№_15_ふりがな版
握髪吐哺
辺りが暗くなった頃~
報告書を書き終えた悠を、警察署から追い出した、緋色。
可哀想に思った雪が、緋色を説得し、
悠を、事務所の近くまで送ることとなった。
「わざわざ、送ってやったんだ。感謝しろ」
「ありがとうございます、雪さん」
「貴様…喧嘩を売っているのか?」
拳を握り、怒りを抑える緋色を、軽くなだめる、雪。
「はいはい。悠くんも、気を付けて下さいね」
「最近、この辺りで”通り魔が”出るそうですから」
「はあ?分かりました」
通り魔を理解していない悠は、雪の方向に手を振り、逃げる様に道を曲がった。
「流石に、追っては来ないよな…」
後ろを気にしながら歩く、悠。
ゴツン。
後ろを見ていた悠は、前から来た硬い何かと、頭をぶつけた。
「痛たたた。ごめん、前見てなかったんだ」
「…危ないですよ。前見て歩かないと!」
相手も見ていなかった事をいい事に、ぶつかった事を、相手のせいにする、悠。
「気を付けて下さい。最近、通り魔が出るらしいですから」
「へ~通り魔が…どんな通り魔なの?」
「どんな?あ~道の真ん中で、待ち構えている人物とか?」
通り魔が分からない悠は、言葉から想像した事を、適当に答えた。
「ぷっははは。そっか、気を付けるよ。情報を貰ったお礼に、これをあげるね」
昔懐かしい駄菓子を、手渡される。
「ありがとう」
「じゃあね。悠くん」
悠とぶつかった人物は、笑いながら、街の方へと消えて行った。
「…通り魔って、何?」
無事?事務所へと着いた悠は、階段を昇り、事務所の扉を開いた。
「ただいま、戻り・・・」
悠の視界には、正座をする脚に、石を乗せた楓と、
石に足を置き、圧力を掛ける人物が写る。
「・・・誰?」
「お帰りなさい。疑問に答えてあげるから、ここに座ってくれます?」
「いえ、結構です」
「いいから、座りなさい!」
「…剛」
「なんだ?」
ソファーで横になった剛が、返事をする。
「代わりに、座ってよ」
「残念ながら、俺は罰を受けた後だ!」
赤く腫れた脚を、高らかに上げ、悠に見せつけた。
「こいつが、代わりに受けます」
「いいでしょう。連れて来て」
「二回目は、おかしいだろ!もっと、自分の守護霊を労われ!」
剛の腕を引っ張り、引きずり動かす、悠。
「何回うけても、霊力で回復できるんだから、大丈夫だよ」
「麻痺した霊の脚でも、痛みは感じるんだよ!」
「あ~悠くんには、罰を与えなくていいですよ」
事務所の奥から、寝不足の高見が出てくる。
「建物を壊したのは、楓だけですから」
「社長。悪い記憶を刻みこまないと、また、同じ過ちを繰り返しますよ?」
「楓が、ミス無く仕事を完遂したことなど、無いでしょ?」
「ええ。馬鹿は、何をしても治りませんから」
「緒乃葉。馬鹿にしても良いけど、直接的なのは、駄目だよ」
「どちらも、良くはねえだろ…」
小さな声で呟いた剛を、横目で睨む、緒乃葉。
「まあまあ、喧嘩はその辺で。仕事を頼みたいんですが…」
「社長!私が行きます」
「悠くん。お願いします」
緒乃葉は、高見に指名された悠に、威圧を掛ける。
「”一人で”ですか?」
「不安ですか…でしたら、緒乃葉が、付き添ってください」
高見に名前を呼ばれ、喜ぶ、緒乃葉。
「あ、ちなみに、仕事内容は、百さんを、事務所に連れて来ることですので」
「え!」
「誰ですか。百さんって?」
「悠くんよりも優秀な、祓い屋志望の巫女さんですよ」
「へ~!」
緒乃葉の視線から、殺気を感じ、悠は、顔を背けた。




