№_21_ふりがな版
阿諛追従
「おまえの兄になった覚えは無い!」
「弟のほうが、良いと?」
「なぜ、そうなる…」
緒乃葉のペースに乗せられ、反論することを諦めた、緋色。
「幼い私に、忠誠を誓ったのは、貴方でしょ?」
「子供の口約束を、まだ、真に受けているとは…」
「幼い頃のお兄様は、私の戯言を、素直に受け止めてくれましたのに!」
呆れる緋色に、嫌味を呟く緒乃葉は、地面に落ちた刀を拾い、腰に添えた。
「は~今から追うつもりか」
「手配は?」
「町の各所に、部下を配置してある。避けて通るなら、この道だ」
配置場所に丸を付けた地図を、緒乃葉に近づき、手渡す、緋色。
「お兄様も、偶には、役に立ちますのね」
「俺は、課長だぞ?これぐらいの仕事、出来て当然だ!」
「緋色・・・」
色々と間違っているが、どこを正すか、迷う、雪。
「ではお兄様、行きましょう」
いつの間にか、車に乗り込んでいた緒乃葉が、緋色を手招く。
「いや、俺は…敵の正体を…」
周りの顔色を窺い、どちらを優先するか葛藤する、緋色。
「早く?」
フロントガラス越しの緒乃葉が、口を動かし、睨みつける。
「・・・仕方ない、近くまで、兄が送ってやる!」
「手掛かりを探しに来たんじゃ…いいのか、それで?」
車に乗り込む緋色に、悲観の眼差しを向ける、剛。
「なんで、徒歩で逃げなきゃいけないの?」
文句を吐きながら、路地を歩く、天。
「今は、備えの段階。派手な行動は、今後に支障をきたす」
「え~一人ぐらい殺しても、ばれないよ~」
「・・・いや、多分、見つかると思うぞ」
長考した龍は、前を歩く天の足を止め、冷静に答えた。
「はぁ~やめとくか~」
ため息を吐いた天は、道路に立つ霊を横目に、路地を引き返す。
「もう直ぐ、合流地点だ。無理に戦う必要はない」
大通りを避けて、人目を気にしながら路地を進む、天と龍。
「何か、人、少なくない?」
シュン!
後ろ歩行の天が、音に驚き、振り返ると、飛んで来た刀の剣先が、目前まで迫っていた。
「龍…痛そう~」
「お前が、油断しているからだろ」
刃を素手で鷲掴みにし、動きを止めた龍は、緒乃葉に刀を投げ返す。
「待っていましたよ…」
跳ね返された刀を捕み、天に剣先を向ける、緒乃葉。
「なぜ、俺まで…」
道の背後に現れた緋色が、天と龍の、逃げ道を塞ぐ。




