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あの公園で。  作者: 齋藤翡翠
8/10

過去の回想。

俺の両親は事故だと言われていたが、俺の見解だとそうではない。



亡くなる前に俺はその両親と居たからわかるのだ。



あの二人は自殺したのではないかと―――。






二人が亡くなる日、その日は爽やかな小春日和で何処かへ遊びにでも行こうかと言っていた休日だった。



突然、母は俺に「遊びに行きなさい」と言い出したのだ。


「ピクニックはしないの?」


ピクニック日和だから美味しいお弁当を作らないとか何とか張り切っていた人が、幼い息子に一人で遊びに行くように言ったのである。


「いい、護。今から遊びに行ってきなさい」


「でも、お父さんがピクニックしに行くって…」


「……そうね、それじゃあほら、あそこの公園。おばあちゃん家の近くにある公園にこないだ行ったでしょう?あの公園に行きなさい。」


そう提案されたい意味で弁解したわけではないのに、母はどうしても遊びに行って来て欲しいらしい。


「お母さんは?行かないの?」


そう聞くとちょっと悲しい顔をして謝る母。


「ごめんね、護。大丈夫よ、お母さんも後で行くから。だから、ほら遊びに行ってらっしゃい。」


もうそう言われると「うん」と頭を縦に振ることしか出来なかった。


母は笑顔で遊びに出掛ける俺を見送った。


母のその笑顔を見たのはそれが最後だった。


その時、父はどうしていたのか。自分の書斎で何かやらなければならない事があるとかで、少しばかり籠っていたように思う。


やる事やったら遊びに行こうと、そんな感じだったと思う。


結局、それから父の顔も見ずに遊びに出掛けてしまったのだ。



それから、あの公園で独り砂場の砂をいじって遊んでいた。


少し遠くの方から消防車のサイレンが聞こえてきたが、まさか自分の家が火の海に飲み込まれているとは思ってもみなかった。


公園で遊んでいるのを祖母が見つけて、嬉しいような悲しいような複雑な顔をして抱き締められたのを覚えている。



その後直ぐ両親が亡くなったことを知り、燃え尽きた家に帰る訳にもいかず、祖母に引き取られ一緒に暮らすことになった。



だから、その遠い記憶を思い返すと母がいつの間にか父を殺し、無理心中したのではないかと思ってしまうのだ。






「真相未だ解らず……か」


その時の両親の真意は解らない。


ただ、俺を置いて先に逝ってしまったことだけ。


真意も解らず勝手に恨み辛みを持ってしまうのは良くないことかもしれないが、そうは言っても相手は故人。


この世に居ない人だから、そんなこと言うだけ無駄であってどちらの損得も無い。



そんな風に心の何処かで両親を思う自分が居た。


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