№_12_ふりがな版
悪逆無道
外へ逃げた化物を、追いかけている、楓と悠。
「化物に追いついても、お札が無いと祓えないよね?」
「う~ん。この霊を祓えば、化物になった人間は、元に戻るけど…」
「一度、事務所に帰ろうよ!それしかないよ」
「でも、捕りつかれた人間は、守護霊が離れすぎると死ぬし…」
「・・・じゃあ、殺そう」
足を止める、悠。
「あの化物が人を襲うよりも、一人死んで、大勢の人を助けたほうが良いよ!」
「僕も、そう思う。だけど…だけどね…」
「ボスに、凄く怒られるんだよ…」
「・・・は」
「悪餓になって死んだ証拠が無いと、殺人の容疑が掛けられて、
”逮捕”される可能性があるんだよ」
「逮捕!警察は、祓い屋の仕事に協力的なんじゃ?」
「勿論、こちらに非が無ければ、逮捕はされないよ。
ただ…”罰金”を取られるんだよね」
「・・・それは、まずい」
止まっていた足を急いで動かし、見失った化物を追いかける。
「まずい…まずい…まずい!
これ以上、借金が発生したら、一生、ここで働くことになる」
「良いじゃん。別に?」
「楓は、良いよね。守護霊が強いから!」
「そういえば…悠の守護霊は?」
再び、足を止める二人。
「守護霊が離れると・・・」
「死んじゃうね」
その頃~
悠と一緒に、隣の部屋へ入らなかった剛は、
来た道を戻り、事務所へと帰っていた。
「あれは、完全に悪餓になる前段階だったな。危なかった~」
「何の能力も無い俺が、あの場に居ても、サンドバッグになるのがオチだぜ」
「悠を置いて来たが…まぁ、楓の守護霊なら、余裕で倒せるだろ」
ゴソ。
足元に落ちていた袋を拾う。
「うん?何だこれ」
袋を開けて、中を見ると、見覚えのある札が入っていた。
「悠のやつ、落としたな?まあ、楓も持ってるだろ」
再び歩き出した道の先に、見覚えのある札が落ちている。
「・・・あいつら、札が無くて、祓えて無いんじゃ」
「ぎゃぎゃぎゃきゃ」
背後から聞こえた不気味な笑い声に、躊躇しながら、剛は、後ろを振り向いた。
「・・・やっぱり」
そこには、人目を気にしながら道路を横断する、化物の姿があった。
手に持ったお札を、じっと見つめる、剛。
「やってみるか…」
札を一枚、壁に貼る。
「結界!」
期待通りとはならず、何も起きない。しかし、
「・・・なんてな、痛!あれ?出来てたのか」
剛は、顔面を強打した痛みで、透明な結界が張られていることに気がついた。
「実体を持つ能力。
普通の霊には、出来ないことが、出来るようになるのか…結構、良い能力じゃん」
自分の能力に浸っている剛の背後に、ゆっくりと近づいて来る影。
「もしかして、あれも…うん?」
振り返った剛のお腹を、化物の腕が貫いた。




