№_16_ふりがな版
悪木盗泉
高見の命令で、百が居る神社に向かう、悠と緒乃葉。
「え~と、緒乃葉さん…」
アイアンクローで吊るされる、悠。
「先輩か、様ね」
「緒乃葉先輩は、百さんとお知り合いで?」
布に包まれた刀を帯刀し、不機嫌な顔で歩く、緒乃葉。
「いいえ、知りません。話しに聞いていた程度です」
「とても、とても!優秀な方だとは、聞いていますよ」
緒乃葉の背から、闇のオーラを感じた悠は、少し離れて歩く。
「連れて来るって事は、これから一緒に、事務所で働くってことじゃ…」
前を歩く緒乃葉が、足を止める。
「これ以上、人を雇うお金なんて、事務所には無いですよ」
願望を含んだ笑顔で振り返り、悠に返事を要求する、緒乃葉。
「そ、そうですよね~」
悠は、目を合わせないよう、上を見ながら、緒乃葉を追い越した。
追い越した悠の肩に、緒乃葉の手が食い込む。
「後ろですよ…」
「はい…」
無事、暴力を振るわれることなく、神社に着いた、悠。
「ここ…だよね」
低い石段から、立派な赤い鳥居を見上げる。
石段の先には、年季の入った拝殿が、聳え立っていた。
「…行きますよ」
石段を上った緒乃葉は、社務所を訪ねる。
「失礼。高見探偵事務所の者ですが、矢真白 百は、ご在宅ですか」
社務所の奥から、白髪の小さなお爺さんが出て来た。
「お~これは、これは、高見事務所の方でしたか…」
「百は、現在、長期の旅に出掛けておりますよ」
「旅!連れ帰る以前に、居ないのかよ~」
「どうします?」
悠の問いかけに答えず、ずっとお爺さんを見つめる、緒乃葉。
「・・・いつ、お帰りになりますかね?」
「さぁ~いつでしょうね~数ヶ月は、帰って来ないかと」
「数ヶ月か~事務所に帰って、高見に報告しましょう」
「馬鹿目!死にたいのですか、貴方は?」
「あ。高見さん!社長?ボス?でしたかね」
冷や汗が溢れ出し、目を泳がせる、悠。
「”ボス”は、馬鹿が勝手に呼んでいるだけですよ」
「へ、へぇ~そうだったんだ~」
緒乃葉を怒らせた悠は、こっそり帰ろうとしていた。
「矢真白 百が、目の前に居ますのに、帰るつもりですか」
「え?」
「このお爺さんが、矢真白 百ですよ」
「そんなわけ…」
「ふふふ。百の変装を見破るとは、中々やりますね」
変装を脱ぎ捨て、一人の少女が現れる。
「私こそが、稀代の天才、矢真白 百だぞ!」
「おお」
机に乗り自己紹介をする百に、拍手で応えた、悠。
「貴方を事務所に案内するよう、社長から頼まれております」
緒乃葉は、百の腕を掴む。
「では、参りましょうか」
「いや!」
緒乃葉の手を振り払う。
「百は、行きたくない…」
「どうして?」
「だってあなた達、”人殺し”でしょ?」




