出会い
どうして始まってばかりの生活でこんな酷い目にあっているのだろう。
分かり切ってる。あの老人のせいだ。
目を覚ますと体が縮んでいた高校生はいたが、裸になっていた大学生はいるだろうか。
全裸でこの世界に来た僕は雑踏の向こうから鎧姿の憲兵のような人物が走ってくるのを見て、思わず逃げ出した。
流石にこの姿で
僕は異世界から来ました!
とか言ったらただの変態だ。
そうして僕は雑踏をかき分け、古びたレンガの家と家の間の路地裏に逃げ込んだ。
両手でブツを隠しつつ全力疾走で奥へ奥へと逃げる。
追われることはなかったけど、なんとか撒いたというよりも、関わりたくない故に避けられたかのような気もするが、まあ気のせいだろう。
そうして僕の逃亡生活が始まった。
五分後
「キャアアアアァァアァ!!!」
終わった。
ーーー
「つまり君は記憶喪失ってこと?」
「はい。ここにくるまでの経緯も、自分が何者なのかも全く覚えていないです。」
もちろん嘘だ。現状をうまく説明する出まかせに過ぎない。
同情を誘えて、なおかつこの姿の説明をするにはこれぐらいしか思い浮かばなかった。
「そうなの……なんて可哀想な人。」
信じちゃうの!?なんてちょろいんだこの人。
涙まで浮かべてなんだかこっちまで悲しい気持ちになってくる。
しかしここでくじけてはいけない!僕は今回の件で同情を誘ったのはズバリ
衣服の確保!
逃げている間に思っていたのはまずこの世界をどう生き抜くのかということ。
必要なものは挙げていくときりがないが、なにをするにもまずは人とのコミュニケーションだろう。
想像してみよう。現在僕がお金を稼いだり、ここはどんなところなのか調査のために街の人から話を聞くとしよう。
全裸である。全裸の男が街中で人に話しかけているのである。牢屋ルート待ったなしだ。
つまり僕はなにをするにしてもまずは衣服が必要だったのだ。
しかしこれが難しい。
衣服を手に入れるためにも全裸だ。話すら聞いてもらえないだろう。
まさに服を買いにいく服がないのだ!
選択肢としては、盗むというのも候補に挙がったが、それは最終手段だ。
そうして、どうしようかと頭を悩ませている間に路地の狭い道の曲がり角で彼女とぶつかり、先ほどの悲鳴から、なぜかお互い正座で僕に対しての説教が始まり今に至る。
目を涙で売るわせている彼女はリーナというらしい。
僕よりも身長は少し低い程度で、多分165センチくらいだろう。金髪の方まで伸びた綺麗な長い髪をしている。出会い頭では気づかなかったけど、耳が長い。漫画とかでよく見るエルフみたいだ。格好は丈の短いやけに細かく装飾の入ったワンピースで、皮ブーツを履いている。
こんな僕の話を聞いて信じてくれる程度には優しいというか、お人好しらしい。
さて……ここからどうやって服を手に入れるか……と画策していると、
「ねえ!ならうちに来ない!?」
天使かな?
短い話でコンスタントに挙げていこうと思います!
次回からはようやく異世界要素〜