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80 復活

 カン、カン、カキンッ、第一騎士団の練習場には、鋭く剣の交わる音が鳴り響いていた。


「参りました」


 両手を挙げ敗北を口にした騎士は、王太子殿下の右腕「ゴールデン・イーグル」の隊長ヘンリーだった。


 すっーと、彼の首元にあてた木剣の剣先を引く彼の名は、

 この国の時期国王陛下 カイン・ステファノ・グレンシード そう王太子殿下だ。


「いやぁ、まさかここまで回復されるとは思って見なかったですね」

「まだ、私の方が上だと、ちょっと慢心しておりました」

「お見事でございました」

 感心し負けながらも、嬉しそうな顔をして騎士の礼をとるヘンリーに


「おいおい。まだ万全でない俺に、この失態はどういうことだね? ヘンリー卿?」

 低く鋭い声で言う。


「第一騎士団の剣と言われた男が、病み上がりの人間に一本取られるとは、この国の防衛が心配になるね」

「こんなことでは()()()を、第一騎士団の修練にもお呼びせねばならないかな?」


 その声と顔は、まさに「この国の叡智」と呼ばれ戦場では「氷の微笑」と呼ばれ敵からも恐れられていた、かつての主君、王太子殿下の顔であった。



「は!」「誠に申し訳なく存じます!」

「日々の修練を今一度初心に返り行います」

「二度とこのような失態をお見せすることないよう精進いたします!」


「殿下!」

 ヘンリーは涙を流し、幼馴染とも言える主君に抱きつく。


「心配かけたね。ヘンリー」

 その親友とも言える彼の肩を抱き、二人でしっかり握手をする。


 この国の最高の剣士二人が抱き合う姿を、第一騎士団の騎士達は見ながら、みんな泣いていた。


「良かった」「本当に良かった」「これで、もうこの国は安心だ」


 口々に安堵の声を漏らす。

 みんな嬉しそうにして抱き合っていた。


 真っ青な空は高く、鳶の鳴き声が聞こえていた。

 季節は秋の訪れを告げており、爽やかな風が練習場の木の葉を揺らしていた。



「殿下。全てはエレナ様のおかげでこざいます」

「意識のなかった殿下に毎日ずっと付き添い、そしてここまでの厳しい訓練にずっとお側で寄り添い、付き合い支えてこられた」

「素晴らしい伴侶を得られましたね」



「あぁ。そうだね……」

「記憶の戻らない私にずっと、泣き言を一切言わず、それどころか、何度も心が折れそうになった俺に叱咤激励し続けてくれた……本当に俺には勿体無い女性だよ」


「今度は、俺がその思いに応える番だ!」


「ヘンリー公爵家に使いを!」


「はっ!」





 その頃、公爵邸では


「お嬢様、そろそろティータイムにしませんか?」


「そうねぇ」

「ではお願いするわ」


「かしこまりました」足取り軽く部屋を出るルーシーに

 笑いながら、左手の薬指に輝くサファイヤブルーの指輪を眺める。



「もう直ぐ2年かぁ……」

 小さな声で呟く。



 ドアをノックする音がする。

「お嬢様、先程お城より使いの騎士様が来られて」


 セバスの声だ。


 入室の許可をすると、セバスから手紙を渡された。


「明日、あなたにお見せしたいところがある。ご一緒いただきたい……」

 殿下の直筆のサインがしてあった。


 何かしら?

 修練のことかしら??


「お嬢様、了承のお返事をお伝えしましたよ」


 え?


 まあいいか。


「わかりました」



 何のことか少し気になったが、まあ行けば分かることだわ。

 と、思いルーシーが持って来たおやつを堪能した。


 最近忙しくて、なかなか手を出せなかったけど、この()()()のおやつ事情もなんとかしないとねぇ…


 普段と変わらぬエレナだった。


「今日は、お城にはいらっしゃらないのですか?」

 ルーシーの問に


「今日は、騎士団の方と剣の修練をなさるそうなの」


「それは凄いですねぇ」目を細めながらルーシーが嬉しそうに言う。


「うん。だから今日は私はお役ごめんなの」


 騎士の剣技の修練には基本的には女性は当然、部外者の見学は認められていない。

 剣が誤って飛んだりと危険が伴うからだ。




 殿下が床に伏せってから、殆ど毎日のように城にお見舞いに行き、リハビリに付き添い、最近では騎士への復活の為の修練にも付き添っていたエレナにとっては久しぶりの穏やかに過ごす一日だった。


 そんな彼女の穏やかは表情を見て、公爵家の人々は嬉しそうにしていた。



「良うございましたね」

「ご辛抱された甲斐がございましたね」

 目を細めながら涙を流す老紳士の姿があった。













「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

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