14話 審判会議の日~2
セゥルド王子は落ち着いた様子で、審判会議の間へ入室し、王の前に跪いた。
「国王陛下、お久しぶりに御座います。私、ソルデュ三世陛下の息子セゥルドは、国王陛下の御前にて、身の潔白を証に参上いたしました」
「笑止、たった今、商人と、侍女の証言で、セゥルド王子が命でイスル王子を殺害せし者どもの首謀者と、国王陛下も会議の成り行きを見られていた所である。無駄な言い訳などなさらず、真実を語られよ」
グラウダはここぞとばかり、セゥルド王子に詰め寄った。
と、その時であった。
「下らない猿芝居はもうこの辺りで終わりにしませんか?本当の事を言うべき人物は他におりましょう」
とリードの声が大広間に響いた。さほど大きな声とも思えぬリードの声は、何故か全員の耳に止まった。
「なんと申すか!魔術師風情が」
グラウダは叱咤の声を上げたが、突如、パチーンとリードの指先から発せられた音が会場に響くと共に、グラウダは体がグラリと傾く感覚を覚えた。
「皆に、言う!」
グラウダは皆にセゥルド王子が首謀者であると更に言う為に大きな声を出した。
「イルス王子の殺害を企て、毒物を商人より購入せしは、私、グラウダだ。そして、侍女に命令し、毒を盛らせたのもこの私である!」
貴族、政治家達は、ざわめいた。グラウダは自分の言った言葉が何かの間違いだと慌てふためき、間違えたと言い訳をしようと更に口を開いた。
「それというのも私の孫である、キアリルに、ぐずで頭の悪い国王が何時まで経っても王位継承権を与えないからだ!イルス王子が死んで、セゥルド王子が殺害の犯人となれば、我が孫キアリルが王太子となるは必定、そうなるように計ったのは、私である!」
グラウダは、自分が思っている本当の言葉しか言えない事に驚き戸惑い、口をつぐんだ。
今、審判会議の間に居る全員がグラウダを穴が開くほど見ていた。何故だ?何故こんな事を言ってしまうのだ?グラウダは焦りと苛立ちと怒りで全身が震えた。王は驚きのあまり、顔が青ざめていた。グラウダはその表情を見て更に慌て口を開いた。
「えぃ、くそっ!おい!そこの商人、私が毒物をお前から購入し、ゼルクルが買ったと嘘の証言をするよう金をたっぷり与え、証言しなければ、お前の娘を殺すと脅したのを覚えておろう」
商人は驚きながらも「そっ。その通りで御座います」と言う。
「侍女よ!お前は父親の病気の治療費を稼ぐ為に、わしに金で雇われて、以前からイルス殺害の為にイルスの侍女としてわしが送り込んだ者だ、そうだろう?」と口を開けば開く程、真実を語ってしまう。侍女は驚きながらも、びくびくとした様子で「仰せの通りでございます」と答えた。商人も侍女もグラウダに逆らうことを恐れる故の事だったと、証言し始め、2人とも嘘をついていた事に少しばかりでも両親が咎めていたのか、どうかお許しをと会議の参加者たちに必死に謝り始めた。
もう誰もがセゥルド王子を疑う余地は無かった。
国王は兵士に向かって首を立てに振り、グラウダは、王が如何に間抜けで、世間知らずで、如何に自分の言いなりになって操られいた馬鹿者かを喚き立てながら、兵士に引きずられ部屋を後にする事になった。
グラウダ大臣が去った審議の間は静まり返っていた。
「陛下、陛下?」
セゥルド王子は小声で優しく父を呼んだ。
王であるソルデュ三世は、はっとしたが、未だ信じられぬという表情を浮かべていた。
「ソルデュ三世陛下の御世に栄えあれ!」
セゥルド王子は、あまりの驚きに言葉を発せぬ王に機転を利かせ、剣を抜き皆の前で言った。
「ソルデュ三世の御世に栄えあれ!」
セゥルド王子の声に呼応するように、全員が声を上げた。
落ち着きを取り戻したのか、ソルデュ三世は立ち上がり、セゥルド王子に声を掛けた
「セゥルド。そなたを疑った父を許してくれるか」
「勿論で御座います。父上」
「皆の者、これより、この国の王太子はセゥルドのみとなった。後に王太子立式の式典をとり行う。皆の者、この後もセゥルド王子を頼んだ」
皆が、王の言葉に頭を下げた。
この後、セゥルド王子は、王太子となり、
後に国を預かる王へとなり、ゼルクルは東の大臣になった。