表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/84

73 救出

 嗚呼! なんてことに!

 急ぎ崖下に飛び降りようとした瞬間


「馬鹿野郎!」

 大声で、背中を掴まれ殴られた。


「俺のせいで……」

 ルドルフは震えながら嗚咽している。


「落ち着け!」

「今お前が飛び込んでも二次災害を招くだけだ!」


「今、ロープと命綱の用意をしている!」

「それまで待つんだ!」


 第一騎士団の少佐や、少尉達にルドルフは止められた。



 俺のせいだ。俺があの時、兄上の制止の声を聞かず深入りしたせいで……

 子猫を助けようとしたばかりに……

 兄上にもしものことがあったら……

 ()()になんてお詫びをしたらいいのか……

 俺が……無茶をしたばかりに……


 泣き崩れるルドルフの側で子猫がルドルフの足元を舐めていた。



「立て! 殿下をお助けするぞ!」


「急げ!」


 少佐の怒鳴り声を聞き、ハッと我に戻り少佐の後を追い走る。


「ロープを伝い崖を下る! 命綱は絶対に離すなよ!」


「降りても、気を抜くな!」


「いつ、また土砂崩れが起きても不思議ではない!」

「気をつけて決行するよう!」


「松明をもっと用意しろ!」


 副官のペルジーニが激を飛ばす。


「殿下をなんとしても、お助けするぞ!」

「殿下は絶対にご無事だ!」

「皆、気をつけていけ!」


 一人ずつロープを伝い、崖を下っていく。


「殿下をお探ししろ!」

「松明を照らせ!」


 次々と、崖下に到着した騎士たちの声が響き渡る。


 騎士たちの懸命な捜索が続く。


「殿下ーーーー」


「殿下ーーーーどちらに?」


 悲痛とも言える叫び声が、こだまする。


 木々を剣でなぎ倒し、道なき道を進んで行く。

 崖下は幸いにも地盤沈下が進んでおらず、先程崩れた土砂を取り除いた今は、比較的地割れの心配はなそうだった。


 激しい雨が騎士たちの体温を下げて行く。


「急ぎ殿下をお探しするんだ!」




「副長! こちらに!」

「殿下を見つけました!」


 一人の若い騎士の声がする。


 駆け寄り無事を確認する。

「生きておられる!」


 心臓の鼓動を確かめた副官のペルジーニは安堵の顔を浮かべた。


 手を握り、声を掛けるが返答はない。

「殿下! 殿下!」

「わかりますか? わたくしが!」


 大声で、声を何度も掛けるが返答がない。


 心臓の鼓動は規則的で、脈拍も異常ない。雨に長時間打たれたせいか、体温は低下していたが、命に別状は無さそうだ。


「このまま殿下を上へお運びするぞ!」


 副官のペルジーニの声で、殿下を背負い崖を順に登って行く騎士達。


 上まであがると、補給物資を届けに来ていた第二騎士団と、ヘンリーが上で待機していた。



「殿下はご無事か?」

 ヘンリーの悲痛な叫びが響く。


「は!」


「バイタルには問題ございませんが、意識が戻られない様子でございます」

「外傷はありません」


 第一騎士団副隊長ペルジーニが、しっかりとした口調で答える。



 ルドルフがヘンリーに歩み寄る


「俺のせいで……殿下が……」


 パシン! 頬を叩く音がした。


「今はそんなことはどうでもいい!」

「殿下を早急に、城へお連れし医師に診せるのが先決だ!」

「お前如きの後悔の与太話など、何の役にも立たん!」


 強く吐き捨てて、ヘンリーは走り去って行き、近くに用意していた馬に駆け乗った。


 その背中には殿下を背負っていた。


「城に戻るぞ! 着いてこい!」


 ヘンリーの力強い声が聞こえた時には、すでに彼の姿は小さくなりつつあった。



 




───物々しく王宮内の廊下を走る騎士達。

 王太子殿下の部屋の前には、すでに数名の女官が待機し、医師の姿もあった。


 急ぎ部屋のベッドに殿下をおろす。

 その間、何度も声かけするが、返答はない。


 直ぐに医師の診察が行われた。


「お身体の方は特に問題は御座いません。長雨のせいで多少お身体が冷え、体力が消耗されてはいるようですが、時期に回復するでしょう。少し今は熱もあるようで御座いますが、こちらも次第に下がるはずで御座います」


「ショックで意識が今は御座いませんが、時期に目覚めるものと思われます」


 その言葉にヘンリーをはじめとした騎士達や女官たち、この部屋に居た者全てが安堵した。


「目覚められたら、このお薬を」医師が薬を女官に手渡した。



 ヘンリーが付き添い、他の者は部屋を出た。


「殿下。よくぞご無事で……」

 ヘンリーは主君の手を握る。


 その手は温かく、体温が上昇して来ていることが感じられた。


 張り詰めていた空気が緩み、気づけば頬から、一筋の雫が落ちていた。


「良かった…」


 

 その後、公爵家には殿下のことを伝えるために、騎士が訪れていた。



 知らせを聞いた、エレナとエレナの両親は驚愕し、エレナと母親のクリスティーナは泣き崩れた。


 殿下の容態を心配したが、命に別状はないと聞き、少し落ち着いた様子だった。


 今日はもう遅い時間だった為、翌朝お見舞いに城に上がることを騎士に伝えて貰うようお願いした。




「お父様…大丈夫でしょうか?」

「エレナ、心配はいらないよ」

「騎士様も話していた通り、命に別状はないとのことだし」


「今は、体力が消耗されており、意識が戻ってないだけだ。時期に直ぐ目を、お覚ましになるよ」

「安心しなさい」


 父のアルデが優しく私の頭を撫でた。


 お母様にも優しく抱きしめられ、頭を撫でられた。


 不安で押しつぶされそうになった私は、少し安心することができた。


 二人に付き添われ自室に戻り、殿下の身体を心配しながらも、ベッドに入りゆっくり目を閉じ、朝を待った。















「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

続きが少しでも気になると思っていただけましたら、下にある✩✩✩✩✩から作品への応援と、ブックマークをして頂けると、作者は泣いて喜びます。是非よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ