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83 星に願いを込めて

 公爵邸では、今日も朝から侍女達が、忙しく足早に廊下を行き来していた。


 年明け早々に行われる「結婚式」の準備に追われる毎日に重ね、今日は「クリスマス・パーティー」が開催されるのだ。


 今年はお世話になった方々を出来るだけ多くお呼びすることにした。


 その為、準備は大忙しだったが、なんとかこの日を迎えることが出来て良かった。


「メリークリスマス」

「今年の飾り付けも立派だねぇ」

「本日はご招待いただきまことに……」


 招待客が続々と来られる。


 皆一様に、エントランスホールの巨大ツリーを見て、感嘆の声を漏らしている。


「綺麗ねぇ」 

「夢のようねぇ」




「よう! この間はありがとうな!」

 シュゼル様と、バーバラさん、リチャードさんに、シドさんだ。


「なんだよ…… その目は」


「いえ…」


 そう! 驚いたのは、いつもボサボサ髪で、髭もまだらな無精髭でヨレヨレの白衣姿のシュゼル様が

 今日は! 黒の上下のスーツ姿だ! 

 髪は後ろで束ねられていて、綺麗に髭も剃られている。

 こうして見ると国王陛下に似ていらっしゃるかも? と改めて思った。


「シュゼル様、素敵ですわ」


「俺を褒めても、なんもでねーぞ」

 照れくさそうに言う姿に、バーバラさん達も笑っている。


「おめーら、覚えとけよ! 後で!」


 笑いながら揶揄う、元職場の仲間達をホールの中へ案内する。


 お父様がシュゼル様に挨拶をしようと、近づいて行くと、シュゼル様が手で払うジェスチャーをし、

「いらんいらん」「堅苦しいのはなしだ」と豪快に笑っていた。



 その後、第一騎士団の騎士様達もいらして、ホールは賑やかになった。

 招待客のほとんどがホールに入ったところで、殿下とお父様が来られ、私の手を取る。

 お父様から、改めて結婚の報告をすると、会場のみんなから大きな拍手と歓声が沸いた。


「エレナ。ありがとう。全て君のおかげだ」

 殿下は優しく私の手にキスをした。



 その後「シャンパンタワー」に、殿下の号令でシャンパンが注がれる。


 みんなの拍手が一段と大きくなり

「メリークリスマス!」と乾杯をする。


 グラスの中で金色に輝くシャンパンを見ていると、胸がいっぱいになった。


 こんな日を再び迎えることができるなんて……

 あの時は、思いもしなかった……


 殿下が事故に遭われたと聞いた時は、心臓が止まるかと思った。

 意識を失い眠り続ける殿下のお姿を見た時……



 良かった。


 そう思った時、頬に小さな雫が伝ってきた。

 殿下がそっと、それを指で拭ってくれた。


「エレナ。もう二度と君を一人にしないよ」

 優しく、しかし、力強い眼差しで私を見つめ、頬にキスをした。



 その後、殿下とバルコニーに向かった。


 二人で夜空を見上げると、綺麗な星空だった。

 あの日見た星空と同じ、今にも降って来そうなぐらいの満天の星。


 薬指にはめてある、ブルーサファイアの指輪を見る。

 ここで殿下が……



「あの時は、実は僕もドキドキしていたんだよ。それをエレナに悟られるのが恥ずかしくて、平気な振りをして格好つけていただけなんだ」





 え?



 今なんて?



 今なんておっしゃった?



────



「殿下?」


「今なんておっしゃいました?」



「え? だから、あの時は僕も恥ずかしく……!」


「殿下!」


「エレナ!」


 二人は思わず抱き合った。



「思い出されたのですね?」


「ああ、思い出したよ!」


「去年のクリスマスの、ちょうどここで、僕はエレナに!」


「殿下!」


「待たせたね。エレナ!」


 殿下が私を抱き寄せ、去年と同じキスをする。


 温かな殿下の体温を感じつつ、その愛おしさで、いっぱいになった。


「メリークリスマス カイン様」


「メリークリスマス エレナ」

 そして、殿下は私を横抱きに抱き上げ、そのままホールへと向かって歩き出した。


 あの夜と同じ、柔らかなシトラスの匂いがした。


 そして、あの夜と同じ、料理が並ぶテーブルの前に連れて行かれた。


 ()()()()のように皿を手にし、綺麗に盛り付ける殿下は、私にそれを渡し、イチゴを手にとり、キラキラした笑顔で待つ。

 少し恥ずかしそうに口を開けると「ハイ」と私の口にイチゴを押し入れた。

 そして、直ぐに「ハイ」っと満面の笑みでご自分の口を()()()()のように開ける。

 全てが懐かしく、そして今はその姿が愛おしく感じる。


 ゆっくりと、殿下の口の前に手にしたイチゴを近づける。

 あと一歩のところで、すっと、自分の口に「パクリ」


「え?」

 恨めしそうな目で私を見る殿下に


「長い間、わたくしのことを、お忘れになった罰です」上目遣いに言うと

「こんな可愛い罰ならいくらでも受けるよ」笑顔で言われた。


「では、長い間待たせたお詫びに、もう一つどうぞ」

 と、手にイチゴを取り、私の前に差し出す。


「あら? 安いお詫びですね?」と、私が言うと

「では、10個でも20個でもご用意しましょう」

 満面の笑みで言われる。

「そんなに食べたら、お腹がいっぱいになりますわ」

「そうかい? お腹の虫の心配は今日は要らないようだね?」


「もう! 殿下ったら!」

「ハッ、ハッ、ハッ」

 大笑いする殿下に、私は頬を膨らませて怒った。




 そんな、長年連れ添った夫婦のような仲睦まじい二人の姿に、招待客みんな、喜びと祝福、安堵の表情で見守っていた。

















「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

続きが少しでも気になると思っていただけましたら、下にある✩✩✩✩✩から作品への応援と、ブックマークをして頂けると、作者は泣いて喜びます。是非よろしくお願いします。


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