変化Ⅱ
しばらく堪えていた綾希だったがそれにもとうとう限界が来た。
「何なの!?早く言ってよっ!私、明日学校あるのに…!」
綾希は思い切り怒鳴った。家族を起こしてしまうかもしれないし窓も開いている。だがそんなことを考えられない程に限界だった。全部終わらせて、夢だった事にして眠ってしまいたかった。
「で?早く言ってよ。言わないなら帰って。今、すぐに。」
綾希は苛立ちを隠さずに外を指さして言った。何も言わなくていいから一秒でも早く帰ってほしかった。死に神は微かに俯いたが、その後真っ直ぐに綾希を見た。どうやら決意を固めたようだ。そしてやっと言葉を発した。
「今わかったんです。」
綾希を指さして死に神が言った。
「え、私?何がわかったの?もしかして生き返った理由とか」
「いいえ。」
死に神は綾希が言い終わる前に首を横に振った。
「じゃあ一体何が…」
「死期が、です。」
綾希は一瞬ゾクリとした。鼓動がだんだん早くなっていくのがわかる。本能がその質問はするな、と告げていた。しかし綾希は聞いてしまった。
「私、の…!?」
綾希はただ返事を待つ。恐怖で手が震えた。死の恐さは身を以て体験した綾希にとってはなおさらだ。外で強い風の音がした。死に神は口を開いた。それすらスローモーションに見えた。
「はい、そうです。」
ここ一番の強い風が吹き、カーテンが勢いよく広がる。
「………………」
綾希は何も言えなかった。どうして、どうして。
足がふらつき綾希は床に座り込んだ。力が全く入らない。
「綾希さん、大丈夫ですか?」
差し出された手に気付かないフリをし綾希は下を向いたまま、それでもなんとか言葉をつむぐ。
「死期…」
「え?」
「死期っていつなの?」
冷や汗が止まらず気分が悪い。そんな綾希を見ながら死に神は静かに言った。
「ちょうど明日のこの時間…つまり二十四時間後です。」
それはどうしようもなく残酷で非情な宣告だった。