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恩恵

 異世界のご飯は空腹もあってからか、普通に美味しく食べることができた。

 この世界でも家畜はいるらしく、少し大きめの卵や、カリカリに焼けたベーコンのようなものが出て来た。

 主食は米粒みたいな感触と大きさで、コーンフレークのような味のするものだった。

 お箸はないみたいだけど、代わりにスプーンとフォークで食べるらしい。

 なれない食事に戸惑いながらも、普通に美味しく食べられて満足だ。

 なんだかヒモみたいで少し心苦しいけど。


 食器を片付けた僕たちは、ご飯を食べていた時のちゃぶ台を三人で囲んだ。


「さて、早速なんだけど、昨日の話の続きを聞かせてくれないかな。」


 もちろん魔法闘技会のことだ。

 昨日はショックで倒れこんでしまったから、詳細を全く聞けていない。

 戦うなんて、僕には少し荷が重すぎる。

 もしかしたら辞退できる制度とかもあるかもしれない。


 魔法闘技会とは、神に捧げる一種の儀式で、決まった日に執り行うというわけではなく、

 ランダムに決められるらしい。為政者が決めているわけではないので、神以外には誰もわからないと言われているそうだ。

 それならばどうやって儀式の日を僕たちが知るのかだけど

 日が決まると、どこからともしれず空から新聞のようなものが振り撒かれるらしい。

 そこに書かれているのは、魔法闘技会開催日に、イストリアとガズリスの代表選手の名と顔という内容で、それ以上の情報は与えられないそうだ。

 代表は地区ごとに三人ずつ選ばれ、魔法闘技会当日に1対1で三試合行われる。

 そうして勝ち残った三人の代表は大陸イストリアの力を神に顕示した報酬として、恩恵を賜ることができるのだという。


「あれ、敗者にどうこうするっていうのはないんだね。」

「うん。この試合に負けたからといっても、負けた側が罰を背負わされるとかは全くないよ。ただね……」

「ただ?」


 リーナは苦い顔で続けた。


「神からもたらされる恩恵って、それなりにすごいのよ。

 じゃんけんが強くなる、とかそういうハズレもあるみたいだけど、

 あたりの中だと空を飛べるようになっただとか、どんな病も治せるカードをもらっただとか。

 だから神の恩恵を求めて闘技会代表選手になりたいって人は山ほどいるわ。

 つまり、代表選手に選ばれた人はこのチャンスをものにしようと、死に物狂いなのね。」


 そこまで聞いたらだいたい予想もついた。

 つまり


「敗者が負けたことを宣言した時には、だいたい瀕死の重傷を負うことがほとんどなのよ……」


 まあ僕でもその特殊能力みたいなものはめちゃくちゃ欲しいし、この大陸イストリアは相当に大きい王国らしい。

 そんな中のたった六人しか選ばれない代表に選ばれたら、死に物狂いで勝ちに行くのも当然だ。


 まあ、僕には勝ち残る力なんてないわけだから、瀕死以外の選択肢を選ばせてもらう。


「なら僕は辞退しようかな〜〜なんて……」

「何を言ってるのサイリ!?死にたいの!?」


 ありえない!みたいな顔をされて僕も戸惑った。

 こんなもやしみたいな男に瀕死になるような戦闘は無理だってことぐらいわかるはずだ。

 それなのに死にたいの!?まで言われてしまっては傷つく。

 リーナも相当にこの闘技会に出たいのだろう。そりゃあこんな恩恵喉から手が出るほど欲しいよなあ。

 でも殺人予告までされちゃあ僕も辛い。


「あの……サイリ様。それはあまりオススメしません……」


 ピィもそう言ってきた。やはりこの魔法闘技会、冠婚葬祭のように相当重要な儀式らしい。


「うん。僕も他の代表選手に選ばれなかった人の気持ちを考えると心が痛むよ。でもね、ピィ……」

「いえ、そうではなくこの試合を放棄することは許されていないのです。」


 は!?そんな話聞いていないぞ!


「この試合は神の娯楽の要素がとても大きいのです。

 つまり、この世界の神は魔法闘技を見て、楽しませてくれた褒美という形で恩恵を授けてくださるのですが……」


 なんて趣味の悪い神もいたものだ。


「試合を放棄するということは、神の機嫌を大きく損ねるとして、代表選手に罰を下すのです。」

「その罰って……?」

「もしも試合を放棄したとすると、さ、サイリ様は……」




 この世から消滅します。




 その言葉を聞いた僕は、どこか諦めたかのような表情で、地球での平穏な暮らしを走馬灯のように思い浮かべていた。


「そして試合は明日よ……。」


嫌なことってなだれ込んでくるよねえ!

かわいそう

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