不吉な作家
ある作家がいた。
書いた小説は読むと幸せになれると言われ、新刊が出れば本屋に行列ができるベストセラー作家である。
出版社側も作家を大切に扱った。
しかし、問題があった。
それは担当についた編集が次々辞めていくのである。
理由を聞くと作家の担当についた日から不幸な目に遭うという。
傘を持っていない時に雨が降る、風邪をひく、転んで怪我をする、鍵をなくす、大事な書類を家に忘れる等最初は大したことがなかった。
ただ、月日が経つにつれひどくなっていった。
事故に遭い骨折した人もいれば、家族全員が病気になった人もいる。
こうしたことが続くと、みんなが作家を恐れ誰も担当になりたがらない。
そんな時先週入ってきたばかりの新人が自ら名乗り出た。
彼は作家の大ファンで誰もやらないならやりたいと言う。
周りの人間は不安だったがやらせることにした。
ところが半年経っても彼は元気であった。
様子を聞いても「大丈夫です」と答える。
不幸なことがあったかと聞くと「ありません。毎日幸せです」と笑顔で答えた。
また、半年経っても彼は元気であった。
不思議がった編集長が、何か特別なことでもやっているのかと聞いた。
彼は、「先生の本を毎日読んでいます」と答えた。