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翌日

「おう最理!やっと起きたか……。さて、俺のリベンジマッチの続きだ!」

「寝起きで判断力が鈍っているところを攻めるという作戦かな?

 竜司にしては頭を使った方だけど、それでも最理くんが勝つと思うかな、私は。」


 どうやら僕は部室で少し眠っていたらしい。

 昨日カードの裁定が変わるというネタで盛り上がった掲示板を、夜中まで監視していたからだろう。

 仮眠のおかげか、すっかり眠気は取れていつもより20%ほど鈍っていた頭もフル回転だ。


「いいけど、今の僕はさっきよりも強いかもよ?」

「おお、なんか強敵っぽいこと言うようになったじゃねえか生意気な!」


 そうして僕はカバンの中からカードを取り出すと、


「おい最理?何出してんだ?」

「え、カードするんでしょ?さっき竜司に勝ったゲームはこれだよ」


 竜司の方が寝ぼけているんじゃないのか?と思っていると竜司は


「俺たちがこれからやるゲームはこれだろ?」


 そう言って取り出したのは扉の描かれた一枚のカードだ。

 僕はそれを見た瞬間に心臓がバクン!と跳ねたのを感じた。

 僕はあのカードを知っている。


「ま、待ってよ竜司」

「じゃあ始めるとするか、俺たちの魔法闘技をな!」


 待ってええエェェェエエェエェ!!!


「オープン!!!」





 リーナの部屋のベッドで起きた僕は汗まみれだった。


「最悪の寝覚めだ……」


 目がさめると、窓からは日が差し、小鳥がギュルルんギュルルん鳴いている。

 この世界の鳥はモーター音を鳴らして朝を知らせてくれるらしい。


「しかし今の夢……下手したら実現しかねないんだよなあ……」


 昨日の話を思い出してみると、竜司と葵さんはガズラスにいて、そして僕はガズラスの人と戦いをするらしい。

 この世界に来たばかりの僕が選ばれたんだし、あの二人も選ばれているかもしれない。

 そうなった時に僕はどうしたら……。


「全部夢だったら良いのに……」

「おはようございますサイリ様!」


 そう元気な声で朝の挨拶をして来たのは、なぜか僕の脇に寝ていたピィだ。


「うおわあ!?」


 そんな間抜けな声をあげて僕はベッドから滑り落ちる。

 後ずさるように落ちたので頭から落ちた僕は、硬い木の床に頭をぶつけることを覚悟していたが、ふよんっとした柔らかいクッションに僕は顔面から着地した。

 着地、と言ってもこの場合は地面ではなくて……


「きゃああああぁぁぁ!!!」


 リーナの胸だった。


 バチーーーン!!!


 こうして僕は再びこの異世界に来ていたことを現実だと認識するのである。


 僕はここに至るまでにぽっかりと抜けていたことがあったことに気づいた。

 そうだよ!僕はどうやったらここから帰ることができるんだ!?

 冷静に考える時間もなくて現状をどうにかするかで精一杯だった昨日の僕を殴りたい!

 心の中で焦っている時に、ピィがこっちを向いて来た。


(サイリ様聞こえますか?)

「うわっ!」


 突然頭の奥から聞こえたピィの声に驚いてしまい、赤い顔のリーナから変な目で見られてしまう。


(サイリ様、頭の中で私に語り掛けたいことを思い浮かべた後に、私の顔を想像してください。)

(こ、こうかな……?)


 僕はピィの言うとおりにして見た


(ふむ、地球でのサイリ様はどうなっているのか、ということですね。)

(おお、伝わった!すごい!)

(これがテレパシーです。私とサイリ様は思考がリンクしているのでこんな風に意思疎通ができるのです)


 確か老人がそんなことを言っていた気がするけど、こういうことだったのか。


(それで、地球でのサイリ様ですが、きちんと活動はされています)

(え?いや、だって僕はこうしてここに存在しているわけで、僕は一人しかいないんだよ?)


 そんなの説明しなくても誰でもわかるはずだ。しかしピィは


(ええ、ですからサイリ様方はあの店に入って、穴に飲み込まれた瞬間に、

 ご主人様が魂を二つに分離させたのです。)


 は?魂を分割って軽く言っているけどとんでもないことをしていないか?


(そうしてサイリ様方はこの世界に来たαと、今も現実世界で普通に生活しているβに別れたわけです。)

(もうとんでもない次元の話になっていないかそれ……)

(あっ魂が半分ということは寿命が半分になっているということと同義ですので、あの、その、頑張ってください!)


 なにをだよ!ここまで心無い応援もう聞けないよ!!


(いや、ちょっと待って、その、すべてが丸く収まる方法はないの?

 このままだと僕は現実世界に帰れなくて、しかも人生の半分も生きれないまま死ぬことになるんだけど!)

(ご主人様には、この世界から脱出する手段を教えるのは今ではないとしか言われていません……

 私にもその部分の記憶にロックがかかっているみたいです。でも、寿命に関しては解決策というか、

 元どおりにすることはできます。)


 この世界から脱出することはできるみたいだ。

 それならいつか来る日を楽しみに待っていようじゃないか。

 それよりも寿命の方が直接命に関わってくる問題だ!


(元どおりにする方法って!?)

(魂とは、同じ世界に同一のものが存在することはできません。

 おそらく、サイリ様が地球に戻った時には、異世界にいたサイリ様の魂と、

 地球で活動を続けていたサイリ様の魂が混ざり合い、寿命は元に戻るでしょう)


 結局この世界から脱出しなくちゃいけないのか!!!!

 僕がそうして頭を掻くと、ピィは怯えた表情でこちらを見ていた。

 そんなピィの姿を見て僕は冷静になり


(ごめん、ピィ)

(い、いえ、サイリ様の気持ちもわかります。こちらこそこんな重要事項をすぐに伝えず申し訳ありません。)


 悪いのはピィじゃない。あの老人だ。

 僕をこんなところに送って、寿命までいじっているだなんて!

 さっきの話で、僕らが今までの生活を取り戻すまでの道のりはおぼろげに見えた。

 つまり僕らはこの世界から脱出したら、すべての問題が解決するわけだ。

 一応向こうの僕は日々を謳歌しているようだし、この世界で暮らしている間に失踪事件が勃発することもない。

 なら僕だってここでの生活を謳歌して、この世界を脱出してやる!

 絶対に負けないからな!謎の老人!


「あの〜、どうしたのサイリ?さっきからやけに表情をコロコロ変えて」


 あ、しまった。

 あれない会話方法だったからリーナの目を全く気にしていなかった。


「い、いや。なんでもないよ。ただ考え事をしていただけ。」

「そう、なら良いんだけど」


 そう言いながらリーナは立ち上がると、


「それじゃ朝ごはんにしましょうか!」


 と言って台所に行った。

 不思議なことに、ピィはリーナのところに父とと歩いていき、手伝いをし始めた。

 僕が気絶している間に何かあったのかと考えていると、良い香りがして来た。

 そういえばこの世界に来てからご飯をまともに食べていない……

 そのことに気づいた瞬間、現金な僕のお腹はぐううぅとなり始めた。

 腹が減っては戦ができぬ、だ。

 とりあえずお腹を満たしてからこれからのことを考えよう


 そうして僕の異世界生活二日目が始まった。

明日も頑張ります

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