65 フワフワのパンを食べよう
いよいよ【第四章】突入です。
二人の運命はいかに?
これからも引き続き応援おねがいします。
とある公爵邸の厨房では、朝から賑やかな声が聞こえていた。
「やっぱりこっちかなぁ?」
「そうですねぇ。俺もこっちが良いと思います」
「そうね。じゃあこれに決まりね」
「しかし、これがお嬢様が言ってたフワフワパンですかぁ」
「今までのパンとは全然違う」
「こりゃぁみんなきっとビックリしますよ」
ダラスが絶賛する。
そう! あの日からずっと思ってた念願の、酵母菌を使用したフワフワパンの試作に成功したのだ。
作ろうと思っても、中々忙しく、着手できなかったパン問題が今日解決されたのだ!
本当にダラスは凄いわ。私の拙い説明だけで、完成してしまったんだもの。
顔は怖いけど、流石ダラスだわ。と感心していると、窓の外には人垣が……
パンの焼けたいい匂いに釣られた、ハエもとい、ウチの可愛い侍女達と侍女見習い軍団が
ソワソワして見ていた。
そこに声が。
「あなた達、何をしてるんですか!」「さっさと持ち場に戻りなさい!」
鬼軍曹の声が響きわったった。
「ゴメンよ。レンジャー達。私のせいで……」心の中で謝った。
「ねえダラス。実はもう一つお願いがあるの」
「え? 何ですか?」少し驚いた表情のダラスに、
「このパンを切って、そこにお肉や、野菜やチーズなどを挟んでみたいの」
「ああ、それは良い案ですねぇ。このパンだとパンだけでもとても美味しいですが、中に具材を入れたらもっと美味しくなるでしょうねぇ」
ダラスも快諾してくれた。
そう、私が作りたかったのは「ファーストフードショップ」
「ハンバーガーショップ」だ!
先日の王立研究所での昼食時に、思いついたのだ。
この世界には「レストラン」はあるけれど、何処も気軽に入れるようなお店ではなく「高級店」しかない。
誰でも気軽に入って、楽しめるそんな店を私は作りたい。
家族や、恋人、友達と気軽に利用できる店があれば素敵だと思うわ。
考えただけでワクワクするわ。
きっと、みんな喜ぶはず。
そう、私がこの世界に来たのは、きっとみんなを笑顔にするためなんだわ。
それで良いのよね? と、心の中で神様にたずねた。
私は急ぎ、自室に戻り「計画書」を作成し、お父様の執務室をたずねた。
「エレナ? どうしたんだい?」
「実は、お父様に見て頂きたいものがあって」
お父様も、もう察しが良くなったのか?
「今度は何を始めようとしてるんだい?」と笑いながらおっしゃった。
早速「計画書」を見せると
「良い考えだと思うよ」賛成してくれた。
「ただし、自分で経営することは許可できないよ。それに殿下との『婚約披露パーティー』だって、1ヶ月後だしね」
ハッ! 忘れてた……
「おいおい。まさかとは思うが、忘れてたってことはないよねぇ?」呆れ顔だ。
はぁ…… お父様が深い溜息をついた。
「殿下になんとお詫びしたらいいものか……」
はぁ…… 再び大きな深い溜息が
「申し訳ございません……」
小さな声で呟くと、
「殿下もご苦労がたえんな」と苦笑いしながら、再び溜息をつかれた……
「気をつけます」小さな声で言うと
少し上目つかいに私を見て、
「エレナ、わかっているとは思うけれど、自由にすることと、責務を果たして自由に行うことは同じではないよ」
一言ひとことをゆっくり噛み締めるように言われた。
面目ない。
「気をつけます」再び俯き加減で答えると
「殿下の優しさを、踏みにじるようなことだけは、してはいけないよ」
再度強く言われた。
「はい。気をつけます」私が言うと、お父様は苦笑いしながら
「頼んだよ?」少し不安げな顔を浮かべた。
そんなに私って信用ないのか……少し悲しい気持ちになったところで
「基本的には私は賛成だが、条件がある」
「殿下を最優先すること」「王太子様の婚約者であることを一番に考えること」「絶対に自分で経営せず、人に任せること」
「この三つを必ず守ること」
「それが私からの条件だ」しっかりと、そして強い声で私の目を真っ直ぐに見て言われた。
「お父様! ありがとうございます!」私がお父様に抱きつくと、
「はぁ……困った大きな子供だね」苦笑いしながらおっしゃった。
「殿下も大変だな……」聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
店の土地については、お父様がさがしてくれると言ってくれたのでお任せした。
「お父様! 本当にありがとう!」お礼を言うと、
「約束はちゃんと守るんだよ?」再び念をおされた。
苦笑いしながら私は、承諾し執務室を後にした。
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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