦土。私を脅かしたヘビの魔物の姿は すでに跡形もありません。
「また、やってしまいました……うぅ……」
泣きべそ顔で失礼いたします。14歳になったリルことリルフィールです。
魔法の才能を自覚してから、制御の練習に励み、なかなか上手に魔法を使えるようになりましたが……残念な事に 魔法の精度が上がり、魔力も大幅に増えたために 年々 怖いものに遭遇した時の被害が大きくなる一方です。自らが生み出した惨状に、恐怖とは違う涙が止まりません。ちょっとした自然破壊です。
私の5mほど先から100mくらいの範囲が 半端に開いた扇状に消し炭となってしまった学舎裏の森の木々と、巻き添えになった動物たちを偲んで さめざめと涙を流していれば、こちらへと駆けてくる足音が聞こえます。うぅっ……読書の邪魔をしないように遠慮しましたが、最初から付き添いをお願いすれば良かったです。
「リル! 怖がりなくせに、なんで 一人でこんなところにいるのさ!」
「うぅ……シャル君~。ごめんなさい~」
足音の主は、やっぱり 私の保護者……ではなく 少し年上の幼馴染みであるシャル君でした。
昔は 精神的なお姉さんとして お勉強を教えてあげたりもしましたが、今では私が教わる側です。元々あった身長差も更に開いてしまい、今では すっかりお兄さんになってしまいました。私の立つ瀬がありません。
「で。随分派手にやらかしたけど、今度は何が出てきたの?」
「大きなヘビの魔物でした……」
前世のテレビ番組で見たアナコンダかと思いました。もっとゴツゴツしていて、毒々しい緑色で、牙も長くて鋭かったですが。
「成る程ね、それで コレ か。最近 あんまりやらかさなかったから油断してたよ」
「面目ありません……」
元々 大きくない背を更に縮こまらせて、小さく呟けば、シャル君は「しょうがないな、もぅ」と溜め息をついて 袖で軽く涙を拭ってくれます。昔から変わりませんね、ハンカチは持たない主義ですか?
「俺も手伝うから、森の再生…は 範囲的に無理かもしれないけど、土の活性魔法で森が早く元に戻るようにしておこう」
「はい。よろしくお願いします……」
私の火魔法が焦土にしてしまった大地に、水属性の強いシャル君が薄く広くヴェールのように水魔法を掛けて、強くなりすぎた火の精霊の気を鎮め、焼け焦げた大地を潤します。
そこに、私が土魔法で土の精霊に呼びかけ、地下に眠る草木の種や焼け残った木々の成長を促します。焼畑のようになってしまったからか、思ったよりも緑の成長が著しい気がしますが、きっと気のせいでしょう。
「相変わらず すごいな、リルは……」
シャル君の言葉に、反射的に彼の顔を見上げれば。ほんのり緑が復活した森を眩しげに見つめていました。シャル君がコチラを向かないうちに やや下を向いて、褒められてちょっとだけニヤついてしまった顔を隠すことにします。
「で。なんでこんなところに一人で居たのか、まだ 聞いてないんだけど?」
う。忘れてくれなかったのですね。
「大したことでは無いのです。ちょっと……」
「ちょっと?」
目を細めて問いただされます。こういう時のシャル君はちょっぴり恐くて、逆らえません。あまり言いたく無いのですが。
「……怖がりを克服しに……」
それを聞いたシャル君は、ゆっくりと元焦土を指差し……。
「できてないじゃん」
うぐ。一刀両断で来ましたね、分かってます。分かっておりますとも。私だって 好きで破壊を撒き散らしている訳ではないのです。怖いものをやっつける時に、少し力が入りすぎてしまうだけなのです。
「でも、前にシャル君と一緒に来た時には もう少し大丈夫な気がしたんです。……大きなヘビは予想外でしたけれど」
そうです。子供たちの通う学舎のすぐ裏にある森なのですから、あんなに危険な魔物が出てくる方がおかしいのです! 小さな子が噛まれでもしたら、一大事です! でも、あの大きさのヘビだから丸飲みでしょうか?
「……あのね、リル。この前の朝会で、最近この辺りの魔物が増えてるから気を付けるようにって言われたじゃん。リルは寝起きで ぽやぽやしてたから聞いてなかったかもしれないけどさ」
「……そんな!!」
ば、馬鹿な……です。全く覚えていません。確かに、ちょっぴり寝起きは悪いかもしれませんが、そこまで ぽやぽやなんてしてなかったはずです! うむむ。
「ほら、何してるの? 行くよ」
「え? あ……待ってくださいっ」
私が唸っているうちに、シャル君は森に向かって歩き始めていました。歩きながら少しだけこちらに向けて差し出されている腕を見て、慌てて追いかけて、袖を ちょみっと摘まみます。小さな時ならいざ知らず、私から手を繋いだり 腕を組む勇気はありませんでした。
「でも、シャル君。そっちは森の方ですよ?」
「うん。だってさ、ここまで魔物が出てきたなら チビたちが危ないでしょ? 俺と……落ち着いてる時のリルなら この辺の魔物ぐらいはどうとでもなるし、リルの怖がり克服の訓練がてらに 少し間引いても良いかと思って」
私の摘まんだ袖を チラッと見たシャル君は、そのまま歩きながら 理由を話してくれました。さすが シャル君です。小さな子の安全確保と、私の訓練を同時に済ませようという効率重視なところ、嫌いじゃないですよ。「落ち着いてる時の」とか、少し物言いに引っかかりますが、付き添ってくれるようなのでさらりと流しましょう。
(´;ω;`)*(´;ω;`)*(´;ω;`)
最初は森を見ながら、障害物の少なくなった元焦土と森の境目辺りを歩いて行きます。時々魔物がやって来ますが、弱いものばかりなので シャル君に「大丈夫。落ち着いて、軽くだよ」などと言われながらやっつけてゆきます。
落ち着いていれば、むしろ魔力の細かい調整は得意なのですがね。なぜいつも失敗をしてしまうのでしょう?
元焦土から、更に森の奥に進んで少し。一陣の風が吹いたと思ったら、急に視界が暗くなりました。
「ふわわっ! しゃ、しゃるくんっ??!!」
いきなりシャル君に引き寄せられ、強めに抱き竦められたようです。心不全になるかと思いました。声も裏返っていた気がします。
幸い止まることはありませんでしたが、海外ドラマのクール系俳優さんのようになりつつある シャル君の腕の中という 心臓にブラック気味な労働を強いる場所です。激しい心臓の音が聞こえてしまわないかちょっぴり気になりましたが……それどころでは無さそうです。
「あいつのせいで 森の魔物が追いやられてたのか……」
シャル君の言葉の後に、再び風が吹きます。大きなモノの到来に荒れ狂う風、ざわめく火の精霊の気。木々を薙ぎ倒し、大地に降り立つ重い音。
「リル、絶対に後ろ見るなよ。滅っ茶苦茶 怖い思いするからな」
シャル君に ガッチリ頭を固定されて振り向けませんが、どうやら 天から災いがやって来たようです。
2人の前(リルには後ろ)には、イッタイナニガアラワレタンダー?(棒読み)
一応ラブコメとしたので、薬さじ(耳かきみたいなやつ)で一生懸命お砂糖を投入するのですが……なかなか砂糖を吐きそうな物語は書けません(;´∀`)