表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

きいてください




 はじめましての方、そうでない方も、拙き作品ではありますが よろしくお願いします(*^人^*)






 絹を裂くが如き悲鳴が木霊する。



「いやぁぁぁぁぁ! こっち、こないでぇぇぇ~!!」



 幼いと言うべきか、若いと言うべきか、微妙な年頃の娘の魂切る絶叫である。




  ゴッ……ぉぉぉん……



 続く轟音と残響、石造りの建物を揺るがす程の衝撃に“彼女”の幼馴染みは肺を空にする勢いで盛大なる溜め息を吐き、降り注ぐガラス片を弾くべく 咄嗟に張った障壁を解除した。そして、今頃 めそめそ しているであろう“彼女”を回収するために “彼女”が破壊を()()()()であろう場所へと駆け出した。





(´;ω;`)*(´;ω;`)*(´;ω;`)






 みなさま コンニチハ。

 只今お食事中ですが、失礼いたします。



「ふふふ、リルちゃん 沢山飲んで大きくなってね」



 ハイ、お母様。できれば このお母様サイズになれたら私も嬉しいです。ただ、ちょっぴり食事中にお顔が埋もれて窒息してしまいそうで怖いのですが……。



「ご馳走さまかしら? じゃあ ゲップをしましょうね……トントントン……」



「けぷ」



 あら、失礼いたしました。まだ食事もゲップも自力ではままならない身の上ですので、ご容赦くださいませ。


 そう。私は今、赤ちゃんになっています。一部曖昧ですが 黒髪の顔が平たい人たちに埋もれて生きていた記憶がありますので、転生かな? と思っております。



「さあ、リルちゃん。おねむの時間ですよ~。お母様は少しお仕事をしてきますからね、良い子にしていてね」



 そして、今の名前はリルフィールと言うそうです。なかなかなお家のお嬢様な雰囲気がプンプンしているので、今のところ衣食住の心配は要らなさそうです。良かった。ほとんど野ざらしのような隙間だらけのお家とかだったら、私はきっと生きて行けないでしょう。だって……。



「じゃあエノーラ、リルちゃんを お願いね」



「畏まりました、奥様」



 ブルネットも美しい お姉さんメイドのエノーラさんに手渡された私はお母様をお見送りしますが、お母様の開けた扉の隙間から 小さき侵入者が乱入いたしました。



「きゃあ!」



「奥様?! きゃぁぁ!!」



「ぁんにゃぁぁぁぁ! きあぁぁぁぁ!!(いやぁぁぁぁ! 虫いぃぃぃぃ!!)」



 虫が怖いです! 隙間だらけのお家なんて 侵入し放題ではないですか!! いやだ、しかも侵入者はキッチンでお馴染みの黒いヤツです!!いやぁぁぁぁぁ!!! 飛んできたぁぁぁぁぁぁ~!!!



「お嬢様っ!!」



 ギャン泣きの私をエノーラさんが抱き締めてくれますが、残念ながら視界はそのままですので ヤツの姿はしっかりと見えたままです。羽ばたくヤツが迫る様子がスローモーションに見えます。



「きやぁぁぁぁ!!(こないでぇぇぇ!!)」



  ボッ!!



 ヤツを遠ざけたくて、必死に振り回した ちっちゃな我がお手々のひらが、一瞬熱くなったと思ったら……そこから私の頭ほどの火の玉が飛び出して、飛び出した火の玉はヤツを飲み込んでから天井近くで弾けました。





 ごめんなさい、控えめに言いました。





 火炎放射レベルで炎が飛び出して ちょっぴり天井が焦げてしまいました。音は「ボボォ!!」って感じでした。薄々そんな気はしていましたが、ここは魔法の世界だったようです。



「お……おじょう…さま?」



「……。……だ、だんなさまっ! パパ!!あなたあぁぁー!! リルちゃんが、リルちゃんがーーー!!!」



 あら? ヤツが居なくなってほっとしていたら、エノーラさんは茫然と私を見つめ、お母様は半狂乱でお父様を呼びに行ってしまいました。私はどうやら、ちょっぴりすごい魔法使いなのかもしれません。



 暫しの見つめ合いの後、正気に戻ったエノーラさんにあやされた私が 少しウトウトし始めた頃。水晶のような半球体を嵌め込んだ、少し豪華な額縁を抱えたお父様を連れてきたお母様によって“魔力判定”なるものを受けました。


 ちょっぴり眠いのですが、自らの人生が懸かっていそうな場面ですので 頑張って つぶらなお目々を開いております。


 テーブルの上に寝かせた額縁と共に、少々お行儀が悪いですが 小さき身ゆえに私も乗せられて。芸術的な額縁の枠の下の方、真ん中にあるキラキラと光る水晶へ、お母様が震える手で私のお手々をぺたりと乗せられました。



「リルちゃん、少し変な感じかもしれないけど 我慢してね」



「あぅ」



 まだ歯も生えていない未発達なお口なので 言葉は話せませんが、一応 数ヶ月は聞いている言語なので 意味は大体理解しています。転生特典ですね。成長著しい脳細胞と生まれ持った知識(思考力?)のお蔭で するすると覚えることができました。


 おっと、予想に反してほんのり温かい水晶にも するすると何かが吸いとられた感じがしましたよ。これが魔力というものでしょうか?


 額縁の 絵が収まっているべきガラス面が、何も映さない真っ黒から ぴかーっと光を迸らせて沢山の蕾と赤や青、緑や黄色などの色とりどりの大輪の薔薇を咲かせました。ほう、素敵な絵画のようですね。



「おおお、お嬢様……」



「リリリリ、リルちゃん……」



「ななななな……なんということだ」



 なにやら 視線が痛いです。エノーラさんも、お母様も、お父様も、みなさん見開いた目がちょっぴり血走っていて、正直なところ怖いです。お目々がうるうるしてきましたよ。泣いちゃいますよ?



「ふぇ……」



「あらあら! リルちゃんっ ごめんね!! いい子だから泣いちゃだめよ~!!」



 しゅばっ! という勢いでお母様に抱き上げられてあやされます。普段は余裕たっぷりで、辛うじてイケメンのデキル男風 なお父様も、そつの無い仕事ぶりが素敵なエノーラさんもオロオロしています。







 この日から、我が家から虫という虫が駆逐されるようになりました。






 後から知ったのですが。一般的に、魔力判定は成長とともに増える魔力によって魔法現象が顕れ始める3歳頃になされるそうです。


 額縁に描き出された花の色や本数が属性への適性を表していて、鮮やかで数が多い色ほど属性への適性が高いとされ、花の種類や大きさ・開花の度合いが 現在の魔力の総量を表すそうです。


 蕾は成長する上での魔力の伸びしろなのだとか。咲きかけのピンクのスミレと、咲き誇る真紅の薔薇では、同じ火の属性でも月とスッポンの違いがあるそうです。ピンクのスミレとか、きっと可愛いでしょうね。



 だいぶ早めに魔力判定をされた 私の魔力が描いたのは、無数の蕾と幾つもの大輪の薔薇。


 一般的な3歳児は大抵が蕾ばかりで、良くても咲き初めが数輪だそうです。


 私は ちょっぴりすごい魔法使いどころか、四元素に高い適性を持ち 宮廷魔法使い様にも迫ろうかという魔力を誇る とんでもない魔法使いだったようです。蕾が沢山なので伸びしろも将来有望です。知っていますよ、チートというやつですね!






 当時の私は、道理もわからなさそうな赤ちゃんの身体に、住まいのお屋敷を半壊させかねない魔力を秘めた“起爆の制御ができない爆発物”のような存在だったようです。ハイ。我がことながら、恐ろしい赤ちゃんです。


 一応、魔力判定で魔力というものを認識してから こっそり制御の練習をしたので、時おり外から迷い込む虫やネズミ、夢で見たオバケに驚いてお部屋の一部を焦がす事はあっても、そうそうお屋敷を吹き飛ばしたりなんかしませんけどね。




 ごめんなさい。そもそも焦がさないように気を付けてはいるんです。でも、怖いものに遭遇してしまった時だけは どうしようもないのです。




 お父様とお母様は過保護になるし、使用人さんたちは 怖いものが私の視界に入るか入らないかくらいの時点で血眼になって排除したり遠ざけてくださいますが……みんなで危険物扱いとか、失礼しちゃいますよね。











 前作の主人公とは打って変わって、チート無双系乙女にしてみました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作もあったりします(* ̄∀ ̄)r 【想い月の愛し子】
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ