72 氾濫
※災害に関する場面が出ます。苦手な方は予めご注意下さい。
物語りの展開上、気になる方は後半部分からお読み下さい。
ダラスが、殿下や騎士様達にと「差し入れ用のカレー」を用意してくれて、お城にお届けするよう手配してくれた。
「悪天候続く中、少しでも気分が晴れていただけたら」
───そんな中王宮では
息を切らせながら王太子殿下の執務室のドアを叩く男がいた。
「申し上げます!」
「何事だ? ルドルフ!」
怪訝そうな顔を浮かべるヘンリー様の声が響く。
「申し訳御座いません。緊急事態でございまして、ご無礼を承知で」
礼をとろうとした時
「よい! 申せ! 何事だ!」
低く、はっきりした声で殿下が言う。
「長雨で、東部のテール川が氾濫し、そのせいで橋が陥落し、付近の村が孤立している様子」
「付近の山も土砂崩れがおき、沿道にも土砂が流れ出し、道も分断されていると」
「大規模災害となっている様子」
「先程、近隣より知らせが入りました」
「なんだと? それは誠か?」
「先程、冒険者ギルドでも、冒険者から同じ内容を聞いたと申しております」
「今、詳しい情報を調べさせております」
「東のダズリン男爵にも伝令を飛ばしました」
「ダズリン殿はご無事なのか?」
「今のところダズリン様が、この災害に巻き込まれたと言う話は伺っておりません」
「わかった。先発隊として第一騎士団を現地に派遣する」
「第二騎士団は、補給物資を早急に用意し、現地に入れ」
「第一騎士団は私が指揮を取る。第二騎士団は、ヘンリーお前が指揮を取り、ライデッツ第二騎士団隊長と共に、準備出来次第、早急に向かえ」
「は!」
短くヘンリーは返事をして、足早に部屋を出た。
「ルドルフ、出立の準備を!」
「は!」 直ぐにルドルフも部屋を出た。
「これより東のテール川へ向かう!」
「我に続け!」
「悪天候ゆえ、じゅうぶん注意するよう!」
短く、そして力強く騎士達に激を飛ばし城を駆け出す。
───「殿下……これ以上は危険でございます」
「殿下、これでは前に進むことはできません」
「とりあえず、こちらにて待機を」
騎士達が、口々に言う。
「急ぎ、前の土砂を除去する作業に取り掛かれ!」
「は!」
騎士達は急ぎ走り去る。
騎士達の懸命な作業により土砂が除去され道が開いた。
「よし! 急ぐぞ! だが、いつ土砂崩れが起こるかもしれぬゆえ、じゅうぶん注意して進むように!」
「は!」
騎士達は、狭い山合いの沿道を通り過ぎ、テール側付近に向かった。
「殿下!」
目の前には、川の真ん中で橋が真っ二つに折れ、流されてしまっており、その端側だけが、無残に残っている姿があった。
川の水位は増幅しており道路に川の水が流れ出していた。
泥水で流れも早く、濁流化していた。
降りしきる雨も強くなり、目の前が見えなくなる。
水面は降り続ける激しい雨と、強い風で渦巻いている。
周りの木々もなぎ倒されており、茶色く濁った濁流に、木々や、家屋の残骸、家具やなどが、無残にも流されていた。
目の前の惨劇に息を呑む騎士たち。
「これは……酷い」
思わず口に出る。
「殿下、危険です」「これ以上は!」
「殿下、いつ濁流に飲み込まれるかわかりません! 離れてください」
「殿下! あちらをご覧下さい!」
一人の騎士が叫んだ。
沿道近くの山肌が崩れ去っており、近くの集落の、家屋の倒壊が見えた。
「生存者が居ないか確認するぞ!」
「は!」
「気をつけて進め! 二次災害の危険がある。班ごとに固まり行動するように!」
無事現場に辿りついた、殿下をはじめとする、第一騎士団の面々は、生存者の確認を急いだ。
「誰かいませんかー?」
「聞こえたら返事をしてくださーい」
細心の注意を払いながら、生存者を探す第一騎士団の騎士達。
「少佐! こちらに!」
「もう大丈夫だ! 安心されよ」
倒壊した、家屋の下敷きになっていた人達を見つけ、引っ張り出す騎士達。
その後も、数名の村人が、騎士達の手により救出されたが、残念ながら殆どの人達が帰らぬ人となっていた。
「殿下! これ以上は危険です!」
「ここから先は崖になっており、進めませんし、足場も悪く、いつまた土砂崩れが起きても不思議ではありません!」
「今直ぐ撤退を!」
その時、弱く小さくかすれた声が
「ミヤァー」弱く消え入りそうな声。
ルドルフは咄嗟に声がする方に無意識に足が動いていた。
「やめろ! ルドルフ! 危険だ!」
殿下が止める!
その時、地面が揺れた。
地盤が緩み陥落し始めていた。
「殿下!」
騎士達の叫び声がする。
「ルドルフ!」
陥落し始めた地面に居たルドルフに兄カインは手を伸ばした。
その手を取り、間一髪でルドルフが助けられたと思った瞬間
崖崩れが起き、そこに居たカインがそのまま……
「兄上ーーーーーーー!」
ルドルフがすかさず手を伸ばす。
その手を掴もうとした兄カインだが…………
「兄上ーーーーーーー!」
『殿下ーーー!』
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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