№_04_ふりがな版
愛多憎生
「で、策はあんのか」
「ない」
「はあ!」
「バカだから、考えられないの!知ってるでしょ。おっさんが考えてよ」
「なっ」
「来るよ。避けてください」
化物は、片手で瓦礫を握り投げた。
ヒュー、ドン。パラ、パラ
天井にぶつかり、散乱した瓦礫が、降り注ぐ。
避ける悠の左肩に、瓦礫の一部が、被弾する。
「くっ」
土埃が舞い、視界を失う、化物。
「一先ず、あっちの壁に隠れるぞ」
埃が晴れ、化物は、きょろきょろと、消えた悠を捜す。
「あんなのに、どうやって札を貼れって、言うんだよ…」
「なあ。おっさんも、火吹いたりとか、できないの?」
「・・・できない」
「役立たず!」
「俺には、名前が無いんだよ!」
「名前?」
「人間が、名前をつけることで、守護霊は、本来の力を発揮できる」
「名前…馬鹿?おっさん?」
「やめろ!そんな適当な名前をつけるな」
「いいか!名前をつけるってことは、契りを結ぶってことだ」
「結ぶ?」
「捕り付いた人間が死んだら、守護霊は、ただの幽霊になる」
「しかし、契りを結んだ守護霊は、人間と共に消えてしまう」
「…俺の一生を賭ける価値が”お前にある”と言えるか?」
「・・・ない」
化物は、闇雲に、瓦礫を投げ始めた。
「なぜ、窃盗を繰り返した?」
「盗むつもりじゃ、なかったよ。お金が無いタイミングだった…だけ」
「なぜ、我慢しない?」
「それは…欲しかった。から」
「なぜ、欲する」
「わからない…」
「お前は、化物と対して変わらない、価値の無い人間だ」
「そんな奴を、助けたいと思うか」
「…思わない」
「でも・・・助けたい」
「なぜ、助ける?」
「生きて欲しいから!」
悠に、背を向ける。
「・・・悠。俺に名前をつけてみろ」
「!、わかった。名前は・・・」
「剛」
光で満ち溢れる、剛。
「ファイアー!」
スカッ...
「あれ?」
「ウォーター。風。土。光、闇」
・・・・・・
「うわぁーーー」
突進する化物。
「うわぁー!」
「逃げろ。悠!」
剛の腕が、悠を、突き飛ばす。
「えっ」
「えっ」
グシャ。ドンッ!
「おっさ~ん!」
”守護霊”の剛は、化物のタックルで、壁に吹き飛んだ。
「おやおや、これは…」
「ごほっ名前がついて、ごほっ実態を持ったのか。ごほっ退化してるだろ」
戸惑う化物。
「君。化物に守護霊は見えていないんです。今のうちに、お札を」
「あ、はい」
ペタ。
混乱した化物の隙を衝き、札を貼る、悠。
「離れていてください」
上階から降りてきた高見は、手をかざし、言霊を唱えはじめる。
「・・・滅!」
「ぐあぁーーああ~~」
苦しみだす化物。
「お、おい」
「大丈夫だよ。体が、元に戻る反動を受けているだけですから」
粉々になり、天に昇って行く、悪餓の守護霊。
ドサ。
人間に戻った春華が、倒れた。
「生きてる…の?」
「はい。心停止していますが、専門の治療を受ければ、息を吹き返します」
「心停止!」
「今は、これよりも…」
「お~い。助けてくれ、ごほっ」
「血を吐いてる!どうしよう」
「困ったな~。実態を持つ守護霊なんて、聞いたことありませんよ」
「治せるの?」
「…どうかな」
「そんな…」
「随分と、派手にやってくれたな、高見!」




