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人柱  作者: ツヨシ
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目の前で車が煙のように消える。

立川がその話を聞いたのは、ここに長期出張に来てから二度目だった。

「本当に見た人がいるらしいぞ」

社内ではその噂で持ち切りだ。

立川が聞いたのは二度目だが、ここに長く住んでいる人は何度も聞いたことがあるそうだ。

しかもいつも同じ道だ。

立川が一度も通ったことがない道。

立川の家と勤め先の間にはちょっとした山がある。

いつもはその山をぐるりと迂回して通っている県道を行くのだが、山を横断する道がある。

細くて険しい山道だ。

ゆえに県道よりも交通量が少ないのだが、距離的には短くなるので一定数の車が通う。

その道で目の前で車がすうっと消えるそうだ。

――一度行ってみるか。

つぎの日から、その山道が立川の通勤ルートとなった。

理由はただ一つ。

噂が本当なら車が目の前で消えるのを、見られるかもしれないと思ったからだ。


確かに細くて険しい。

話には聞いていたが、話の通りだ。

ただ通勤時間は少し短くなった。

でもそんなことは重要ではない。

――いつになったら見れるんだ。

この道を通いはじめてから、もう数か月になるというのに。

でも立川が見ていないところで車が消えたわけでもないようだ。

そんな話はまるで耳に入ってこない。

――明日くらい見られるかもな。

なんの根拠もなく立川がなぜかそう強く思った次の日のことだ。

立川がいつものように帰宅しているときにそれは起こった。

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