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あの公園で。  作者: 齋藤翡翠
5/10

トイレで。前編

もう梅雨が終わり、爽やかな晴れ空が気持ちいい初夏。



子供たちは何週間か後の夏休みが待ち遠しいと、言っているだろうこの頃。


俺たち大人にはそんな長い夏休みが有るわけも無く、ただひたすら会社勤めの毎日だ。


俺の場合はデスクワークだから良いものの、そうでない人にはちょっとキツい時期だ。


会社はクーラーが効いているので、外に出るのが億劫だ。


気付けば蝉の野郎も数を増して鳴き始めている。


そんな蝉時雨が降り注ぐ町に出ると、暑さを余計感じるのは何故だろう。



毎年毎年、今年は猛暑だ、酷暑だなんて言い換えてるけど、何時になっても夏は暑いものなのだから「今年も暑い」で良いじゃないかと、最近天気予報に反発している。


そんな猛暑だ酷暑だと言われる夏でも、管理者の仕事は欠かしてはいけない。


涼しい避暑地あらばそこに行きたい所だが、それと同じでこの仕事も避けられない。


なんたって、「やめてやるかよ!」と前回宣告してしまったからな…。


会社帰りの道すがら、首をさする。


どうでもいいけど、さっき新婚したての同僚から「宮園も早く相手見つけろよ!」なんて下らないことを言われた。


そういや、祖母も亡くなる前に「早く好い人見つけて結婚しなさい」とか言っていた。


余計なお世話だ。


そんな出会いがあればいいが、いやまず俺はそういう人間関係なんて皆無だ。


気が付けばいつもの公園まで来ていた。


「……ついでに寄ってくか」


安定の公園探索。


花壇もよし。砂場もよし、多分落とし穴はないだろう……うん、多分。


公園を見回っていると、にわかに便所に行きたくなった。


直ぐ様公園の端に設置されているトイレに駆け込む。


「うっわ…汚ねぇ」


入ると臭いはするわ、トイレットペーパーがぐちゃぐちゃに散らばってるわで、気持ちの良いものでは無かった。


「ったく、何処もかしこも汚くしやがって」


挙げ句の果てには、個室のトイレの壁に落書きをされている始末である。


こういう公園のトイレは大抵綺麗ではない。


俺は管理者としてきちんと公園を管理していたつもりだったが、トイレには全然手をつけてなかった。


「こりゃ、今度の休みの仕事はトイレ掃除に決定だな」


ごしごしと落書きされた壁を指で擦ってみる。

落ちそうもない。


「ペンキで塗るしかないか…」


うう…俺の財布がまた薄くなりそうだ。

この間草むしりが大変だったので、除草剤のセットを買ったばかりなのだ。


それも致し方無いことか。


「む?」


暫く書かれた落書きを眺めていると、一つだけ気になる落書きを発見した。


個室のトイレのトイレットペーパーがあるところの上。


小さく鉛筆で書かれていた。

力強く書いたのか案外はっきりして見える。


「ダレカタスケテ、コロサレル……?」


こんな落書き、どうせ遊びで書いたのだろうとしか思えないのだが、一瞬何だかただならぬ物を感じた。


「まさか…な……」


心霊スポットじゃあるまいし…冗談で書いたやつはよく書けたものだ。


ちょっとその落書きにビビりながら、急ぎ足で家へと帰った。

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