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ナビゲーター

リーナの家に着いた時に僕は疲労困憊だった。

何しろまた全裸で街中を移動していたのだ。

人目が気になってしょうがないし、リーナによると


「あ、人にぶつかるとステルスが解けるから気をつけてね!

あとどんなカードにも制限時間があって、それを過ぎても解けちゃうよ!急ごう!」


僕が人にぶつかった瞬間に姿が現れるってことは、ぶつかった相手からすると目の前に突然全裸の男が出現するのだ。

時間制限が来たら突然全裸の男が街中に全裸でテレポートをして来たように見えるのだろう。

変態が突然ポップして来た時に街の人はどう言う反応をするのか嫌な想像をした。

そんなこんなで僕はこの1時間に渡るこの修羅場をなんとか乗り越えた。

途中でリーサが目に見えるように焦りながら加速していく様子を見て、相当にまずい状況だったのがひしひしと伝わってきたが、なんとか僕の尊厳は土俵際いっぱいで踏みとどまることができた。


「でもなんとか最低条件である衣服はなんとかなったなあ……」


そう言って今の僕の服装を見直した。

サルエルのようなダボっとした緑色のズボンに、無地の袖の短い服、灰色の生地に黒く縦ラインの入った腰あたりまで伸びたマント。ついでに一応追われていた身なので、帽子も用意してくれた。

僕は服装に対して無頓着だったので、似合っているかどうかはよくわからないが、まあ女の子が用意してくれたものだしそれほど問題はない……と思う。

リーナには感謝をしてもしきれない。わざわざ服屋に行って僕の服を見繕ってくれたのだ。

もちろん本人には何度も感謝の言葉を伝えたが、


「だからこれは私のお節介なの!素直に受け取りなさい!」


と言う声をかけられてからは、感謝は心の中にとどめている。

しかし女の子の家に入ると言うのは少し緊張したけど、なんだかここは人が住んでいる感じはしない。

リーナの家に着いた僕は意外とその家の小ささに驚いた。三角屋根の二階建て木造建築アパートのようなところで、入ってみるとリーナに案内された二階の部屋を見るとキッチン、風呂、トイレなどは揃っていたが歩くとキシキシと床がなる。

風もよく通るので、今はそれなりに暖かいけど寒い季節などはどうなるんだろう?ここは基本的に暖かい地域なのかな?と予想を立ててみる。

部屋にもベッドやタンスなど、最低限の物しか置いてなくて、どこか殺風景だ。

周りには建物も少なく少しさみしい街並みだけど、それは僕の好みだった。

現在リーナは忘れ物をしたとか言って、どこかに行ってしまった。

意外とうっかり者だなあと笑って送り出した僕はリーナの家で待機するように命じられた。


「出会ったばかりの男に留守番を頼むかなあ……」


どうにも彼女は人を信じ過ぎている節がある。

もう少し対等な立場になったら言わなくちゃいけない時が来るかもしれない。

留守番を命じられた僕はと言うと、何もしないで部屋で大の字になっていた。

周りの散策をするのは命令違反だし、部屋なんて調べていたらそれは人間としてどうなのだろう。

そうしてやることもなく部屋でダラダラと疲れを取っていると、頭の奥から何か声がすることに気づいた。


……お、…………………あ


耳鳴りかな?やっぱり疲れているみたいだ。

僕は目を閉じた。


あ…お、…い…………かあ


やはり何かが聞こえている!

意識を澄まして声をきくことだけに集中する


「あのお、聞いてますかあ!?」

「うわああ!!!」


大声が聞こえた。今度は本当にキーーーンと耳鳴りがする。


「はあっはあっ……ようやく聞こえたみたいですね……

これで私が出られます。」


そうして疲れた声がまた頭の中から聞こえた。

なんだ!?何が起きているんだ!?と周りを見ても誰もいない。


「ちょっと待っててくださいね……えいっ」


その声の直後にぽんっと音がして小さい煙が生まれた。

そしてその煙から出てきたのは、僕の腰ほどくらいしか身長がない、幼い子供だった。

その子は緊張した顔つきで


「こ、これからあなたのナビゲーターを、務めさせていただきます、ピィと申します。長いおつきあいになると思いますが、よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく。じゃあまず、僕の疑問を聞いてもらっていいかな?」

「は、はい、何なりと。」


僕は何が何でも最初に聞かなければならないことがあった。

それはこの世界で生き抜くためにとても重要なことだ。

それはーーー


「どうして君は服を着ていないのかなあ!?」


もう全裸は勘弁してくれ……

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