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この世界

 なるべくタンスの中を見ないように、おそらくリーナの服であろう白いTシャツのような形をした布を薄目でしどろもどろになりながらとりあえずピィに着せた。

 とりあえずはこれで話ができると、僕はリーナの部屋を漁ったことに罪悪感を感じながら、ナビゲーターを名乗ったこの子に話を色々と聞いて見た。


 まずなぜ裸だったのか

 この子はあの老人に仕えている精霊と呼ばれる存在らしい。

 そしてこの子は僕がこの世界に来た時に、意識の片隅に埋め込まれていたようだ。

 つまり最初からピィは初めから僕と一緒にいたわけだけど、問題は僕の方にあった。

 ピィは、僕がピィという存在を認識して初めてこの世界に肉体を持って生まれることができるらしく、あの脳内で聞こえた声をはっきりと聞きとることが、トリガーとなっていたようだ

 しかし僕の方は全裸でこの世界に来てからこの家に来るまで、意識をほとんど別のものに傾けていたために、意識の片隅から呼びかけていた声に気づくことができなかったわけだ。

 そのことはご主人様から説明を受けていたはずですけど……

 とピィに言われたけれど、ちょうど僕が老人の言葉を聞き逃した部分に該当する話だったのだろう。

 素直に謝罪をしてなぜ裸だったのかを再び聞いてみると精霊にはそもそも服を着るという習慣がないらしい。

 僕の意識から出て来るということは、僕の意識からこの世界へと転移するようなものですとピィは言った。

 とんでもないことだが、ここは異世界。常識がある程度までしか通じないのは想像していた。


 これで、とりあえずは説明がついた。そして二つ目の問題だ。

 どうして僕は裸だったのか。これは意外とまともな理由があった。

 ここでは文明が全く違うのだ。地球が科学技術で発展したとすると、ここは魔法で発展して来たらしい。

 そのため、僕が地球で来ていた衣服には繊維技術が用いられている。

 そんなものを持って行くとこの世界に対してあまりに違うベクトルの技術であり、僕は衣服だけでなく、何の持ち物も持ち込めなかったらしい。

 ならこの世界の服の一つでも用意してよ……と半泣きでピィに言ったが、あの老人も一応服は用意していたらしい。

 しかし僕のあの指のせいで服を渡すタイミングをすっ飛ばして送り出されたと聞いたときは流石に言葉も出なかった。

 まあ竜司も葵さんも裸でこの異世界に転移したわけではないと知って少し安心もしたけど。


 あの老人のを正体を聞こうにも、ピィ自身もよく知らないらしく、あまり有力な情報は得られなかった。

 まあ今あの老人の話をしていても仕方がない。


 次に聞いたのはこの世界のことだ。

 この世界は地球と同じように球状で、主に2つの大陸があるらしく、島国も存在しているということだ。

 今僕がいるのは大陸イストリア。そしてここから西の方に海を挟んで大陸サウミスがある。

 サウミスは長らく魔物に支配されているようで、この街のように、人間が土地を開拓していはいないらしい。

 僕たち三人はこの大陸イストリアに転移されたようだ。

 そしてイストリアには2つの地区がある。

 まずはここセリス、そしてもう一つはガズリスという地名らしい。

 竜司と葵さんはガズリス。僕はセリスに転移されたみたいで安心と不安が半分ずつの複雑な気持ちだ。


 他にも通貨のことだとか法律のことだとか交通のことだとかを色々聞いて、だいたいを頭に詰め込んだ。

 言葉はもちろん地球とはと全く違うため、僕や竜司たちは老人から自動翻訳の加護を受けているらしい。

 加護を持った人たちは他にもいて、普通はこの世界に誕生した時に与えられるもので、効果の程度や種類は多種多様らしい。

 あの老人やっぱり只者じゃないみたいだなあ。


「ーーーというわけですね。」

「ああ、ありがとうピィ。だいたい聞きたいことは聞けたかな。」


 そしてばたっと倒れるともう日が沈んでいた。

 この世界に来たのが真昼間だったから地球の感覚だとそろそろ6時かあ……。


「そういえば、リーナ遅いなあ……」


 僕がふと呟くとピィがあっと思わず言ってしまいそうな顔をした。


「そういえば説明を忘れていました……この世界ではサイリ様のいた地球とやらに似たイベントがあるのです……。

 そろそろそれの開催日なのでリーナ様はそれに巻き込まれて帰りが遅れているのかもしれません……。」

「イベント?何か楽しそうな響きだけど」


 気軽にそう言うとピィは少し悩んで


「そうですね、確かにあれは見てると心が踊るようなイベントという認識です。私には刺激が強いですけど……」


 刺激が強い?

 少しきになるワードを残しながら僕はさらにピィに質問をしようとした。が

 突然バタバタと階段を上がる音がしてすぐに僕は警戒した。

 とはいうものの僕にできることといえば立ち上がることくらいだったのだが。

 ほとんど身構える間も無くその足音はこの部屋に走り込んで来た。

 そうして焦った風でこの部屋に飛び込んで来たのはリーナだった。

 僕は安心から胸をなでおろして、


「どうしたのリーナ?そんなに焦って。」

「い、いや、焦るのはむしろ私じゃなくてあなたなんだけど、私がすぐに伝える必要があって、

 だから焦って帰って来たわけで……ああもう!」


 何やら支離滅裂なことを言っているリーナに僕はオロオロとしていた。


「って何でこんなに小さい子が私の家にいるの!?ってその服私の!」


 リーナは慌ただしい様子で僕の方を見たりピィをメトロノームのように見ている。


「ああもう!今はそんなのどうでもいいの!とにかくサイリ!」

「はいっ」


 思わず姿勢を正してしまった。何なのだろうか?


「サイリ!!あなた次の魔法討議会代表選手に選ばれちゃってるよ!?」


 ?

 僕はピィに聞いてみた。


「これがイベントってやつのこと?具体的には何をするの?」


 そういうとピィは青ざめた顔で僕にこう返した。


「サイリ様……あなたはこのセリスの誇りをかけて、ガズリスの代表と戦うことになったのです……」


 戦う

 間違いなくそう聞こえた。いや、戦う?

 そんなの無理だよ僕地球ではただの一生徒だったんだよ?

 殴り合いだってこの人生で一度もしたことないよ?

 いやいやいやいや決めつけるのはまだはやい。

 勝負事といっても様々だ。

 ギャンブル、スポーツ、クイズなどなど争わない方法なんていくらでもあるじゃないか!


「戦うって……ナニで?」


 僕は引きつった笑いを浮かべながらピィに聞いた


「あ、えーっと……カードを用いてですね……」


 ほーらやっぱりそうだ!こんな裸で人生始まってしかもその次には戦闘だなんてそんなの絶対におかしい!

 きっとカードを使ったゲームで勝敗を決めるんだ!

 TCGやトランプとかはなさそうだけど、この世界独自のカードゲームがあるのかな!?

 そうやって淡い期待に胸を膨らませていたが


「相手を行動不能、もしくは戦意喪失させるゲームです……」


 現実は非情である。


「は?」


 僕はそうしてこの一日を強制シャットダウンした。

9時ごろにもまた上げれるようにガリガリ書きます!

目指せ1日4更新!

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