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あの公園で。  作者: 齋藤翡翠
3/10

砂場で。前編

もう夏が近い。


暑くなるに連れて雑草も勢力を増し、どんどん伸びてくる季節になった。


公園に生える雑草も然り。

公園の管理者には必然的にその草を処理する仕事ができる。


「ああ、ホントに何で雑草ってこんなに生えるんだ」

抜いても抜いても生えてくる。夏のこいつらの精力には、感心するくらい目を見張る物がある。


嫌みかと思うほどだ。


休みの日の合間を練っては、ここにこうしてやって来て草むしりをする。


特に花壇は花が雑草にやられてしまうので、念入りにするように心掛けている。



「よっと!」


凄い根を張っているやつを抜いた。

土が一緒に付いてきて、抜いたところに根っこがあった形の穴ができた。


「うわー…スゲーな」


草の生命力とそれを引っこ抜いたという快感が胸の中を駆け巡る。


草抜きでも楽しい感覚を覚え始める。


「うっし、やってやるぞー…ん?」


隣に生えている草に手を伸ばした時だった。

さっき抜いた穴に何かキラリと光る物があった。


「何だこれ?」


穴を少し掘って光る物を掘り出してみる。

すると、出てきたのは国語辞典が二冊分くらいの大きさのお菓子の缶だった。


持ってみると、案外ずっしりしている。


確認のため蓋を開けてみる。


「わっ…」


中には鉛筆だったり、ちっちゃな玩具だったり、溶けかけた飴玉が入っていた。


「ガラクタばっかりじゃねーか」

「あ!おじさん、それ開けたらダメ!」


「んあ?」


箱の中を眺めていると、背後で遊んでいた子供たちに声を掛けられた。


「それ、僕たちが埋めたタイムカプセルだから!埋めといて」


タイムカプセルか……懐かしい。俺も昔そんなことしたな。


「ああ、わかったよ。埋めてもいいが、この飴はやめとけ、虫がわくから」


えー、と渋る子供を何とか説得し、飴玉を取り除いた缶――タイムカプセルを再び元の場所に埋めた。



「わー!ねーねー、みんな!タイムカプセル見っけた!」


せっせと草を抜く作業を続けていると、砂場の方から子供たちの騒ぐ声がした。


何だ何だと見ていると、砂場に大きな穴を開け、その中に皆注目している。


「おい、何やってんだ?」


「滑り台の下に落とし穴作ってたら、何か出てきた」


見ると、丸い楕円形のクッキーの菓子箱があった。


「ぜってー誰かのタイムカプセルだろ!開けて見ようぜ!」


「おいおい、お前ら人のもん取っちゃ駄目だろ。元に戻しとけ」


「おじさんだって、見てたじゃない」


「まあ、そりゃそうだけどな…誰かに大事に埋めてあるものを見られたくはないだろ?」


「うん…」


素直に頷く子供たち。


「そのまま埋めておきなさい。あと、滑り台の下に落とし穴は作らない」


一体誰を落とし穴に嵌めるつもりだったのだろうか。結構大きな穴を作っているので、注意した。



子供たちが穴を埋めているのを見届けながら、草抜きの作業を再開した。


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