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あの公園で。  作者: 齋藤翡翠
7/10

ベンチで。前編

夏は日が高く昇る。


午後七時を回っても空は仄明るい。


最近、俺の周りも明るい。


「宮園だけに公園ってか!」


会社の同僚が俺に向かってそう言った。


先日の中学男子生徒を助けた件がメディアに取り上げられ、瞬く間に知り合いに知れ渡った。


「宮園さんって公園の管理なさってたんですね」


「ああ、まあ…」


向かいのデスクの女性会社員が綺麗な笑顔で聞いてくるが、俺は生返事を返す。


「宮園護が公園守るってな!」


会社の五月蝿い同僚は大きな声を荒げて笑った。


たったあれだけの事でこんなに言われるとは、嬉しいと言うよりは煩わしく感じる。


「お先に失礼します」

「お?もう帰るのか。何だよ、彼女でも出来たのか?」


下らない冗談をまた喧しい同僚が言い始める。

そんな下品な顔をするんじゃない。

お陰で周りから変な視線を浴びせられた。


「そんな訳無いだろ」


五月蝿いお前から逃れるためだ、とは言えず心の中で憤慨した。


そんな騒がしい会社から逃げるように帰路についている。


「人の噂も七十五日って言うけど、もっと早く消えてくれないかな」


悪い噂が立つようなものじゃなくて、普通に良いことしたんだが。

まあ、自然と話が消えてくれればそれで良い。

人にもて囃されるのは苦手だ。



そんなことを頭で考えながら、いつの間にか行き着く場所はやはりあの公園。


自宅では無く例の公園だ。


「もうここが家みたいだな…いっそここに家を構えるか」


何て冗談を独り呟き苦笑する。

その言動は誰も居ないから良いものの、他人が居たら変に見られていただろう。


公園の敷地に足を踏み入れる。

あの急な坂を登る前に一息つこうと、こうして公園に寄ることが日課となった。


軽く辺りを見渡して異常が無いことを確かめると、定位置であるベンチへと歩みを進める。



「?」


座ろうとベンチに近づくと、そこにはノートが置かれてあった。


目立った柄は無く表紙が白いノートだ。

手に取って裏表を見てみるが、持ち主の名前らしいものは特に書かれてない。


勝手に見てしまうのには少し抵抗があったが、中をパラパラと捲ってみた。


中も至って普通の大学ノート。中高生の頃によくお世話になった見慣れたノートだ。

だがこのノートは真っさらの新品同様、何も書かれておらず一皺も無い。



「あ」


と思っていたが、最後の頁を捲ると一文だけ書かれていた。


『このノートを拾った方、もし良ければ私と交換ノートをしませんか?』


筆跡から推測するに、多分女性の物だろう。


「何でまたこんな所に…」


変な事をする人も居るもんだ。

俺は、そう思いそのノートを元の場所に置いた。


見知らぬ人と、それも女性と交換ノートをするなんて俺には無理だ。


第一、こんなデジタル化が進む現代にこんな事をするこのノートの持ち主も持ち主だ。


拾った相手がこの言葉を真に受けると信じてやっているのか、それとも唯のイタズラか。


いや、きっとそうに決まっている。



置いてあったノートに対してそんな思いを巡らせながら、もう帰ろうと立ち上がる。


公園の出口まで迷うこと無く歩を進めたが、公園を出て直ぐピタリと足を止める。



「……あそこに置いてたら、ごみになる」


思い付いて結局、そのノートを持ち帰る羽目になった。

この頃公園で遊ぶ子供が見当たらないな、と思いながら公園に寄ったりします。



時代の流れですかね。


私が小さい頃は休みの日なんか、公園を梯して回って遊んだものです。



……あの頃は平和でした(笑)

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