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始まりのテープ

結構真面目な話

 あぁまただ。いつになったら終わるのだろうか。そう自分に問いかけても、答えはない。

 俺は愛する人がいた。その人に対する俺の愛は、人生をかけても注ぎ切れない位巨大だった。本当に注ぎきれないくらいに。

 愛人が死んだ。想い出がモノクロの様になり、脳の細胞を駆け巡る。俺が、まだあの人に注ぎきれていない愛はどこに捨てれば良いのだろうか。現実を脳内が処理しようとしているが、心がそれを止めている。俺は出来るだけ何かに気を紛らわせたい気持ちになり、酔えば現実逃避出来るだろうと考え酒を1杯飲んだ。この行動は正解だった。このままずっとアルコールに包まれていたい、現実から目を背け続けたい。そう強く願っていた。その時、黒い影が俺に覆い被さった。

 気がつくと、灰色の部屋の中で高い椅子に座っていた。バーだろうか、いやバーテーブルもないしこの予想は外れだろう。

 「あなたは死に興味はございますか?」

黒い仮面をした男が急にそう俺に問いかけた。普通なら不信感を覚えるものだか、何故かこの時安心感を抱いた。

だから素直に答える事にした。

 「あるが、自己的な理由で興味がある訳ではない。」

そう、俺は自分に対して興味がある訳ではなく、愛人に対して興味があるのだ。何が言いたいかと言うと、愛人に生き返ってほしい。この言葉がこの答えの真髄だ。この答に対し、仮面の男はワンテンポ置いて再び口を開いた。

 「なるほどねー。ん〜いいよ!その愛人とやらを生き返らせてあげよう。その代わりにある条件を飲んでくれるか?」

頭がこんがらがる。まずこいつは何故俺の考えを読み取っている?まだ言葉にも出していないというのに。そんな事はどうだっていい。愛人を生き返らせてあげるだと!本当なのだろうか。いやこの機会を逃すともう次は無いかもしれない。つまり俺に選択肢は皆無に等しかった。

 「なんでも飲む。頼む、生き返らせてやってくれ。」

仮面の男は頷き、話の続きを話す。

 「まず一つ目の条件は、この世で役目を果たされた人を死の世界へ連れて行く仕事を四年間すること。」

 「二つ目は、その人々に死に興味があるか聞く事。」

 「三つ目は、忘れてしまいました!笑。なので軽めのルールを三つ目とします。自分の顔を他人に見られてはいけません。以上を守ってくださいね。」

「わかった。誓おう。」

「素晴らしい!あなたの勇気ある決断に私は心打たれましたよ。特別に貴方にだけは、私の顔をお見せします。」

さっき聞いた条件を聞くに、こいつも今から俺がやろうとしている仕事をしていると考えれる。となると、

「え!?それは大丈夫なのか?ルールに反してはいないか。」

仮面の男は、優しい口調で言う。

「反してはいませんよ。このルールには、ある抜け道があるのでね。」

仮面の男が、いや仮面が外れた今は黒いスーツを着た後期高齢者とでも言うべきだろうか。

 老人の顔をよく見るとなんだか懐かしみを覚えた。あぁ、祖父に顔と似ているいや似すぎている。そう思っていると、老人は目の表面に潤いを見せながら話しだした。

「君は、これから色々な事に気付いていくだろう。でもその気付きを捨てるか、集めていくかで運命というのは変わる、どちらを選んでも良い。人生は自己責任だからだ。たとえその結果が、成功とは程遠いものでもまた描き直せばいい。長々と喋ったが、つまりは、」

老人は、ゆっくりと俺の肩に手を乗せた。

「上手くやれよって事だ。」

「なんだよそれ笑」

全く老人はフリが長いな。

 さて条件を引き受けたは良いものの、これからどこに行けば良いのだろう。この部屋の出口も入口もどこかわからない。すると、真後ろに気配を感じた。

「まだいたのか、爺さん。」

「心配性なものでね。出口がわからんのだろう?教えて差し上げようではないか。」

老人は下を指す。

「ここだ。思いっきり踏みつけたら開く。」

「随分と原始的だな笑。」

俺はすぐに老人が指差した場所へと向かう。

「短い間だか、世話になった。また機会があれば礼をする。」

「礼なんぞ要らんわ。さっさと行け!」

全く薄情な爺さんだぜ。

 ここから俺の第二の人生、いや初の⚪︎⚪︎人生が始まったのだ。



 

 

マリトッツォ美味しかった。

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