過去
気が付くと道の上に立っていた。綾希は一瞬なぜかと慌てたが、少し前の出来事を思い出し納得した。
−ここは過去の世界…−
綾希は周りを見渡してみた。道路の真ん中に立っているというのに車が一台も走っていない。どうやらかなりの田舎にやって来たようだ。向こうの方に少し古ぼけた家々や川が見える。
−とりあえずあっちの方に行ってみよう。−
綾希は人気のありそうな方へ踏み出そうとした。
「あ…。」
そこで自分が靴を履いていなかったことに気付いた。しまった、と綾希は一人呟いた。このままじゃ靴無しであそこまで歩いていくことになる。決して遠いわけではないがさすがに抵抗がある。それに靴下を履いているとはいえ夏のアスファルトの道路は熱い。どうしたものか、と綾希は困りとりあえずすぐ近くの木陰まで行き腰を下ろした。
「財布もないし…。鞄持って来ればよかった。」
今、綾希は無一文だった。きっと知り合いなんているわけがないだろうし早々に出鼻をくじかれ綾希は少し不安になっていた。一回靴とか取りに帰れないかな、等と考えているといきなり頭上から声がした。
「あのう、大丈夫ですか?」
学生服のスカートが目に入った。
「あの、聞こえてます?もしかして熱中症かな…」
誰か呼んでこなきゃ、とその少女が走り出そうとしたとき綾希は我に帰りスカートを慌てて掴んだ。少女は驚きながらも止まった。
「すいません、ボーっとしちゃってて…。あの、大丈夫ですから、」
そう言って綾希は顔を上げた。
「え…!?」
少女と目が合った瞬間、綾希は心臓が止まりそうになった。
「わた、し…?」
それも無理はない。目の前に綾希とそっくりな顔をした人間が立っていたのだから。