プロローグ
「これから皆さんにはゲームをしてもらいます」
――何もない空間に、無機質な声が響く。
「皆さんは乙女ゲームの世界に転生し、それぞれの人生を歩んでもらいます。質問はありますか」
クリアすべきミッションは?
「ミッションは『幸せになること』です」
『幸せ』とは?
「割り当てられたキャラクターによって異なります」
割り当てられるキャラクターとは?
「乙女ゲームに登場する人物です。どのキャラクターが割り当てられるかはランダムです」
プレーヤーは何人いるのか?
「男女3人ずつとなります。誰がプレーヤーであるかはシークレットです」
ゲームスタートは同時か?
「キャラクターによって異なります。スタート時点で他のプレーヤーが既にシナリオを進めている可能性もゼロではありません」
ゲームスタート以前のキャラクターの挙動は?
「NPCと同様の扱いになります」
NPCの挙動はあらかじめ決まっている?
「自律的に挙動します。あなたのコミュニケーションに影響されて思考および言動を変えることも当然あります」
魔法はある?
「ありません。魔物も存在しません。戦闘は対人のみです」
身分差は厳格であるか?
「いわゆる乙女ゲーム準拠と考えていただければ。当人同士の強い思いがあれば、下位貴族と王族の婚姻も不可能ではありません」
平民とは不可能であると?
「…今回の割り当てシナリオにおいては考えなくてよいものとしてください」
プレーヤー同士での協力は可能か?
「ノーコメントとします」
シナリオエンドは?
「最後のプレーヤーが死んだ時点をもって終了し、ミッションの達成度にて勝敗を決定します」
達成度の詳細は?
「ノーコメントです。そろそろよろしいでしょうか?」
注意事項などないか?
「ランダムで1名限定の『主人公ボーナス』が付与されます。運がすごくよくなる効果があります」
ゲーム開始以降、運営と連絡を取ることは可能か?
「一切不可とします。それではゲームを開始いたします」
――暗転。