69 婚約
「バーガーショップ」は、瞬く間に人気となり、連日大盛況だ。
そして驚いたことに、ほぼあれから毎日シュゼル様が「ハンバーガー」を買いに来ているらしい。
今では三種類全てを制覇し、おまけにポテトはセットとは別に単品でも追加されていると言う。
トムとフィニーとも話合い、来月からは、「ダブルバーガー」と「ビッグバーガー」を販売する予定だ。
男性客用に、ボリュームアップした物を取り入れる予定にした。
狙い通り「商業ギルド」の職員さんや、「冒険者ギルド」の職員さんの昼食にと、大量のテイクアウトの注文や、「白の騎士団」からも毎日のように来店や、テイクアウトが行われているらしい。
従業員も増やし、安定した供給体制が整っているようだ。流石はトムとフィニーだ。
そんな中、私はと言えば、朝から例の侍女レンジャーに叩き起こされ、もとい、拉致され……
今はマッサージの最中だ。
そう。ついに来てしまいました。
『婚約披露パーティー』の日でございます。
ついに私も王太子殿下の婚約者として、公になるのか……
嬉しいような……その名前と責任の大きさに、不安になると言うか複雑な気分です。
でも、もう、やる! って決めたことだしね。
殿下をお側でお支えする!
って決めたんだし。
自分に言い聞かせ不安な気持ちを押さえ込む。
私のできることを、私なりに頑張ってみようと思う。
準備が整い、王宮からの使いの方と、お父様と一緒に馬車に乗り込む。
いざ! 出陣!
久々の王宮。
やはり覚悟を決めたとしても緊張する……
殿下がいらしたわ。
「エレナ! こんなに美しい姫をみんなに見せるのは忍びないが、今日は君のその美しさの引き立て役となるよ」
「さぁ、お姫様、わたたくしめにお手を」
とろけるような笑顔で私の手をとりエスコートする殿下に、決意を新たにする。
この人の手を取ると私は決めたんだから!
案内人から入場の合図をされ、ドアが開かれる。
一斉に皆の視線がこちらに向かう。
ゆっくりとカーテシーをとり、殿下に微笑んだあと1歩づつ前に。
殿下の力強いエスコートにより、長く赤い絨毯をしっかり踏みしめて前を見る。
「ほう~」「美しいなぁ」「綺麗~」感嘆の声が聞こえたが、
そのうち全ての雑音が消え、
殿下の温もりだけが伝わって来る。
「エレナ、愛している。ありがとう」ニッコリ殿下が微笑み、そっと手にキスを落とす。
その瞬間、歓声が再び湧き、楽団の音楽が鳴り始める。
向かい合い、手を繋ぎ音楽に合わせ舞う。
殿下の方だけを見ながら、この瞬間を一生懸命楽しむように音に合わせる。
優しく、包み込むような殿下の視線に微笑んで応える。
いつもより、2倍増しのキラキラ感だ。
その輝きに引き込まれるように、殿下に委ねる。
「エレナ。本当に綺麗だ」
「幸せにするよ」
今日一番の笑顔で耳元で囁かれた。
なんとかダンスも無事終わり、両陛下への挨拶も終えると緊張が解れたのか?
足の震えが止まらない。
崩れるように席に座りこみ、深く息を吸い込み呼吸を整える。
その間も、殿下はずっと私を気遣ってくださる。
はぁあ……なんとか大役を果たせたわ。
安堵して、お父様に視線を移すと、
その目の端が赤くなっていた。
まだまだ、始まったばかり。
これからが出発だわ。
この世界に来た私の本当の意味を見つけるためにも、頑張らないと!
改めて気を引き締めた。
殿下と一緒に、みんなからの挨拶を受ける。
その中に「第一騎士団」を代表してルドルフ様がおられた。
「本日はおめでとうございます。第一騎士団を代表しお慶び申し上げます。今後一層お二人の繁栄を祈り、我々がお二人の盾となり、お守りすることを僭越ながらお誓いします」騎士の挨拶を受けた。
最後に「若輩者ではございますが、よろしくお願い申し上げます。姉上」私たち二人だけにしか聞こえないような小さな声で言われた。
殿下をそっと見ると穏やかな表情をルドルフ様に向けられ「精進するように」と言われた。
そっと、国王陛下に視線を移すとその瞳は滲んでおられた。
良かった。本当に良かったわ。
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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