№_20_ふりがな版
蛙鳴蝉噪
深く俯き、立ち上がった、百。
「追う…」
貼り付けられた鉄男を、ゆっくりと寝かせた緒乃葉は、歩き出した百に問う。
「…追いついた後は?」
「百の守護霊で、祓う」
「相手は、唯の人間ですよ?霊の能力は、通用しません」
スマホを取り出した緒乃葉は、誰かに連絡を取る。
「…なら、人間を殺す」
「どのように?」
スマホの会話を中断し、百を睨む、緒乃葉。
「それは、刀とか…銃とか…」
歯切れの悪い返答で、目線を逸らす、百。
「悪餓になった人間に、刀も、銃も、余り効果はありません」
「そもそも、人間を殺すことは、犯罪になります」
「だったら、どうすればいいの!お父さん・・・」
その場に崩れ落ちた百は、顔を伏せ、泣き出す。
「…貴方も、引きずり込まれてしまいましたね」
通話を切った緒乃葉は、百に独り言を吐き、怪我を負った剛に近づく。
「剛、あいつらを追えますか」
「俺に、犬みたいな嗅覚は、無ぇよ」
「…使えませんね。では、人払いのお札を、剝がして来てください」
「俺も、一応、怪我人なんだが…」
霊力が籠められた札を、地面に投げ捨てる、緒乃葉。
「その体を、いつまで倒しているつもりですか?」
「何で、俺だけ…」
壁に貼られたお札を剝がしながら、文句を垂らす、剛。
「よう。久方ぶりだな」
解かれた結界の外から、緋色が顔を出す。
「…先に、救急車を通せ。重症者が居る」
「悠だろ?全て聞いた。ご愁傷様だな!」
人を腹立せる表情で、嘲笑う、緋色。
「おい、おい。犯人は、もう、逃げた後だぞ?」
挑発に乗った剛が、緋色を煽り返す。
「は!お前たちが、取り逃がしたんだろ?」
「あ⁈」
「ああ⁈」
互いに襟を掴み、頭を合わせ、火花を散らす。
「こら!喧嘩をしてないで、役目を果たしなさい」
緋色の後襟を掴み、剛から引き剝がす、雪。
「俺は、終わったけどな~」
勝ち誇った表情の剛は、雪に怒られる緋色に、剥がしたお札をちらつかせる。
「…雪!逃げた犯人を追うぞ」
「いや、手掛かりを探しに、現場に来たんでしょ…」
呆れた雪が、明後日の方向に走りだした緋色を、止める。
「お兄様。さっさと仕事をしろ、馬鹿が・・・」
石段の上から、いつもとは雰囲気の違う?緒乃葉が、三人を見下していた。




