№_27_ふりがな版
暗送秋波
「終わりました?」
刀柄の先に片足を乗せ、空から地面に降り立つ、緒乃葉。
「勝手に押しつけておいて、高みの見物を・・・」
急な立ち眩みを起こし、地面に膝を付く、緋色。
「緋色‼」
呼吸を整える緋色を、心配そうに見つめる、雪。
「大丈夫だ。雪、”祓纏”を解除してくれ…」
「うん…」
街を凍てつかせていた氷は煙と化し、霧が晴れる様に消えて行く。
「酷い街並み…未熟な”祓纏”だと、こうなるのね」
「市民の安全を確認した範囲での使用だ。問題ない」
「市民の安全・・・私は?」
「・・・効くのか?」
「試してみます?」
鍔を指で押し上げ、刀身の根元を、鞘から覗かせる。
「はぁ…冗談だ。爾谷家と、余計な諍いを起こすつもりは無い」
「家は…関係ない…でしょ…」
気まずい表情を見せた緒乃葉は、言葉を詰まらせ、緋色に対して素っ気ない態度をとる。
「・・・青葉が心配していた。たまには、家へ帰って安心させてやれ」
「家へ戻れって・・・貴方、まだ!」
鋭い目つきを向けた緒乃葉は、緋色の優しい表情を見て、顔を背け隠す。
「・・・あんな屋敷に、留まる価値があるの?」
「ふっ・・・余計なお世話だ」
背を向けて拗ねる緒乃葉の姿に、幼少期の面影を感じて、笑いが零した、緋色。
「・・・」
二人の会話を、嬉しそうな表情で、静かに見守る、雪。
_「人殺しの後だというのに、随分と…楽しそうですね?」
和んでいた三人の耳に、街中を反響させた謎の声が届く。
背中合わせになり、辺りを警戒する、緋色と緒乃葉。
「・・・何者だ?」
_「そう警戒なさらず…”今日は”争いに来たのではありません」
_「同胞を回収に来たのですが…一足遅かった様ですね」
やる気を感じさせない、大きな溜息を一つ、街に反響させる…
_「成果なしでの撤退は、大変不本意でありますが、龍の狩りは、”いずれ”お殺しいたしますので…」
_「では、ごきげんよう…皆様、お気をつけて…」
反響する声と共に、背筋を流れる嫌な気配が、薄れていく…
「・・・消えたな」
「緋色!油断しないで!」
手を握り、祈りを捧げる雪は、閉ざした瞼の中で瞳を動かし、声の出所を探し続けていた。
「どうした?」
「音の出所なんだけど・・・え⁈」
振り向いた緋色の視界には、白露の中から現れた手刀に、胸を貫かれた雪の姿が映っていた。




