表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そうだよね

作者: 奈月ねこ

ひだまり童話館 第29回企画「ぬくぬくな話」参加作品です。

 雪が降って寒い冬がやって来ました。熊は穴の中で、冬眠していました。そんな中、子供が産まれました。熊のお母さんは子供たちの世話で大変。子供たちは口々に、お母さんの名前を呼んでは眠る。それを繰り返していました。

 お母さん熊の子供は二匹。どちらも男の子でした。お母さんはお兄ちゃんに一郎、二番目の子供に次郎と名付けました。一郎はおっとりとしていましたが、次郎はやんちゃでした。

 お母さんが寝ている時、次郎はそっと穴の外へ出てみました。すると、そこは真っ白な世界。見たことのない光景に、次郎は驚き、歩き出しました。きゅっきゅっと自分の足音がしました。真っ白い光景は雪です。次郎は珍しくてはしゃぎ回りました。

「わあ、すごい真っ白だ!」

 次郎はすっかり雪がお気に入り。そのまま雪で遊んでいましたが、いつの間にか、自分がどこまでやって来たかわからなくなってしまいました。そして、だんだんと寒くなってきました。

「お母さん、寒いよう」

 次郎はお母さんを呼びますが、次郎はお母さんのいる穴から遠くまで来てしまっていたのです。戻ろうにも雪が降ってきて足跡を消してしまっていました。

 次郎は泣きながらお母さんのいる穴を探しました。

「お母さん……」

 次郎が泣いていると、声をかけられました。

「君、どうしたの?」

 次郎はその声に振り返りました。するとそこには見たこともない生き物がいました。

「君は誰?」

「ぼくはシマリスだよ」

「シマリス?」

 次郎はシマリスを知りません。穴の中で産まれて、初めての外なのですから。

「ぼく、お母さんのところへ帰りたい」

 次郎は言いました。

「迷ったの?」

 とシマリスは言いました。

「うん。お母さんのいるところがわからない。それに寒いよう」

 次郎は泣き出してしまいました。

「お母さんがどこにいるかわからないけど、寒いならこっちへおいでよ」

 シマリスに言われて、次郎は着いていきました。すると、白いもやのようなものが見えます。そこは温泉でした。シマリスは温泉に入っていきました。

「こっちへおいでよ」

 シマリスに言われて次郎は温泉へ入っていきました。

「あったかい!」

 次郎は喜びました。

「ありがとう。ぼくは熊の次郎」

「きみも次郎? ぼくも次郎って言うんだ。お兄ちゃんがいるんだよ」

 シマリスは言いました。

「ぼくもお兄ちゃんがいるんだ! 同じ名前なんだね!」

 二人の次郎は、温泉でぬくぬくとしていました。そして、シマリスの次郎は帰ろうとしました。

「ぼくは帰るよ」

 シマリスの次郎は言いました。慌てたのは熊の次郎。

「待って! ぼく一人でどうしたらいいかわからないよ」

 シマリスは困ってしまいました。シマリスの次郎は温泉に来ただけで、また冬眠するのに巣穴へ帰ろうとしたのです。でもこの熊の次郎を置いていくことは出来ませんでした。

「じゃあ、もう少しだけ温泉にいるよ」

 シマリスの次郎の答えに熊の次郎は喜びました。そんな時です。

「次郎!」

 熊のお母さんが次郎を迎えにやって来ました。

「お母さん!」

「まったく、こんなところまで来て。心配するでしょ。さあ、帰るわよ」

「うん!」

 熊のお母さんが迎えに来て、シマリスの次郎も喜びました。

「良かったね」と、シマリスの次郎。

「ありがとう」と、熊の次郎。

 二人はあいさつをして、それぞれの家へ帰りました。

 熊の次郎はお母さんに、温泉でぬくぬくしたんだよ、と伝えました。

「でも、お母さんのそばが一番ぬくぬくしてる」

 次郎はそう言うと、お母さんの横で眠りについたのでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 企画から参りました。 シマリスの次郎は思いやりがあって、やさしいですね。 熊の次郎が無事に帰ることができて、よかったです。 やっぱりお母さんのそばが一番なんでしょうけど、今日の冒険と温泉の…
[良い点] まさかの次郎被りでしたね。 動物の世界にも、区別のために名字が必要なのかもしれません。 シマリスが入る温泉、想像すると可愛いですね。 湯船は5センチくらい? それを想像した私の気持ちがぬ…
[良い点] ぬくぬくほかほかのお話で、温泉に行きたくなりました。 シマリスくんとの出会いにはちょっとハラハラしてしまいましたが、そういう展開じゃなくてよかったです(そりゃそうだ) そのうち熊さん一家で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ